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071 誕生祭4 村めぐりと肉の納品

 


 村が突然現れた格安回復術師の登場、しかも本当に銅貨1枚で上位回復術を掛けたことで沸き、それが冷めない間に次の村に移動しようとしたら、村長から提案が。


「これから冒険者様方が向かう村の村長とは何度かあったことがありますので、私もついて行きます。同じような提案をされるのなら、私から説明した方があらぬ疑いの念を抱かれないでしょう」


 自分たちが俺達を疑ったことに対して引け目を感じ、そう提案してくれたようだ。


 クマの人が俺に視線を向ける。


 え?俺が決めるの?


「……ではよろしくお願いします」


 同じようなことがあるなら、アーシュレシカや獣人パーティーが魔物狩りを頑張っている最中に俺も出来る事をしておきたいしな。




 ってことで、村長さんを新たな仲間に、次の村へ向かう。

 次の村に行く道すがら必要な魔物がうろついている地域には寄り道していく。


 村長さんは寄り道については何も言わなかったが、馬車については物凄く興奮気味に語った。


 村の中の移動ではそこまでスピードが出ていなかったからとくに何も言わなかったみたいだが、街道に出てスピードが出始めたら物凄く驚いていた。


 ついでに馬車の中で簡単に食べられる軽食を出したらそれでも驚いて喜んで食べていた。

 それについては獣人パーティーも同じで、軽食なのにガッツリ食べていた。


「タダで食べられる物はなんでもうまいと思っていたが、これはどんな理由があってもなくてもうまいな」


 俺は「自分でお金を出した物はなんでもうまい」って聞いたけど。

 母さんに。


 所かわれば表現も変わるんだな。




 次の村に着き、前の村の村長がこの村の村長に話をつけてくれた。


 めっちゃスムーズに話が進みましたよ。


 それと、こちらは数日前から冒険者を待っていたようで、なかなか来てくれないから諦めかけていたという話を聞いた。


 今は冒険者の大半が食肉になる魔物を中心に狩りに行っているから、近場の村や町の依頼というのはあまり消化されていない。


 この村もゴブリンの被害と、オークの被害も出ているらしい。

 オークは中堅どころの冒険者じゃないと対応できない依頼だった。


 まぁこちらには久遠の騎士であるアーシュレシカさんがいるので、中堅レベルどころかドラゴンレベルもイケますけどね。


 今回はアーシュレシカの無双をみた獣人パーティーは、ツチブタの人以外は大人しく村で俺に付いて村人の誘導をしてくれることになった。


 ツチブタの人は広範囲の索敵が出来、さらに魔物にも詳しいと言うのでアーシュレシカについて行ってもらうことにした。

 海底ダンジョン産の装備の他に、一応【聖女の守護】を掛けたのでツチブタの人も安全なはず。


 この村では、村長同士が知り合いということもあって、スムーズに事が進む。


 この村でも全員がなんとか銅貨1枚を捻出し、回復魔法を受けた。


 畑の被害は芋農家の人だけだったので、村で金を出し合って畑の修復を受けた。

 結界も効果はまだ最初の村では実証も無かったので、少し悩んでいたようだが、こうやってまたしばらく冒険者が来てくれないこともあるかもしれないという話し合いを、村の顔役何人かで話しあって、張ることとなった。


 その際もクマの人が最初の村の村長と一緒になって交渉をしてくれた。


 このクマの人、シロネ並みに秘書として有能なんですけど…。


 シロネは単独でぬるっと人の懐に入れる感じだけど、このクマの人は人と人との間にバランサーとして入るのがうまいようだ。




 村人たちの回復と、畑の修復が終わった頃、シェヘルレーゼから連絡があったので、すぐに【聖女の願扉】を出してお迎え。


 ちょっと周囲がざわついたが、一旦スルーさせていただく。


 シェヘルレーゼが合流したところで、軽く状況を説明し、村の結界張りに入る。


 今度はシェヘルレーゼがドローンを操作し、村長に村の範囲を聞いた内容別をもとに俺は結界を張った。


 これで俺の方の作業は終わった。


 そこから程なくしてアーシュレシカとツチブタの人も帰ってきた。


「こちらの村でもゴブリンの集落、そしてそのさらに奥にオークの集落が出来ていましたので殲滅致しました。なお、オークは食肉リストにも載っていたのですべて回収。ゴブリンは耳と魔石のみ回収し、後は燃やしてきました。ゴブリン、オーク以外の魔物もいましたので、そちらも見つけ次第狩ってきました。村の狩人が狩る系統の魔物はそのまま残してきました」


