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152 生物型ダンジョン攻略4 飽き……いや、なんでもない

誤字報告ありがとうございました!

 


 大破した船のこともあるし、生き延び、無事にダンジョンから脱出することができるってことでシュラマルと同船し、生き延びることができていたセーフティーエリアにいた人たちのほとんどが西大陸……ではなく北大陸に戻ることになった。

 俺たちが西大陸に送ればいーじゃんとかテキトーに言ってただけで、彼らは北大陸から船で東大陸に行こうとしてたんだもんね。ってことで北大陸の帝都の大門前に送り届け、転移扉【聖女の願扉】にみんながびっくりしている間に不本意ながらまたダンジョンに戻ってきた。北大陸の港じゃなく帝都の方がいいって言うからね。ささっと送ってきたよ。シュラマルはなぜか残った。ダンジョンで生き延びることから攻略にシフトし、楽しげにしている。俺と海底にいたときにない笑顔。心まで若返ったからワクワクが顔に出たのか、それともメンツの力強さか。でもこの中で一番レベルが高いのは勇者でも賢者でもなくシロネさんなんですよね。


 北大陸帝都じゃあんまゆっくりもできなかった。コソコソトボトボとダンジョンに戻ってきたさ。商業ギルドの某ギルドマスとか某夫人とかに捕まりそうだし。西大陸はついこないだ出たばっかで「お早いお出戻りですね」感がものすごい。

 やっぱり農地でのんびりか? いや、それなにもしてない感じだから船で南を目指すとか息巻いてたんだよな、俺。心の中だけでならまだしもハルトにぶっちゃけてたし。

 でもやっぱ船旅とかいうのは俺には無理みたいだよ。俺と船は相容れない。船ってか海ってかダンジョン攻略ってか。


 よく考えたらさ、配下級でも久遠の騎士であるシエナとかピクシー=ジョーとかの空飛べる組に先行して南大陸行ってもらうとかやりようあったよな。彼らに固定して出しっぱにした【聖女の願扉】でも持たせてさー。

 もしくは覚えてほとんど使ってない付与魔法を【異世界ショップ】で購入した何らかの扉に【聖女の願扉】を付与してその扉の持ち主の思った場所に行けるようにするとか。

 ……なんかすごいモノを思いついてしまったな。

 俺、誰かに命狙われないかな? まあ、ドアじゃなくて扉だから大丈夫か。なんならおしゃれな庭に置くアーチ状の蔓植物巻き付けておしゃれにするアレとかに付与でもよさげだし。むしろなにもなくてもスキルが出てくるんだからそのまま出しっぱでもいいか。そうなると付与魔法の使い道が見当たらない。もう少し俺が天才だったら何らかの使い方を思いつけるんだけどな。残念だ。


 俺の魔法って俺にとってそんなに使い勝手がよくないよな。もっとこう……あ、いや、でもよく考えたら俺、魔法自体そんな必要なかったな。なんなら【異世界ショップ】でだいたい事足り満ち足りていさえする。【聖女】スキルはまあ「あってよかったな」ぐらいだし、【職業:男子高校生】に至っては未だに意味が不明すぎて目をそらし、そっとしとく案件だしな。


 さて、こんな益体もないことをだらだら考えているのはもちろんいつものごとく現実逃避ゆえだ。


「ねえ、なんでわざわざこんな所で寝泊まりするのよ。あなたのスキルか何かでもっと快適で安全な場所で明るく広い所で休むこと、できるわよね?」


 カジュがまっとうなことを言っている。

 いいぞ。もっと周囲に聞こえるように言ってやれ。


「……ハルトはもちろんだけど、マモルもなぜかこの件については乗り気なんだよ。しょうがないよ」


 不便で不快で危険極まりないダンジョン内での野営。


 結界あるからいいだろ? 便利グッズあるじゃん。なんならコテージとか出せんじゃんね。それにほら、久遠の騎士とか24時間対応の護衛いるし。ごねる俺をそう軽くいなしてハルトは言い、ウキウキと野営の準備を始めた。それにうんうんとマモルが同意し、テキパキと一緒になって野営の準備。なんだかんだエルフ達もワイワイと野営の準備をしている。友人想いで空気読めるタイプの俺は、二人が……みんながそれでいいならそれでいいかとしぶしぶながら引き下がった。そう、それがすべてである。


「……そう、ならしかたないわね」


 ふう、と吐息混じりにおっとりと頬に手を添えるカジュ。

 何が「しかたないわね」だ。もっと抵抗しろよ。あんたはもっと抵抗できる方のエルフだろ?!

