084 おっさん達と船の中
先ほど0時掲載分間違って昨日のをのせちゃいました!
メッセージで教えてくれた方、ありがとうございました!
船の中ではテントを固定するペグを使うことが出来ないので、かわりに【堅牢なる聖女の聖域】を応用的に使い、ペグの代わりとした。
アーシュレシカに固定具合を試してもらってもびくともしなかったから大丈夫だろう。
ばーちゃん達は物凄く驚いていた。
ノリのいいばーちゃんですら驚いていた。
そしてテントの中に入ってさらに驚いていた。
外観にそぐわないテントの広さ。
部屋数の多さ、大浴場。
これからはアーシュレシカが用意してくれたこの空間拡張型テントがいいな。
俺もこんな風にいつものテントを改良しようっと。
皆でテントの中を内見していると、
「ほう!こりゃすげぇな!魔道具かよ!いったいどんな魔術だ?!時空間魔法に関わりがあるのはわかるな!この天幕の固定方法もそれが関係してるとかか?!ほー、光の魔道具がふんだんに使われてやがる!こりゃなんだ?!なに?!風呂だと?!」
「そーだぜ、おっちゃん、すげぇだろ?」
「結界もあるから悪い奴も入れないよ!」
あのおっさん達とティムトとシィナだ。
…連れてきちゃったのか…。
「ダメだろ、知らない人勝手に入れちゃ」
「にーちゃん、いーだろ?おっさん達面白いんだ」
「話も面白いけど、存在がおもしろい!」
シィナ、「存在が面白い」ってなんか、人に言っちゃダメじゃない?
「おっさんたちだって急に言われても困るだろ」
「俺らはむしろここに入れてくれたらありがたいけどなぁ!」
「そうだな、雑魚寝よりそこの長椅子の方が断然寝心地も良さそうだし」
「長椅子に寝れなくてもその敷物なら俺らが持ってる毛布よりも上等だぜ」
ノリノリだった。
ばーちゃんはどうだろ?
とみてみると、困った顔をしていたが、否定的ではないようだ。
「王族としてそれはどうなの?ロヴェルディ王。部屋なら余ってますからそちらで就寝なさいな」
テント内の使用にキャッキャしていたおっさん達が、ばーちゃんの発言にピタリと止まる。
そしてばーちゃんの方を見て
「誰だ、あんた」
と、ちょっと警戒した風をみせる。
「むしろあなたがわたくしに気付かなくてどうするのですか?」
どうやらばーちゃん達はお知り合いのようだった。
おっさんはまだピンときてないようだが。
「ルディ、あの紋章は…」
「あ、やっべ。あの魔女の国…」
「ってことは…」
ばーちゃんの護衛の人の装備を見てだんだん思い出してきたっぽい。
それから彼らは笑って誤魔化した。
「いやぁ、こんなところで会うとは奇遇…てか、お互い災難だったなぁ」
あ、開き直って忘れていた事を無かったことにした。
おとなって汚い…。
ばーちゃんもジト目で見てるし。
そしてしょうがない、とでも言うようにそっと溜息をもらして
「そうですわね」
といって無かった事にしてあげるようだった。
あと、一緒にテントで同居するのもこれで黙認するっぽい。
「それで、なぜあなた方がこのような船に?北の大帝国のパーティーには参加していなかったようですが」
「あんなバカみたいなパーティー参加できっかよ」
え、俺もばーちゃんもあんなバカみたいなパーティーに2回も参加しちゃったよ。
「それもそうですが」
納得しちゃうの?!
…ってばーちゃんはもともと父さんとの待ち合わせに利用していただけか。
あとたぶんついでにカジノとかで遊んでたんだろうな…。
ついでに…。
「こっちには魔物を狩りにだよ。どうしても欲しい素材があってなぁ」
「王自らが狩りに行くようなものですか?」
「いや、別に。普通の狩りには飽きたんで、魔物が溢れるほどいることで有名な北大陸で憂さ晴らしよ」
「憂さ、ねぇ。まぁいいです。とにかくとして、しばらくやむを得ず共にするのですから子供に悪影響のある行動はつつしんでくださいね」
ばーちゃんが言っても…なことをばーちゃんが言った。
「お、おう。それよりアレだぞ、アホみたいな貴族がこの船乗ってるから気をつけた方が良い。子供らも船内に興味あるだろうが、なるべくそれは避けてこの天幕内で過ごすことをすすめておくよ」
おっさんはティムトとシィナ、それから俺を見て言った。
とくに船内に興味はないが、頷いておいた。
おっさんからの情報では、貴族用の部屋というのもこの部屋にあるらしく、しかしそれはこの船所有の商人が懇意にしているこの国の大貴族が使っているとか。
まさか他国の王族が2組もこの船に乗っているとは気付いてない商人。
商人として心配になるが、あの態度はちょっと商人としては胡散臭すぎる。
それに西大陸の人間を下に見ているような…?