「近くでアーシュレシカさんの狩りの姿を見ましたが、すごかったです。レベル差を痛感しました。村の狩人はここ最近危険だったと思われる程にゴブリンやオークがいましたね。殲滅出来て良かったです。このままだったら誕生祭までにこの村は持たなかったでしょうね」


 戻ってきた二人がそれぞれ報告と感想をくれた。


「そうか…こりゃどちらもギルドに報告だな」


 深刻そうな顔でクマの人が聞いて、そう呟いた。


「じゃぁ今日はここまでにして帝都に戻るか。その前に、最初の村の村長を送ってからだな」


「あぁ、それなんだが、今日はもう夕方だし、これ以降の依頼は明日もするだろ?」


「うん」


 肉集め請け負っちゃったからね。


「だったら、依頼書のこの近くの村の知り合いにまた付いてきてもらうってのはどうだろう?」


「それなんだけど、次からは頼まれたら回復も畑の復旧も結界もすることにしようと思う。その代わり、冒険者不足で滞っている依頼を受けまくろうと思う」


「あー、それもそうか。そうだよな…。端的に依頼だけこなしていればあの馬車の移動なら今日だけでもう1件は依頼こなせていたか…。回復掛けたり畑の復旧も良いと思うんだがな」


「さすがに説明に時間がかかる上に知り合いを介してでなければ信用されない。だったらその問答の時間を次の依頼に回すというのもありだと思う」


「依頼優先という考えがいいと思う。2件ともここまで魔物被害が出てるとなると、他も魔物被害でひっ迫している可能性がある」


「受ける依頼を増やして順番も考えないとですね。効率よく回らないと、肉を集めながらだと全部回りきれない可能性も出てきます」


 ん?

 全部回るの?


 ツチブタの人の解釈を聞いた俺の意外そうな顔を見て、クマの人が苦笑する。


「中央出身のやつらが地元に帰って、残った冒険者が肉集めに奔走すると、こういった依頼はたぶんほとんどのやつは受けない。ギルマスすら肉集めに奔走しているくらいだからな。だったらどちらもこなせるセージ様がいるうちに依頼を受けまくれば冒険者ランクも上がるかも…という下心もなくもないわけだが、これでも俺らは冒険者だ。困っている人からの依頼はなるべくなら受けたいって話なんだよ」


 どことなく照れくさそうに言ってくるのを見ると、下心云々は言い訳で、困っている人の依頼を受けたいってのが本音なんだろうな。


 なんだこの獣人パーティー。物凄くいい人達じゃないか。






 前の村の村長さんを【聖女の願扉】で送り届け、さらにまた【聖女の願扉】で帝都に戻る。


 一度行ったところなら簡単に戻れるから便利だね。


 暗くなる前に冒険者ギルドに戻ることが出来た。


「えっ?!昼ごろから依頼を受けてもう既に2件も達成したんですか?!」


 と受付の人が驚いていた。


 けど、その後に出したゴブリンの耳の数に驚いた。


 ゴブリンを倒したところで金にはならない。

 討伐証明の耳だって、これくらい討伐しましたよっていう証明なだけで、お金は、被害に遭っている人からしかもらえない。

 けどゴブリンの魔石は結構需要が多いらしく、冒険者はこのゴブリンの魔石で稼いでるみたいだ。


 獣人パーティーへのガイドの依頼は、ガイド最終日にまとめて支払うことになった。


 それと、今回受ける依頼は獣人パーティーと野良パーティーを組んだことにして、依頼を受領してもらうことにした。


「俺達はありがたいが、セージ様はそれでいいのか?」


「セージ様に何の得もない」


「何か企んでる…?」


「効率の事を考えてですかね?」


「こちらに冒険者としての知識があまりないので、今回みたいに村人との交渉や、誰か一人が戦闘に参加してくれるとか、臨機応変に対応してもらえたので助かった」


「それにしたって倒した魔物も等分というのは、これはよくない。依頼は合同で受けるにしても、倒した魔物は個人のものとしよう。みんなもそれでいいだろ?」


「ああ」「うん」「はい」


 そういうことになった。


 後はそれぞれが本日狩った魔物を出す。

 獣人パーティーの分は魔法鞄を貸し出している。

 はじめは驚いていたが、恐縮しつつも使い勝手の良さには敵わないようで、はしゃいで使っていた。


 この獣人パーティー、かなり優秀なのか、チームワークを活かして危なげなく魔物を倒していた。

 気付けばゴブリン以外の魔物も30体以上は狩っていた。


 それを見たギルドの買い取り員さんが、驚いていたし、喜んでいた。


 その後にアーシュレシカが「セージ様のご慈悲です」という謎のセリフとともに大量のオークを出していたのを見た時はアーシュレシカを置いて早く宿に帰りたくなった。



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