 あっれー? ちょっとハルト……いや? マモルか? 君、マモルに気遣い……寛大過ぎやしないかね? これはもしかするともしかする感じ?

 ……え、マジ?


「なにかしら? なんだかあなたからとっても不愉快な気配を感じるわ。妖精族ってそういうとこあるわよね」


 エルフも妖精族の分派だ、みたいなこと聞いたことあるからそんなこと言ってるとそのうちブーメランするんだからな。と思いつつもカジュから視線をそらしつつ、そっとマモルに視線を向けると笑顔でイラついてる顔を俺に向けていたので見なかったことにしてゆっくりと目をつぶり、少しばかり顎をあげ、泰然と構えている風を装うことにした。

 ……人は暇すぎるとしょうもないことしか考えないんだなー、と身をもって実感できた。藪蛇って怖いんだね。



 ワイワイと野営準備している集団から少し離れてその集団を見守る。

 そんなムーブを決め込もうと思ったのに、いつの間にか託児所みたいな感じになってしまっている。それとも俺も子供枠としてこの集団に入れられた感じなのだろうか?

 とにかく、ちびっ子集団の中に俺はいる。

 されるがままに両手を子供たちに引っ張られ、いいようにされている。言い方悪いか。おもちゃにされている。……これも言い方悪いな。まあとにかく無気力に、されるがままになっているわけだな。


「ちょっとだけ! もうちょっとだけ狩りしたーい!」


 俺の左腕をぐいぐい引っ張りながらシィナがやんちゃなこと言っている。


「好きに行ってきなさい」


 このくらいの階層なら君一人で余裕だよね。オーバーキル的なおつり出てくるよね?


「ダメなんだよー、狩り行くならにーちゃん付いてなきゃダメだってハルにーもマモにーも言うんだ。だからしょーがないんだよ!」


 しょうがないとかいう理由で俺に付き添い頼むんじゃありません。なんか、心がきゅーっとするからっ!

 多分ハルトもマモルも俺ならめんどくさがって子供らに付き合ってダンジョンをうろついたりしないという見込みでそんなこと言ったんだと思うぞ。


「だ、だめなんだぞ! かってにここからでて、すきかってしたら、だめなんだぞ!」


「そうだぞ! お前達だけでこっそりレベルアップなんてさせないぞ!」


「ん! んむっ!」


 そして俺の右腕を消し炭系魔王の子と転生幼王子となんだかわからないけど、みんなが俺をひっぱって楽しそうだからいっしょになってひっぱって遊ぼうとか思ってそうな獣王の子が一緒になってひっぱっている。

 シロネがこの状況をみてオロオロしている。なにげにシロネさんもなにもしてない組、じゃなくて子供に属している。この集団の引率……お守りかな? え、なんでその変なデカいタマゴ抱えているのシロネさん。ハルトから「抱えてあっためといて」って言われたって? ハルトが拾ってきたところにそっとぶん投げてきたらいいと思うよ。


「好き勝手じゃねーって。おれたち今日はゴエーにセンネンしてたから今の自由時間に魔物倒してくるんだよ」


 俺の腕を引っ張りはしてないが、シィナ側に付いているティムト。

 もうティムトとシィナの二人だけでこのダンジョンクリアできるんじゃないかな? 勇者とか賢者とか出る幕なく。


「だめなんだぞ! こどもはあとでみんなでいっしょに騎士にてつだってもらってあんぜんにトーバツするんだぞ!」


「うむ。騎士に魔物を押さえてもらって安全にレベリング。わざわざ今子供たちだけで危険なことをしにいくようなこと、しなくともいいではないか」


 二人の言葉を聞いてハッとし、そっと俺の左腕を引っ張るシィナに加勢し始める獣王の子。


 ダンジョン1日目にしてなんかもうアレだな。飽き……疲れたな。どうにかサクッと攻略できないモノだろうか?

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