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異世界で俺だけがSFしている…のか?  作者: 時空震
第3章 -請負人-2

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第六十九話 待ち合わせ

 元々異星人のアバターだった俺の身体は、目覚めた時の不具合も重なって異常なまでに性欲が高まる体質となっている。

 辛抱しきれなくなった俺は、前日に続いて娼館の『熟練の薔薇』を訪ねて、四人の娼婦たちと朝まで行為に耽った。



 花街、『熟練の薔薇』の一室。

 朝、目が覚めるとキングサイズのベッドの上に五人で寝ていた。シャイエーランや他の三人の嬢が力尽きた後に、俺も疲れてそのまま眠ってしまい、そのままの格好で朝を迎えたようだ。


 皆でばらばらの方向を向いて、腕や脚が折り重なるように絡み合っている。昨夜の惨状を表していた。


 結果として判ったのは、四人の女性が相手でも俺の精力が尽きなかったという事実だ。特に、ノベンジュ、トロイス、ファムの三人が力尽きてきて、交代の連携が乱れてからは、俺も半暴走状態になってしまい、一晩で何回したのか覚えてない。


 二日連続の行為でこれだと、俺は無限にできてしまうんじゃないかと恐ろしくなった。

 まあ、さすがにそれはないと思うが……

 そんな事を考えていると、女性たちが目を覚ましだした。


「ん~~~、もう朝なの?全然寝た気がしないけど……」

「うう…体中がガタガタだ…痛たたた……」

「あうぅ…腰が重くて起き上がれない~~~……」

「ひぃ―――、脚が…脚がつってる―――っ……」


 死屍累々、とは言わないけど、それに近い状態だ。誰も起き上がれなくてベッドの上でのたうち回っている。

 申し訳なさでいっぱいになる。


「すまない。やりすぎてしまったようだ。皆はまだ寝ていてくれ。今、マネージャーを呼んでくる。」


「ええっ!? この状態でマネージャーを呼んだら出禁になるわよ。」

「そうよ、娼婦を壊す男だと思われるわよ。」

「そうよ、それは不味いよ。」

「そうそう。」


「しょうがないさ。それだけ迷惑をかけてしまったからな。責任を取らないと。」


 てっきり、皆は怒っていると思ったが、そうでもないようだ。俺の心配をしてくれている。


「皆は俺の相手が嫌じゃないのか? そんな辛い目にあっているのに。」


「わたしは別に嫌じゃないわよ。最初は怖かったけど、もう平気よ。」

「わたしもだ。ディケードお大尽を相手にするのは大変だけど、やりがいを感じるしな。」

「わたしも大丈夫よ。体はバラバラになりそうだけどさぁ、こんな充実感を覚えたのは随分と久しぶりよん。」

「そうだよ。体力的にはきついけど、あの全てを突き抜ける感じが堪んないの。」


「あ、やっぱりぃ♪ あの感覚はやばいよねぇ。全てが真っ白になって燃え尽きるのよぉ。」

「えへへ、実はわたしも~♪ 仕事を忘れちゃうよね~~~」

「その通り!」

「わ、わたしだってそうよん。それに体を壊される位に求められる感じ、最高だわァ!忘れかけていた女の悦びをビンビン感じるのよ~~~!!!」

「「「 わかる~~~~~!!! 」」」


 な、なんかよく分からんが盛り上がってるぞ。


 皆、裸のままで体は苦しそうにしてるのに、気持ちは盛り上がっている。随分とシュールな光景だが、これってナチュラルハイとかランナーズハイとかって言われる症状じゃないのか。余りの疲労のために脳内麻薬がドバドバ出て高揚感に包まれているように見える。