船で優位性があるんだろうけど、それにしても気持ち悪い表情をする商人だったな。
悪い事を考えている顔を隠しもしない、堂々とした表情だった。
良い役者になれると思う。
ばーちゃんとおっさんは、仲がいいわけでもないが、悪いわけでもなく、でも何故か馬が合うようで、お互い気遣うことなく話せる間柄のようだ。
「それにしても、あんたに孫がいるなんて聞いてないぞ」
「言ってませんし」
孫だとか一切紹介してないのにおっさんは何故か気付いている。
「え、なんでわかったの?」
素直に聞いてみる。
「そりゃぁ周囲の気遣いの仕方や、なにより顔がそっくりだろ。気付かない方がどうかしてる。ま、ババァの実年齢を知らなきゃ息子に見えなくもないがな」
そんなに俺とばーちゃんと似てるだろうか?
でもそう考えるとばーちゃんの周囲の人達が俺を見た時の表情やその後の態度を思い出すと、なにか納得した様子だったような。
ばーちゃんは、おっさんに顔がそっくりと言われた時は嬉しそうにしていたが、そのあとのババァとか実年齢とか言う言葉で一転して冷ややかな視線をおっさんに向けていた。
「そんな似てないだろ」
「「「「「「「「「「似てます」」」」」」」」」」
結構な人数に一斉に言われた。
そこまでか…。
シェヘルレーゼがばーちゃんには異様に気を使う理由がやっとわかった気がする。
なんの告知もなく、船はいつの間にか出航していた。
船にはなれているのか、この場で船酔いする者もとくにおらず、しばらくは穏やかにテント内で時を過ごす。
俺は早々に部屋に引きこもってゲーム。
【異世界ショップ】で買った大画面テレビを設置して遊ぶ。
ばーちゃん達は皆でカードゲームを楽しんでいるみたいだった。
トランプはシェヘルレーゼが提供したっぽい。
子供らは体育館みたいな部屋で超人的な卓球やバドミントンをして遊んでいる。
うーん。レベルが近い子がいればもっと遊びの幅が広がるんだろうけど、いつも二人で遊ばなきゃならないのはちょっと可哀想だな。
そして暗くなったころ。
「昼間はまぁ、パンに具材を挟んだ変わった食い物だったが、出航する前に昼用に作った物だとわかるものだったが、何故煮炊き出来ない船の上であたたかい料理が出てくるんだ?」
「光の魔道具だけじゃなく、熱を出す魔道具もあるのか?」
「それにしても品数が多い。新鮮な野菜もあるし、それにスープがあるってことはこれから先、しばらく貴重になる水も使っているってことだろ?水の魔道具もあるってことか?」
おっさんの仲間の人は、おっさんの従者でもなんでもなく、普通の冒険者だった。
なので最初に貴族や王族相手の態度はできません宣言をされている。
それはばーちゃん達は納得し、許可している。
俺は貴族でもなんでもないので、普通に接してくれた方がありがたいのでなんの異存もない。
料理類は【異世界ショップ】で買った物や、暇な時作っていた料理の作り置きを【アイテムボックス】に入れていた物だ。
野菜は農地で採れた物を洗って切ったりちぎったりした物にドレッシングを掛けて食べる。
その野菜を洗う水も、ある意味魔道具なキッチンに付属してある蛇口から出る水だし。
魔法で出る水なので、普通に飲むことも出来る。
魔道具コンロは火が出るタイプなものなので、そのうち火の出ないタイプのコンロも買っておけばいいのかな?
…って、既にあるっぽい。オシャレな感じの電気ケトルまである。
すごいな、アーシュレシカ。
おっさん達は魔道具にも驚いていたが、食事の味にも驚いた様子だった。
うまいうまいと食べてくれた。
王様なのにそこまでガッついて食べている様子を見ると、普段どんなものを食べているのかとても不安になった。
たくさんの誤字報告ありがとうございました!




