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155/155

155 こいつはダメだ、という目を向けられも気づかないふりでやり過ごす

たくさんの誤字報告ありがとうございます!




 


「圧倒的世界平和が近くにいた」


「それこの世界の均衡を壊すからやめた方がいいからね!?」


 賢者、必死だなー。


「だよねー。わかってるから。だからやってないだろ?」


「セージがカンシャク起こしたらやべーやつじゃねーか」


 俺の信用が日を追うごとになくなっていく気がする。


「俺はそこまでやべーやつじゃねーですよぅ」


「もー、二人とも冗談じゃないから。ほんとやめてよねー。魔物の被害者は本当に多い世界だけど、その魔物から恩恵を受けている方が断然多い世界でもあるんだからー。魔石は日常的にエネルギーとして使用されて、生活に必要不可欠なものだし、魔物肉は大切な食料源の一つ。そりゃあ食用にされている動物も少しはいるけど、それにしても魔物ありきのサイクルで生存している。セージが北大陸でちょろっと作った聖水くらいだったら大地の汚れを祓って、多少魔物が弱体化する程度で済むけど、セージが全力バフ増しで聖水スキルを行使したらマジでこの世界から魔物が消えかねないんだからね!」


 お、おう。

 ちょっとした冗談だったのに、冗談でも言っちゃダメなことだった。

 いや、マモルの場合心も読めちゃうから心の中で思ってたことバレバレだよね。


「と、賢者は申しておりますが、実際魔物がいなけりゃ動物が幅きかせてそれなりの生態系ができるはずだぜ。一般人は魔物いないことにこしたことないからな。ただほら、俺たち、強い魔物、倒したいじゃん? その辺の魔物がいなくなるならまだいいし、安全に暮らせるようになるとは思うけど、セージのガチ浄化とかダンジョン消えかねねえとかいう危惧がよぎるわけよ。異世界から来てこっちダンジョンとか夢の国なわけで」


 ……。

 …………。

 あ、うん。


「そ、そうだよね。生態系だな。うん。生態系、大事だな」


 そういうことにした。

 魔物倒すことにヒャッハー感じている勇者とか賢者とかしょうがないんだ。

 だって勇者と賢者だもの。

 悪い意味での魔王がいない世界。たぶん。だったら害ある魔物倒したいよね。

 だって勇者と賢者だもの。


「いーい? セージ。この世界にはこの世界のあり方があるんだからね? 魔物いて可哀想な世界とかじゃないんだからね? 魔力があって、魔法があって、その副産物として魔物がいる世界なんだからね?」


 両肩に手を置かれ、ぐっと力を込めて力説された。

 目力もある。

 こういう人の言ってることってダメな感じがする不思議がある。


「それに魔物の中にも意思の疎通ができて貿易とかもできてるやつらもいるからなー。ひとくくりにできねーよな」


 それは知ってる。

 たぶんばーちゃんの国がそうだ。

 ばーちゃんの国のゴブリンとかオークとかコボルトとか、普通にしゃべるんだよ。ファンタジー極まりない。

 あと他の大陸の魔物と違って愛嬌があるというかファンタジーフィルターが入ってるってか、柔らかい雰囲気がある。「手感」がある微妙なゆるキャラみたいな。そんな感じになっている。国の外に出るときは全身甲冑みたいなの着て外見がわからないようにしているみたいだけど。

 そんな全身隠させてでも側に置いときたい優秀なやつがいるのも知ってる。

 素で会ったことはまだないはずだけど、ばーちゃんとかカジュからばーちゃんの国での国民に対しての注意事項として聞かされていた。

 聞かされていたけど、ばーちゃんの国に俺がいた期間とかそんななかったから見かけなかったな。そのあとなんやかんやあってなぜかここにいるし。

 ばーちゃんの国の中を見て回るって話だったと思うんだけどなー。

 俺のしょーもない思いつきがあれしてこれだ。


「あー、うん、だよな」


 あ、軽い返事すぎたか?


「「……」」


「な、なんだよ」


 勇者と賢者がこっちを見てる。

 まるでやばいやつを見かけたかのよう。


「なあセージ、暇だからって聖水スキルブッパとかしないよな?」


 猫が暇すぎて爪とぎ段ボールの端っこ囓りはじめるみたいな?


「この世界最大の謎に包まれたダンジョンだよ? うっかりとかしないよね?」


 え、俺ってくしゃみ感覚で聖水スキル使うとか思われてる?

 ちょー心外。


「遺憾の意」


 途中ちょっと話聞いてなかったのをごまかすために、かわいげアピって頬をぷくっと膨らませてみた。


「うわ、ほっぺた膨らませてふざけてやがる……」


 スベった。


「ねえ、セージ、こっちは真面目に話してるんだよ? ほんとに。真剣になんだからね?」


 そこまで言われるって逆にやれって言われてるように聞こえるんだが。

 え、どっち?



 ◇



 脱、ダンジョン!

