第八十話 お前…なのか
森の奥で助けたアンレーヴァンと『魅惑の炎』のメンバーだが、彼女たちの態度から、その内接触を図ってくると思う。
その中でも、アンレーヴァンとは《フィールド》の共有という不思議な体験をした。思い切り《プレッシャー》をぶつけた影響だと思うが、それが何をもたらすのか解らないので心配だ。
もっとも、気づいた時の様子から健康面に問題はないと思われる。
ただ、噂によると彼女は貴族に嫁いでから離縁されているという。
もしかしたら、彼女が切っ掛けで貴族の情報を得られるかもしれない。そう思うと楽しみになってきた。
アンレーヴァンに対する心構えができたので、お風呂から上がった俺は、星でも見ながら涼もうと浴場の裏手に回った。
あそこは人気がなくて、寛ぐのに適している。
と思ったが、今日は人が居るようだ。それも、よろしくない雰囲気だ。
「『フレッシサントゥ』様!お願いします、首だけはどうかご勘弁して下さい!」
「ダメだ、お前たちは首だ!もう仕事を任せられない!」
「そ、そんな……」
「……………」
「何度注意しても言いつけを守らず、我が宿『爽やかな風』の名を汚すような事ばかりしおって。お客様からどれだけクレームが入ったと思っているんだ!」
「も、申し訳ありません!」
「……………」
「今すぐに出て行け!いいな。」
首を言い渡して去って行ったのは、宿『爽やかな風』のフロントをしていた老紳士だ。この宿の支配人だが、宿を出る時に随分と丁寧に対応して貰ったので、良い印象を持って覚えている。
対して、首を言い渡されたのは俺を小馬鹿にして不真面目な態度で接客をした、ウサギ耳のフロントマンと、客を脅かすような真似をする守衛の若造だ。
二人は呆然と立ち尽くしている。
ウサギ耳のフロントマンは普段から他の客に対しても、あんな態度を取っていたのだろう。守衛の若造も然りで、首になるのは当然だな。
俺もこいつらのせいで、『爽やかな風』には二度と泊まろうと思わなかったからな。自業自得としか言いようがない。
フロントマンだったウサギ耳の男が、いきなり守衛だった若造を殴りだした。
「糞ったれが!!テメーのせいで俺まで首になっちまったじゃねーかっ!」
「ぐうっ!」
「テメーがどうしても働きたいって言うから、無理してシフトを組んでやったのによ!俺の顔に泥を塗りやがって、こっちまでとばっちりを食っちまったじゃねーかっ!」
「うぅ、ご、ごめんよ、『イディット』兄……」
「もう、俺のことを兄なんて呼ぶんじゃねーっ!ガキの頃から散々面倒見てやったのにこのざまだ。テメーはもう弟分じゃねーっ!」
イディットと呼ばれたウサギ耳の男は、怒りに任せて若造をタコ殴りにする。
若造は抵抗せずに殴られ続けている。
やれやれ、八つ当たりにも程がある。どっちもどっちで、ウサギ耳の男が首になったのは若造だけのせいじゃないと思うがな。自分の悪い所を認めて反省できずに、他人のせいにしてるようじゃお察しだな。
その弟分が常識のない行動をするのも止む無しだ。
それでも、人が殴られているのを見続けるのも気分が悪い。止めに入るか。
と思ったが、殴り疲れたのか、ウサギ耳の男は肩で息をしながら去って行く。
「じゃあな、エッフェロン。もう二度と俺に関わるなよ。」
「う、うぅ…イディット兄……」
聞き覚えのある名前に、やはりそうだったのか、と納得した。弱々しくも不快な感じの《フィールド》はエッフェロンの特徴だ。ノイティと居るお陰であまり気にしてなかったけど、意識してみるとさっき会った時と同じ感じがする。
こいつは俺を嫌っているので声を掛けるのを躊躇ったが、怪我人を放っておく訳にもいかないか。
「おい、大丈夫か?」
「………」