 これって、早くちゃんとした休息を取らないとやばいよな。


「だから、ディケードには出禁になって欲しくないわ。」

「そうだよ、そうなったら寂しいよ。」

「うんうん、さすがに毎日はきついけどさぁ、来なくなるのはもっと辛いよん。」

「そうそう。仕事を忘れて本気で楽しめる相手なんてそうそう居ない。」


「み、皆……」


 思わず感動してしまった。

 まさか、こんな風に思われるなんて、思いもしなかった。てっきり、体を壊されそうになって、悪態を突かれるかと思ったんだけどな。


 う~~~む…

 つくづく女というのは解らんな。


 こんなに体をボロボロにされても悦びを感じる、という精神構造が全く理解できない。俺ならこんな仕打ちを受けたら、間違いなく発狂すると思うけどな。

 女性は向こう岸の存在だよ…なんてセリフを誰かが言っていたような気がするが、正にその通りだな。


 でも、例えそうであっても、こうして好意を寄せてくれるのは嬉しいものだ。俺も彼女たちを愛しく思う。


 俺は彼女たちを優しく抱き上げて、ゆっくり休むようにベッドの上に奇麗に並べて寝そべらせた。キングサイズのベッドは四人が寝ても余裕がある。このまま一眠りすれば身体の疲れもある程度癒えるだろうし、昂った感情も治まるだろう。


 俺は自分で体を洗って出かける身支度を整えた。

 わたしたちの役目なのにごめんなさいと彼女たちは謝ったが、そういう事もあるだろう。こっちこそ、そこまで付き合ってくれてありがたい気持ちでいっぱいだ。

 思わずジリアーヌを思い出して可笑しくなった。


 今後、彼女たちを指名する場合は一日以上間を空ける事になった。

 連日だと体が持たないので、俺を相手にした翌日は休養日に当てるようだ。まあ、その方が無難だよな。


 できれば、その分少し手当を弾んで貰えたら嬉しいと、ちゃっかり無心された。

 が、それも良いだろう。その分、サービスして俺を満たしてくれるなら、こちらとしても不満は無いしな。何より、俺の心の安定のためにもな。


 以前ならそんな風に考えずに、女の狡さを憎々しく思っただろうけどな。

 それも、金に余裕があるからできる事だけど、こっちの世界に来てからこの身体のお陰で儲けさせて貰ってるからな。そういった意味で社会に還元できるなら、それも良いと思える。


 俺は彼女たちに挨拶を済ませると、『熟練の薔薇』を後にした。

 マネージャーもホクホクで何よりだ。




 ☆   ☆   ☆




 さすがに少し眠いが、今日は『連撃の剣』と一緒に狩りをする約束だ。

 まだ夜が明けてそれほど経っていないが、『連撃の剣』の狩場は森を大分奥に行った所らしいので、早めの集合時間になっている。


 俺は請負人組合のロッカーから装備一式を取り出すと、身に着けてから『春風と共に』で朝食を取る。

 艶やかな銀髪を靡かせる看板娘を見ながら食べるタルティは良い物だ。

 マンネリ化しつつあるが、食にさほど拘りのない俺にはこれで十分だ。


 といっても、もう少しは他の食い処を開拓した方が良いとは思う。独身の難点は、そういった手間を億劫に思うところだ。

 仲良く結婚生活をしていた頃には、いろいろな場所へ連れて行かれたり、自分でも探したりしてたからな。




 色々と考え事をしてる間に、集合場所の南門に到着した。

 これから狩りをしたり依頼をこなすための請負人が大勢、出門の手続きをしている。今日も好い天気で、狩り日和だ。


 少し早かったのか、まだ誰も来ていないので、俺は昨日と同じように弁当とポーションを購入する。ついでに運搬袋を5枚購入しておく。

 ワリーカを買って飲みながら『連撃の剣』を待つ。


 俺はその間を使って周りに居る請負人たちを観察する。

 大多数の者が剣や槍といったオーソドックスな武器を持っている。やはり〈魔法士〉は少ないようだ。


 ランクは黒鉄(くろがね)銅鉄(あかがね)が多く、少数の銀鉄(しろがね)と数人の金鉄(こがね)が居て中級クラスばかりだ。多少は初級クラスも居るが、上級クラスの人間の姿はない。

 上級クラスは活動領域が違うのだろう。


 請負人は圧倒的に男性が多いが、女性もチラホラと居る。

 しかし、ほぼ全員が男性とペアを組んでいるか、男性主体のパーティに一人ないし二人が混じっているという感じだ。単独で居たり、女性同士でパーティを組んでいるのは、この場では見当たらない。ランクも殆どが黒鉄だ。