 シャバの空気、うまーーーぁい? わからん。シャバとかもなんだかよくわかんないやつだけども。


 いろいろあって今、俺は農地にいる。

 全力聖水散布疑惑で急に勇者と賢者にハブられたとかではない。

 なんか、急に聖王国で聖女と祭り上げられているはずの女子から連絡があって、不本意ながらマジで豪農王みたいな人になることになった。


 まあ、いろいろとか言ってるけどなんのことはない。

 ATMとして活躍するときが来たというだけのことだ。


 ―――――

『聖園くん、大量の異種族奴隷いらない?』


 聖女としてこちらに召喚された女子の一人、日下さんが急に俺に電話かけてきて唐突にごついこと言ってきた。


『いらない』


 普通にお断り申した。


『いや、そういう正直な返事いらないから。こっち遠回しな頼みだから』


 遠回しとかめんどうなことマジやめて。

 直球で『買え』でいいじゃん。

 あ、でもそれだと言いなりくさくて逆に気持ち悪いか。あと『買え』とか言う人の印象も悪い。

 よし、そのスタンス了解した。

 ―――――


 てな感じで聖王国どころか中央大陸中から奴隷を大量に買うことになった。なんでかわかんないけど。

 といっても聖王国とその周辺国の人族以外の奴隷かつこちらに敵対しない前提な感じの人に限るってお話でつけさせてもらった。


 あの暗くて気持ちの悪いダンジョンから解放されてラッキー。

 とか思ってない。ちょっとよぎったけど思ってはない。

 ハルトとマモル、あの二人と協力してダンジョン攻略したかったなー。

 三人で友情ゴールしたかったよー。

 でもしょうがないよね。別件入っちゃったんだから。忙しい。しかたない。つらい。


「つまり、俺はここでこの椅子に座ってぼーっとしとけばいいってことだな。なんかいつのまにか猫いっぱいいるけどどっから来たんだろね」


 農地来たら猫がいた。歩いていた。二足歩行してた。にゃーにゃー言ってた。真面目そうに働いていた。配下久遠の騎士達のサポートをしていた。不思議なことになっていた。

 ま、異世界だし、そんなこともあるか。


 で、俺。農地の城。城? その王様が座っているような広間と椅子に鎮座。

 いや、暇だしやっぱゲームしとこ。

 俺が椅子に座ったらすかさず猫がお茶を出してくれた。ありがたくいただく。

 んまい。緑茶の味と適度に熱めの温度がしみる。

 お茶請けに高そうなチョコが3粒。少し渋めなお茶と合うー。


「なんかすごく不安になるような言い方ッスけど、概ねあってるッスね」


 子供たちはダンジョンに残る方向で一致団結していた。テンちゃんも。

 シロネはついてきてくれた。ダンジョンなんかに負けないめっちゃいいやつだ。

 あちらにはシェヘルレーゼとアーシュレシカの配下もいるし、余裕だろう。


「セージ様、こちらの枠に【堅牢なる聖女の聖域】を【付与】していただけるでしょうか」


 アーシュレシカが網のとこのない、でっかいテニスラケットみたいなやつを持ってきた。

 大人姿のシュラマルが余裕で枠内に入るくらいの。


「これに付与してもらってどーすんスか?」


 興味を示したシロネ。

 シロネが興味を示さなかったら知ろうとしなかった俺。

 ここにコミュニケーション能力の差が歴然と出てしまった。


「我々でも任意でセージ様のスキルの結界の効果を限定的に使えるようになります。これによって治癒院の結界のようにこちらに害のない者を選別できます」


 怖い感じの人をそっとお断りすることは大事だな。

 治癒院の門前でたまに中に入れなくて騒いでるやついるからな。あれマジ怖い。すぐに帝国の騎士団にしょっぴかれてるみたいだからいいけど。


「こちらを量産できましたなら、中央大陸各地に配下を派遣し、異種族奴隷を買いあさろうと思います。周防様方が聖王国を統治するにあたり、不当に奴隷にされた異種族奴隷の行き場がほしいとのことでした。セージ様が広大な土地を所有したと知ってお願いされたのかと」


 すごい計画出た。へー。そうなんだ。

 でも農地に人が住むことになるなんて不思議ー。

 この農地を二足歩行の猫が闊歩してることも不思議―。

 それについて誰も触れないことも不思議ー。

 さっきわざわざ声に出したのに誰も話題に触れてくれない不思議ー。

 シロネでさえも。

 ……この猫たち本当に大丈夫、なんだよな?

 茶、うめえ。


「女子さんらの要望にあった異種族の奴隷をたくさん買うってやつッスね。全員買わないんスか?」


 女子さん……。


「あの大陸の異種族人は人族に虐げられた方々が多いでしょう。セージ様は人族ですし、反発する者がいるだろうことは確実です。ましてセージ様の下での奴隷環境に慣れてくれば、もっと早く家族や友人知人ごと買ってくれればと悲嘆し、逆恨みされても面倒なのです」


 アーシュレシカの説明に、シロネがなんのことのないように感想を返す。


「それはありそうッスね」


 わ、そうなんだ。

 結界、大事。逆恨み、こわっ。


 で、たくさん作った。

 アーシュレシカが用意した枠にササッとまとめて【堅牢なる聖女の聖域】を【付与】できた。案外簡単なもんだった。

 それもこれもアーシュレシカとシェヘルレーゼが地道に俺の分まで【付与】のスキルを上げてくれたからだろう。

 なるほど。スキル上げって大事ってこういうことなんだなー。




今日、12月15日(月)2巻発売!

嬉しありがたいです!

(コメントスキル低いのでアレですが本当に、ありがとうございますの気持ちでいっぱいです)

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