エッフェロンは地面に大の字になって横たわっていた。
最初はうつろな瞳で俺を見ていたが、焦点が合って俺に気づくと飛び起きた。
「テ、テメーっ、なんでここに居る!」
「風呂上がりにお前を見つけたから、声を掛けたんだけどな。それだけ動けるなら、大丈夫そうだな。」
「うるせーっ、放っとけよ!」
嫌な奴に見られた。そんな態度丸出しでエッフェロンは走り去って行った。
やれやれ、顔が腫れ上がっていたけど、あれを見たらノイティもビックリだな。
しかし、昼間は薬草摘みをしていたはずだけど、夜は守衛をしていたんだな。ついさっき別れたはずだけど、休憩もなしに次の仕事に就いていたのか。若いのに大変だな。それだけ生活が苦しいんだろうな。
しかし、守衛なのに客に喧嘩を吹っかけるのは、どうみても拙いよな。
強くなりたくてあんなことをしていたように思うが、そのやり方はどうなんだ。
確かに『爽やかな風』は中級クラスの中でも、上位の請負人が主に利用する宿だけど、やってることが無茶苦茶だな。本当なら、頼み込んで教えを請わないといけない立場なのにな。
何か事情があるのかもしれないけど、だからと言って許されることじゃない。それで首になって収入まで絶たれてしまっては本末転倒だ。
どういう育ち方をしたら、あんな常識知らずになるのかね。テレビで若者を更生させる番組に出てくるDQNの行動そのものだな。
まあ、何はともあれだ。
あの二人が居なくなったのなら、『爽やかな風』を利用しない手はないな。これで不愉快な思いをしなくて済むからな。
そのまま『爽やかな風』の中に入って行くと、さっきの老紳士がフロントをしていた。
「いらっしゃいませ。ようこそ、お越しくださいました。」
「一人用の部屋を頼みたい。できれば、少し広めの部屋が希望だ。」
「かしこまりました。それですと、305号室が宜しいでしょう。それで、当宿の特徴ですが…」
老紳士は丁寧に迎えてくれて、宿の利用の仕方を懇切丁寧に説明してくれる。
そうそう、普通はこうだよな。って、日本でも高級ホテルに行かないと、ここまで親切に対応はしてくれない。全く持って素晴らしい。
感激してチップを渡したが、老紳士は頑なに受け取らなかった。仕事にプライドを持っているんだな。
更には、その気持ちがあるならチップはベッドメイクの者に渡して欲しいと、一言添えてくれた。俺の行為にも気遣った、行き届いた心遣いだ。
さっきの二人のせいで不快だった気持ちが、老紳士のお陰ですっかり癒えてしまった。
指定された部屋に入ると、そこは最初に泊まった部屋の倍近くの広さだった。
ベッドも広く、家具もテーブルや大きめのクローゼットが備え付けてあり、下にある食い処の雑音も聞こえて来ない。部屋の鍵の作りもしっかりしている。
これで料金が一緒だったので、最初の時はぼったくられたのだと理解した。
まったく、あのウサギ耳のフロントマンはとんでもない奴だ。首になって当たり前だな。今更クレームを入れてもしょうがないので、老紳士に免じて勉強になったと思っておこう。
☆ ☆ ☆
部屋で寛ぎながら、俺は《神鉄の腕輪》を出して文様に銅鉄ランクのカードをあててみた。
黒鉄ランクから銅鉄ランクにランクアップしたので、腕輪のデバイスの更新が行われるかなと思った。
本当なら、もっと早くにすればよかったのだが、性欲を満たすことに頭がいっぱいで、そこまで気が回らなかったからな。
この時間を作ってくれたノイティには感謝しかない。
デバイスが起動してモニターが現れると、ランクアップの表示がされた。
やはり、この腕輪はランクに応じたアップデートが行われるようだ。
以前までグレー表示になって使用できなかったアプリが、幾つか使用できるようになっている。