 できれば腕の立つ女性の請負人がパートナーになってくれればと思うが、そんな都合の良い人材が一人で居る訳もないか。

 組合でカーミュイルに訊いてみたが、個人情報に関する事として教えてくれなかった。

 残念だったが、コンプライアンスがしっかりしてるので、その点は安心できた。


 しかし、そうなると自分で探さないとならないので大変だ。現時点でメンバーを募集しているパーティはないし、他のパーティから引き抜くというのも気が引けるしな。

 少しずつ情報を集めていくしかないか。




 フレィの《プレッシャー》を感じ取ったので、俺は考え事を終わらせた。

 フレィの《プレッシャー》は弱々しいものだが、まだ自在に制御できないのか、無意識に拡散しているだけのようだ。


 それなりに《フィールド》を扱える人間でなければ気づかないだろうから、問題にはならないと思うが、それなりの魔物からは警戒されるか狙われるだろう。

 目を凝らして見ると、仲間と共に500m程離れた所を歩いている。


 以前なら、こんなに離れていたら全く感じられなかったけど、俺の《フィールド》能力は格段に進歩しているようだ。

 といっても、以前のディケードに比べるとまだまだみたいだけどな。


「おはよう、ディケード。随分と早かったようだね。」

「おはよう、フレィ。そうだね、散歩がてら向かっていたら早く着いたよ。」

「おはようさん。」

「うっす。」

「お、おはようございます。『バゲージス』と言います。」


 フレィと仲間の二人、『シレッセ』と『テレッシ』の他に14〜15歳位の狐耳の少年がいた。


 シレッセとテレッシは一緒に食事をしたので覚えているが、バゲージスという少年は初めて見る。彼も『連撃の剣』のメンバーなのだろうか?随分と大きな荷物を背負っているが。


「バゲージスはまだ見習いでね。荷物持ちをしながら勉強中なのさ。」


 フレィが俺の疑問に答えてくれる。

 バゲージスは初級クラスで、岩石ランクの緑のカードを張り付けている。彼は『連撃の剣』のメンバーという訳ではなく、一時的にパーティの雑用をこなしながら請負人の基礎知識を学んでいるという。


 請負人になって間もない初級クラスの少年や少女たちは、こうして見習いをしながら稼ぐのが一般的で、大体半年から一年かけて一人前になっていくらしい。

 初級クラスの請負人の多くは、こうして先輩パーティの世話になりながら成長していくので、自分たちが中堅になった頃に自然と後輩の面倒を見るようになる。


 その結果、先輩たちの技術や考えが後輩へと受け継がれて発展していく、というサイクルが確立しているようだ。

 成程。これはとても大切で優れた伝統だと思う。


 この世界はまだ動物の家畜化が殆ど進んでいないようなので、食料となる肉や加工品を作るための素材を得るためには、魔物の狩猟が必須となる。

 また、人類の生存圏を拡大させる為にも、近場の魔物の駆除は必要不可欠だ。


 そういう意味で、請負人は街の住民たちの生活インフラを支えている存在ともいえる。そのために次世代の育成は必須だ。

 フレィの話では、これは請負人組合から推奨されているらしく、幾らかの補助金も出ているという。



 フレィが興味深そうに俺の装備を見る。


「それがディケードの武器なんだね。」

「ああ、一昨日買ったばかりだけどね。随分と吹っ掛けられたよ。」

「『アーセナァラ』の店長は年々商売が上手くなっていくからね。

 しかし、ハルバードか、少し意外だったけど、それでどんな戦いをするのか楽しみだよ。」

「それは俺も同じだよ。フレィの剣技は噂になってるくらいだからね。じっくり見させて貰うよ。」


 フレィが腰に差しているのは大きめのロングソードだ。

 両手剣なので盾は無い。その代わりなのか、金属製の腕輪を両腕に着けている。

 防具はレザーアーマーで動きを重視した軽い物を着ている。


 シレッセとテレッシは、片手剣に盾といったスタイルだ。全く同じものを装備しているので、もしかしたらペアを組んで戦うのかもしれない。

 防具はレザーアーマーにチェーンメイルを組み合わせた物を着ている。防御を重視しているようだ。


 この二人は兄弟らしいが、兄のシレッセはノーマルで、弟のテレッシは黒豹なのかケモ耳人だ。顔はよく似てるが、兄弟でもこうしてケモ耳が有ったり無かったりするので、ちょっと不思議だ。


