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043 終身雇用を見越して

 


 諸々の話が終わり、貰うものを貰ったのでさっさと城をでようとすると


「セージ様、少々お待ちを」


 俺だけ何故か呼びとめられた。


 ハルトとマモルは薄情にもさっさと行ってしまう。


 仕方なく俺はその場でとまり、声を掛けてきた文官の用件を待つと、文官が何やら持って俺のもとへやってくる。


「申し訳ございません。急遽色々な話がまとまり、大切な事を忘れてしまうところでした。…これを。明日、現在セージ様がお泊まりの宿に迎えが行くと思います」


 羊皮紙ってやつだと思う。

 それが少しズラした三つ折りにされて、封蝋で開けないようになっている。


 俺が受け取ると、文官は丁寧に挨拶をし、そのまま俺を見送る。


 広大な城の敷地は城から出て門までも長い。

 門まで行く馬車が用意されているくらいだ。


 せっかく用意されていたので、それに乗る。

 ハルト達は既に行ってしまったらしい。


 ほんの少しでも待っててくれてたらいいのにと思わなくもないが、彼らは彼らで何か言われていたみたいなので仕方ないか、とも思う。

 それに楽しそうにしてたし。




 昨日、宿でハルト達には俺のレベルやシロネ、シュラマル、ティムト、シィナのことも話した。


 なんとなく、親しくなるとその人を鑑定するのは憚られてしまい、俺はみんなの鑑定はしていない。


 だからみんなから教えてもらった自己申告を信じるのなら、シロネもシュラマルも子供らもレベル1000超えで、スキルもかなり増えたらしい。


 俺1つしかスキル生えなかったけど…。


 そのレベルやスキルを聞いたハルトとマモルは、少し遠い目をしたあと、ちょっと気が抜けたというか、安心した感じでいわれた。


「もうセージには俺達の護衛は必要なさそうだね。ここまで来たし、あの国からのちょっかいは()()うないだろうからしばらくは普通に生活する分にはそれぞれ自由に過ごしていいんじゃないかな?」


「ここまで来る間にもさ、まだまだ足りない知識はあるかもしれないけど、ゾーロさんとの会話の中からでも結構知識得られただろ?それに少しくらい騙されたとしてもなんとかなるくらいにはオレらも強くなったしさ」


 確かにその通りだった。

 それにまだ元の世界に帰る見通しもない。


 3人まとまって行動するのも安全でいいかもしれないが、連絡手段があるなら個別行動でも大丈夫な気がする。


 レベルが上がったことでハルトとマモルの足手まといから脱する事も出来た感じするし。


「僕はこの世界の書物や文献漁りをしようかなって思ってるんだ」


「オレは話せる異種族から話を聞いて回ったり、各地に眠ってるドラゴンから何か情報得られないか探ってみる。…ついでにせっかくだし冒険者満喫しようかと…」


 既に二人とも次の行動を決めていたみたいだ。


 俺がダンジョンでワクワクしている間に建設的な事を考えていたようだ。


 なんかマジほんとうにゴメン。

 二人を待たせて遊んでたみたいでごめん!


「あ、うん」


「女子達との定期連絡も今まで通りってことで、何か分かり次第集合しよっか」


「だな!」


 ってことに決まってしまった。

 なんかさびしさを感じるな。


 ……あれ?

 俺一人やることなくない?


 やる事ってか、出来る事ってか…。


 くっ…レベルは上がっても冒険者スキル皆無のままだからふたりに貢献できる事なにもないままだ…!