今回使えるようになったもので、一番役立ちそうなのが地図アプリだ。
早速開いてみると、エレベトの街が表示されて、俺が居る宿屋『爽やかな風』が赤くポイントされている。
GPSに相当する機能もあるようで、現在位置が分かるようになっている。これは嬉しい機能だ。これで森に入って行っても迷わなくて済む。
これは請負人カードに組み込まれている、発信機能に連動するようになってるんだな。
もしかしたらと思って、いろいろと探ってみたら、タイムライン機能もあった。
今日の履歴を見てみると、森の中をどう進んだかの軌跡が表示された。
軌跡を詳しく見ると、時間の経過と共に俺のバイタル変化が表示される。
戦闘を行った場所では、バイタルと共に戦闘経過が3D投影されるようになっている。モデリングされた俺と魔物がどう戦ったのか再現された。
しかも、俺の視点と客観的視点が自在に切り替えられるようになっている。
当然のように、俺と共に居た『連撃の剣』のメンバーもモデリング表示されて動きが分るようになっている。
これは凄いな。
自分と他の人がどのように戦ったのかが理解できるし、その時の自分の身体と心の状態も把握できる。これは今後の戦いの参考になるな。
それと、戦闘前と戦闘後のバイタルを比べてみると、明らかに筋力や《フィールド》の出力が上がっているのが見て取れる。
まるでゲームのレベルアップのパラメーターを見てるみたいだ。
って、元のディケードはこれを使ってゲームをしていたんだから、当たり前か。
面白くなっていろいろといじくりまわしていたら、もしかして俺がさ迷っていた魔の森での軌跡が見れるのではないかと思った。が、残念ながら今表示できる地図の範囲はエレベトの街とその周辺だけだった。
それならばと、貴族街を表示しようとしたが、これもぼかしが入っていて観覧できないようになっていた。
どうにもスッキリしないが、今のランクではいろいろと制限が掛けられているようだ。
取り敢えずはランクアップを目指すしかない。それによって機能の拡大が図られるみたいだしな。
幸いにも、狩りの役には大いに役立ちそうだし、今はこれで満足するしかないか。
他にもいろいろと使える機能は増えている。
写真や動画を撮ったり録音などの機能も使える。
スマホが使えるようになったと思えばいいのかもしれない。
メモ帳アプリがあるので、これに思い付いたことや重要事項などを書き込んでおけば便利だ。音声入力ができるのでありがたい。
残念なのは、通信機能はあるようだがその相手が居ないことだ。
グリューサーとコンタクトが取れればいいのだが、それも無理だ。連絡先リストが空白のままだ。
あとは、《ブースト》機能がアップグレードされている。
《ブースト1》、《ブースト2》、《ブースト3》と三段階で使い分けができるようになったみたいだ。
使用時間と疲労度の組み合わせが選択できるようになっていて、一瞬だけ爆発的な力を発揮するなら疲労度は低く、長時間にわたって使用するなら疲労度は高くなるように設定されている。
これはありがたい。使い方次第で、戦闘に幅を持たせられる。
ここぞという時に能力を一瞬だけ爆発的に発揮できるなら、攻撃力が数段増すし、ピンチの状態から切り抜けた後も戦闘を継続できる。
他の機能も調べようと思ったら、部屋が揺れた。
「地震だ!」
体感で震度3くらいだ。
大した揺れではないが、壁や天井がミシミシと音を立てて、煉瓦の粉がパラパラと落ちてくる。
日本の建築物だとどうということはないが、この世界だと耐震性がどれ程のものか判らないので不安になる。
一応外に避難した方がいいかなと思っていると、従業員が避難を呼びかける声が聞こえてきた。