 バゲージスは腰に短剣を差しているが、お世辞にも良い物とは言えない。

 『アーセナァラ』で見て回って思ったけど、剣や槍などの武器は安い物でもそこそこしたからな。まだ見習いのバゲージスには新品は買えないのだろう。


 それに比べると、フレィたちの剣はかなり良い物だ。特にフレィが持っている剣は、鞘の装飾を見ても一目で他とは違うと判る。



「ウッス。」

「ハヨー。」


 少し遅れて、因縁男のジュットゥと『ビラーイン』がやって来た。

 何ともテキトーな挨拶だが、仲間内だとこんなものか。


「バゲージス、荷物を頼むな。丁寧に扱えよ。」

「俺のも、よろしくゥ。」

「はい、分かりました。」


 因縁男とビラーインはバゲージスに持っていた荷物を渡す。

 それでなくても大きいと思ったリュックが、更に膨れ上がって少年の体を圧迫する。流石にこれは持たせ過ぎじゃないかと思う。


 因縁男とビラーインは戦うための装備以外をバゲージスに持たせているので、随分と身軽に見える。でも、それはフレィや他のメンバーもそうだ。

 まだ体の小さい少年のバゲージスには随分と酷に思える。


 因縁男は早速俺に絡んで来る。


「よう、今日はお前の実力を見させて貰うからな。さぞかし強いんだろうから、楽しみだぜ。」


 俺は因縁男には答えずに、肩をすくめて見せる。


「ケッ、相変わらずすかしやがって。ムカつくぜ。」

「ジュットゥ、そう絡むなよ。」

「へぇへぇ。」


 リーダーのフレィがたしなめるが、因縁男は気にする素振りもない。

 鬱陶しいので、俺は基本的に因縁男を無視しようと思う。下手に受け答えすると、この手の人間は余計に絡んでくるだけだからな。


 それはそうと、因縁男は二刀流のようで、長さの違う剣を左右の腰に差している。スピードを活かした攻撃をするタイプかな。


 レザーアーマーにとんがった肩当が付いていて、肘当てや膝当てにもとんがった突起物が付いている。なんとなくだが、実用性よりもデザイン性を重視している感じだ。性格が表れているな。


 ビラーインはメンバーの中では一番年上で26〜28歳位だろう。とにかく体がデカくて、身長は190cmを越えている。体重も100kg以上はありそうだ。熊耳を付けているせいか、余計に大きさを感じさせる気がする。


 普通の人が持つ剣の倍以上ある幅広の剣を背中に担いでいる。切るというより重量を活かして叩き割るという感じのスタイルだろうか。パワーファイターだな。

 防具も鉄なのか魔物の外骨格を加工したものなのか、判別のつかない硬そうな物を着ている。


 『連撃の剣』は全員が剣士という事だが、スタイルが同じという訳ではないようだ。面白いパーティだ。どんな連携をとるんだろうな。


 さて、これで全員が揃ったので狩りに出発する。

 『連撃の剣』は金鉄(こがね)ランクのフレィをリーダーとして、他のメンバーは銀鉄(しろがね)ランクだ。パーティとしては銀鉄ランクで、この地域では中級クラスとして上位に位置しているらしい。


 そんなパーティが行う狩りはどんなものか、じっくりと観察して学ばせてもらおうと思う。




読んでいただき、ありがとうございます。

感想や誤字脱字を知らせていただけるとありがたいです。

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― 新着の感想 ―
女心はわからないものですね。でもこの三人は特殊かも笑 それだけディーケイドが良いのですね!
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