 ひとりオロオロしていると、ハルトとマモルが俺に生ぬるい視線をくれた。


「セージは好きなことしてていいからね」


「そうだぞ。無理すんな。てか、余計な事すんな」


 戦力外通告ッスね。

 わかります。


「うん。いや、ほんと、なにしよ…」


 好きな事ねぇ。

 とくにないんだよなー。


 無理しない、余計な事をしないと言うならやっぱ引きこもりか。


 うん。

 いいな、それ。


 そうしよう。


 シュラマルはマモルに付いて回るし、マーニもハルトに付いて冒険者するらしい。


 シロネは…


「どこまでもおともするッスよ!」


 らしい。


 ティムトとシィナも当然とでもいうかのように、俺の傍にいるようだ。


 もうそのレベルと装備ならいっぱしの冒険者としてもやっていけるのではと聞いてみたのだが、


「たまになら冒険者してみるのも悪くないけど、やっぱ安定した職は大事だよな」


「雇い主がいる上での冒険なら、万が一怪我をしてもその間もお手当確実だし、お見舞金だってあるよね」


 …ものすごく現実的な事を言われた。

 子供なのに世の中を知っていた。

 普段は結構無邪気なんだけどな。




 と、昨日の宿での会話を思い出しつつ、改めて俺に雇われたシロネ達とが待っている城門へと着いた。


 今回はハルト、マモル、俺の3人だけ城に入ることが許されたので、他のメンバーは城門で待機だった。

 もちろんテンちゃんも待機組だ。「きゅーんきゅーん」と悲しげな声で鳴いていたが城の中に入れることは出来なかった。


 けど今俺を確認すると早速シロネの腕から飛び出して俺の足にまとわりついている。


 踏みつけそうで怖いので抱き上げるとテンちゃんは大人しくなった。


 ぬいぐるみのようだ。


 いや、他人からは毛玉にしか見えないのだが。


「お帰りっス。ハルト様達は先に宿に戻ったッスけど、セージ様はどうするッスか?」


 俺はシロネに文官に言われたことと貰った手紙を見せる。


 シロネが封蝋を見た瞬間、ここで開封するのはダメだとなって、宿に戻り、それから手紙を開くことになった。


「帝国の事はよく分からないッスが、封蝋を使う人からの手紙というのはよっぽどッスよ」


「でも封筒にも入ってない手紙だし、簡易的な手紙にそんな大げさなことは書かれてないんじゃ?」


「封筒?」


 あ、そこからか。


 そうか。

 改めて考えたらここは紙って結構大事な世界なのかも。


 俺は色々な種類の便箋や封筒を見せると、シロネはとても驚き、なにやら考え始めている。


 そんなシロネを横目に、俺は貰った手紙を読むことにした。


 手紙はハーちゃん家からだった。


 お礼したいし、ハーちゃんが俺に会いたがっているので急で申し訳ないけど明日ウチ来てよ、みたいなことが丁寧に書かれていた。


 時間は朝と昼の間というざっくりしすぎた指定だった。




 昼食を宿で食べてから俺達は商業ギルドへ向かった。


 とりあえず商業ギルドに登録してみることにした。


 ゾーロさんに色々売っちゃったけど、登録しなくていいのかなって気になったので。


 それと改めてティムトとシィナを雇うことにしたので。



 商業ギルドで話を聞くと、特に今までゾーロさんに売った分もこれから売る予定であっても問題はないそうだ。


 ただ、商業ギルドを挟まない個人間でのやり取りになるため、なにか問題がおきてもギルドでは一切関知しませんよ、ということだった。


 それだけなら良かった。


 でもツイデなので商業ギルドに登録しておくことにした。


 マモルからの助言でダンジョンでたくさん拾った薬草を薬師ギルドに売っても良いんじゃないかってことだったし。


 それに商業ギルドのギルド証はギルドや商人同士、

 売り買いするのに一種の信用の指標にもなるらしいし。


 あとはシロネとティムトとシィナの従業員登録もすぐに出来るらしいのでしてもらった。


 毎月決まった金額が支払われるようになる。


 シロネはどこのギルドカードも持ってないので商業ギルド証作って、ティムトとシィナは冒険者ギルドカードを持っていたのでそちらに振り込まれるようにした。


 そこで俺のカードは、冒険者ギルドカードと纏められるらしいので、冒険者ギルドと商業ギルドのカードを統合してもらった。


 商業ギルドの受付の人は、俺の金ぴかの冒険者ギルドカードを見て一瞬ビビったっぽいけど、特に何も聞かずにすぐに営業スマイルで対応してくれた。


 俺のギルドカードには結構な大金が既に入っていたらしい。


 たぶんナチュピケのギルドで回復魔法を使用した時のお金だと思う。


 それ以外で働いた覚えはないので。


 受付の人の話によれば、ギルドにお金を入れておくと、世界どこの商業ギルドでも引き落とし可能なので、不必要なお金は入れておいた方が安全らしい。


 俺の場合は【アイテムボックス】があるから大丈夫だけど、他の人はそうだよな、と思った。


 せっかく勧められたし、断るのもアレなので金貨5000枚入れておいた。


 ギルドの受付の人ドン引きしてた。


 けどこれで俺が元の世界に帰れたとしても、シロネとティムトとシィナにはずっと給料が支払われるので安心だ。


 そうだな。これからもこうしてギルドに入れておいた方がいいかもな。


 手持ちのお金に困ったらまた【アイテムボックス】に入っている深海から拾ったデカイ骨とかチャージして換金すればいいし。


 それにシロネがゾーロさんとの商売で得たお金も持っているし、しばらく生活には困らないよな。


 あぁ、あと聖水のお金もギルド証に入金されるようだし。

 俺がコツコツ聖水作って売れば食うに困る事はない…よな?



 さらに子供らは思った以上に給料がもらえると喜び、その給料の半分をナチュピケの自分が育った孤児院に届くように頼んでいた。

 その分の手数料分も込みで俺は二人に給料を振り込むことにした。


 受付の人に色々話を聞いたり手続きをしてもらっていると、受付の人と入れ替えで、美熟女が受付側から俺の目の前に現れる。

 そしてゆっくりと頭を下げ、


「失礼いたします。セージ様、別室をご用意しておりますので、そちらに是非」


 と高級感あふれる応接室っぽい部屋へと案内された。


 大金を預金したもんだからセレブと勘違いしてこんなすごい部屋を用意してくれたんだろうとか?


 とか考えていたら、違かった。


「突然の御無礼をお許しください。わたくし、ラザーレンス帝国帝都の商業ギルドマスターを務めております、キンバリー・セルクと申します。以後お見知りおきを」


 わお、美しすぎる系のギルドマスター。


「…どうも」


 え、こゆとき他にどう返事するの?!


 やべ。

 ナチュピケの時の二の舞状態。

 学習しない俺再び!


 いや、ちょっとまて、今回はあるぞ。

 ポケットにスマホが…!


「このたびは誠にありがとうございます」


 ふぁ?!


 まって、急に?!

 何が?!


 混乱しすぎて俺は後ろに控えているシロネに目を向ける。


 シロネは心得たとばかりに一歩前に出て会話を代わってくれ…る前にまたしてもキンバリーが話を繋ぐ。


 なんか流れるように話す人だなぁ、と心のどこかに居る冷静な俺は思う。


「聖水を、格安で卸して頂けると」


「…あぁ」


 随分と話が早く来ているものだな。


 礼を言われた理由が判明して少し落ち着いた。

 けどまだ動揺はしている。


 そんな事の為にわざわざ別室で偉い人と対話?


 まぁ、あとの詳しい話はシロネにお願いしようと、ふとシロネを見ると、驚いた顔でこちらを見ていた。




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