「お客様方、安全のため外へ避難して下さい!安全のため外へ避難して下さい!」
俺は荷物を持って部屋を出た。
他にも数人の客がそれぞれの部屋から出てきて、従業員の指示に従って階段を下りていく。
「なんだよ、また地震かよ。その度に避難でうんざりだぜ。」
「しょうがねーよ。こんな所で下敷きになって死にたくなんかないぜ。」
「そうだけどよぉ…」
客の様子から、地震に慣れているのが伺える。それだけ地震が頻発しているということか。
従業員の誘導で裏庭に出ると、宿の宿泊客も集まってきた。人数はそれほど多くないが、殆どが請負人のようだ。
ざっと見たところ、殆どが銀鉄ランクで金鉄ランクが何人か居る。銅鉄ランクは俺と女性の請負人だけみたいだ。
それでも、《プレッシャー》を放出してる者は居ない。
ここに居る者を見る限り、フレィよりも腕の立つ者は居ないように感じる。
それにしても、女性の請負人は少ないな。
ここには三人居るだけだが、全員が寄り添うように男と一緒に居るので、そういった関係なのだろう。
『魅惑の炎』は女性だけのパーティだが、本当に珍しいんだな。
仕事柄そうなるのもしょうがないと思うが、ため息しか出ないな。
露出の多い格好をして、強力な魔法を放って魔物を倒しまくる女性なんて、アニメやファンタジー小説の中にしか存在しない…んだろうな。
暫く裏庭で待機していたが、建物に損壊はなく、これといった二次被害も起らなかった。
「皆さま、避難へのご協力に感謝いたします。ご不便をおかけしましたが、これ以上の被害は起こらないと思われます。どうぞ部屋へ戻られますようお願いいたします。」
支配人の老紳士が解散を告げると、宿泊客はぞろぞろと各自の部屋へと戻っていった。
小声でブツブツと不平を漏らす者が居たが、概ね大人しく引き上げていった。
これは老紳士の人柄によるものだな。
避難は面倒でも、宿泊客の安全を最優先する態度に安心できたからだ。
そういえば、前回の地震の時この裏庭に居たけど、宿泊客が避難なんてして来なかったな。
あの時はウサギ耳の男がフロントをしていたけど、もしかしてあいつ、一人だけで逃げたんじゃないだろうな。
俺は老紳士に訊いてみた。
「昔から、この街は地震が多いのかな?」
「いえ、私が若い頃は地震なんてありませんでした。ここ3~4年ほど前からですか、地震が起こるようになったのは。」
「そうなのか。」
「何かの前触れでなければいいのですが……
しかし、大地震の前には女神様が警告してくれますからね。対策できるので、ある程度安心できますよ。」
老紳士は少し不安げな様子を見せたが、直ぐに態度を改めて、俺を安心させるように微笑んだ。
それまでなかったことが起こりだしたので、不安を感じてるんだな。
やはり、この地震は惑星を取り巻く籠、アイゲーストの不調からきているのだろうな。
原因が分かるだけに歯痒い思いだが、今の俺にできることはない。
☆ ☆ ☆
部屋に戻った俺は、気を取り直すために宿の一階にある食い処『春風と共に』にやって来た。
地震で少し空気が重くなったが、腹を満たせば元気が出るし、気力も湧き起るというものだ。
暖簾をくぐると、そこかしこから地震の話題が客から聞こえてくる。
ここの客たちも一旦外へ避難したようだが、今は普段と変わらない様子を見せている。
「いらっしゃい、一人かい?」
「ああ。」
銀髪を纏めた恰幅の良い女将さんが笑顔で迎えてくれる。何度か利用しているので、顔を覚えられたようだ。対応の仕方も気さくなものになってきた。
俺は部屋の鍵を見せながら、定食とベーエルを頼んで席に着いた。
早速やって来たベーエルを流し込むと、キンキンに冷えた刺激と爽快感が体中に染み渡る。最高だ!
この一杯に勝る物はないよな。気分も明るくなる。
俺が食事をしていると、『連撃の剣』のメンバーがやって来た。風呂上がりのせいかさっぱりしている。
「やあ、ディケード。」
「ディケードお前、俺たちを置いて行って、何のんびりと飯食ってんだよ。」
「あれから『魅惑の炎』のメンバーにいろいろと言われて大変だったんだぞ。」
「それに、獲物の数も多くて、処理が大変だったんだからな。」
「まったくよう。」
「いや、申し訳ない。あの時は俺もいっぱいいっぱいで大変だったんだ。」
「それで、もう大丈夫なのかい?」
「ああ、なんとかね。ごめんよ、迷惑をかけたね。」
フレィは清算してきたと言って、俺の分の売上票を渡してくれた。
皆はシャソバージの大物を倒したので、実入りが良かったとホクホクしている。
俺は後の処理をして貰ったお礼に、皆にご馳走すると申し出た。
フレィ以外はここぞとばかりに高い料理を注文していたけど、それも良いだろう。この店で幾ら食ったところで売上を超えることはないからな。
この世界で初めての打ち上げだ。今日は俺も楽しもう。ジュットゥの奢りのベーエル10杯分もあるしな。
「「「「「「 かんぱ~~~いっ! 」」」」」」
「いいか、俺の奢りだからな。心して飲めよ。」
「いやいや、俺たちはディケードから奢って貰ってるんだよ。」
「そうそう。元々はジュットゥの奢りでも、それはディケードに対してだからな。だから、俺たちはディケードから奢って貰ってるんだよ。」
「ああ、そうかよ。ケッ!」
相変わらずジュットゥの話し方はうざいが、以前に比べると刺がなくなっているような気がする。ようやく俺を認めたというところかな。
まあ、だからといって好きになる訳でもないけどな。
それと、ここにはバゲージスが居ないが、彼は見習いでメンバーでもないので、狩り以外では一緒に行動はしないという。残念だが仕方がない。会う機会があったら何か奢るとしよう。
食事を奢ったせいなのか、俺がバックレた理由は詮索されずに済んだ。
といっても、俺は女が苦手で恥ずかしさから逃げたと、皆は思っているんだろうな。話をする言葉の節々に、女性の素晴らしさが解らないなんて可哀想な奴だというニュアンスが感じられる。
俺が突然立ち去ったせいで、『魅惑の炎』の女性たちは何か失礼をしたのではないかと不安がっていたそうだ。
「そんなことはないと、よく慰めておいてやったぞ。」
「そうそう。せっかく裸のアンレーヴァンを抱きしめて立ち直らせたのに、それで逃げるとか、男としてどうなのよ。」
「そうだぜ、せっかくの役得だったのによ。」
「腕は立つけど、あっちの方はまだまだお子ちゃまらしいな。」
「後のことは俺に任せておけ。『魅惑の炎』は俺が面倒をみるからよ。」
「いや、それは俺だろ。」「俺だよ。」「俺だ。」
やれやれ、こいつらのことだから、散々俺を下げまくって自分を売り込んだんだろうな。まあ、好きに接してくれ。脈はないだろうけど、下僕としてなら扱ってくれるかもな。
俺は『魅惑の炎』の女性たちには、男女問題で関わろうとは思わないからな。今日の彼女たちの態度をみるに、真剣に向き合おうと思える相手じゃないよな。
女性の〈魔法士〉だからと、少し期待したんだけどな……
まあ、あの後のアンレーヴァンの体調に問題はなかったようなので一安心だ。
お前ら、それよりもフレィを見習え。そんな話には我関せずでクールにジョッキを傾けている。ホント、イケメンだよな。
でも、ちょっと俺を見つめる眼差しが怖いけどな。
「ディケード、これを納めてくれないか。」
そう言って、フレィは葉っぱに包んだ金貨2枚を渡してきた。
成程。フレィとしてはそんなつまらない色恋沙汰よりも、一刻も早く《フィールド》や《センス》について学びたいんだな。本当に向学心が強くてストイックだ。
葉っぱに金貨を包んでいるのは、周りに見えないように気遣ってのことだな。大金だしな。行動もイケメンだ。
しかし、楽しく飲んでいるのに、これから《フィールド》の講習会というのもどうなのかね。
フレィを見ると、期待に瞳を輝かせながらウズウズしているのが見て取れる。
いっぽう、他のメンバーは女の話に花を咲かせている。
これが一流と二流の違いなのかね。
俺は好きなことすら見つけられずにいた、三流の人間だったからな。ひたむきに好きなことを極めようとする、フレィのような人間を羨ましくも眩しく感じる。
俺もフレィを見習わないとな。
俺は磁力の帯びた指弾用の鉄球を取り出した。
読んでいただき、ありがとうございます。
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