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150 生物型ダンジョン攻略2 肉闇の先のセーフティーエリア

誤字報告ありがとうございました!

 


「そこ右ね。で、すぐ右の壁? 肉? の色がちょっと違くなってるとこ【斬撃】で穴開けると宝箱あるっぽい」


 俺、ナビすることにした。

 とりあえず宝箱あるとこだけ。


 というのも、やることないからさっさと次層への道順や宝箱の道順へと導くスキル、【聖女の輝導】を発動したら勇者と賢者がごねた。すごくごねた。

 そんなんされたら営業妨害だと言われた。

 ……営業て。

 そこまで言われたら俺もおとなしく……いや。ダメだった。

 どうしても「宝箱を見逃す」のだけは許せなかった。


 なので話し合った。

 そしてマップ情報誌で宝箱の場所だけは確認し、回収してもいいことになった。

 宝箱以外は自分たちでマッピングして、罠解除しつつ攻略するんだと。

 ちょっと俺には理解できなかったので、とりあえず宝箱だけは回収できることになったので良しとした。

 二人からすれば宝箱にいちいち反応し、根こそぎ回収していくスタイルの俺のほうが微妙らしい。

 余裕あるやつは宝箱にこだわらないのか……。

 あれ、これもしかして俺の方が攻略ガチ勢、なのか……?


 ともかく、勇者と賢者はちまちまとダンジョン攻略することに意義があるとか言うんだ。

 個別に結界張ってる時点でぬるいのに、それ以上の恩恵は許さんとか言っていた。

 わからない。俺なんて恩恵なんてものはあればあるだけ嬉しいし、活用していきたいと思うけどな。得られ、受けられる恩恵はギリギリまで受けようとか思うんだけど。ほら、休み時間はギリギリまで休んでたい(それか宿題や課題とかおわらせるための時間にしたい)。チャイム鳴ってから教科書用意したいよね。次の授業の為に休み時間中に特別室(音楽室とか体育館とか)に移動とかジャージに着替えて校庭へ、とかほぼ絶望の域だよね。


 あー、学校が懐かしい。

 これからは前向きな気持ちで学校行くからおうち帰らせてほしい。

 ダンジョンなんかゲームの中だけで充分だよ。


「ほら、セージ。宝箱だよ」


 ぐだぐだ考えている間に宝箱部屋に入っていた。

 そしてマモルが慈愛に満ちた感じに俺に宝箱を勧めている。「さあ、お開け」とでも言う感じに。

 小馬鹿にしやがって……!

 でも宝箱開けるの楽しい!! 好き!!


 このダンジョンは骨でできた宝箱が仕様のようだ。

 実に禍々しい。

 厨二っぽくて嫌いじゃない。


 俺は【異世界ショップ】で購入した「最強!」とか「ナンバーワン!」とか「超安全!」と名打ってある作業用手袋をしっかりとはめて宝箱を開ける。……なんだかよくわからない謎の骨とか素手で触りたくないじゃん。


「あー、またこれか」


「ちょっと、ハズレ扱いしない。これ、この世界の国々にとって是が非でも手に入れたいものなんじゃない? まあ中央大陸の聖王国にとっては営業妨害もいいとこだけど」


「『豊穣の雨』が入った宝玉か。これで3つ目だな」


 野球ボールみたいな大きさの淡い金色の光を放つ玉。球か? 

 中にはハルトが言ったように『豊穣の雨』なる天候? が入っている。使うとその通り豊穣の雨が降り、一年間その国に豊穣が続くらしい。

 宝玉がどうやって国の範囲を決めているか謎なやつ。

 北大陸の帝国なんてのはすっげー広いし、俺の国なんてめちゃ小さい。コスパよく使うなら帝国での使用なんだけどな。

 北大陸は帝国一強だからあんま問題なさそうだけど、中央大陸や西大陸の殺伐とした大陸でどこかの国が使用したのバレたら戦争ふっかけられて土地奪われそう。使いどころ微妙だよね。


「じゃあまあ1個くらいはばーちゃんへのおみやげにしよう。残りはどっかの帝国とかに割高で売ろう」


「うーん。割高だろうと喜んで買い取る帝国の未来がみえるけどなー」


 その戯れ言のような未来、お前が言うと本当に聞こえるよ。

 よし、某北大陸の帝国に売ろう。


「んなことより次行こうぜ」


 ハルトの脳筋化がすごい。宝箱の宝に興味がなさ過ぎる。あれか。バトルに関係ないものはそんなでもないですか。そうですか。


 ◇


 時間的には夕方過ぎ。

 ずっと暗い肉の中なので時計で確認。そして休憩も大事ということで、マップ情報誌でセーフティーエリアを確認してそこで休憩することになった。


 ここまで皆そこそこレベル上げできたのではなかろうか。俺以外。

 そう、シェヘルレーゼに任せっきりにしていて忘れていたあの馬たちさえもレベル上げに参加していた。馬といっても見た目が馬っぽいから馬竜と呼ばれている竜なので、そこそこのレベル上げでなんかすごい強そうになってる……。


 あと、テンちゃんな。あいつ、子犬の皮を被った獰猛な何かだったよ。ハルトと競うように魔物を倒しまくっていた。俺があっけにとられてふるふると何かと化したテンちゃんを指さしてたら、ティムトとシィナが「ああ、あれなー」みたいな感じで知ってた。

 一緒にダンジョンとか行ってたもんな。そりゃ知ってたか。

 だったら教えといてくれてもいいのに。とかつぶやいたら逆にびっくりした顔をされてしまった。「飼い主なのに知らなかったの?」みたいな。流れで飼い主……テンちゃんを従魔にすることになったけど、俺とテンちゃんの関係なんてそんなもんよ? 


 などとここまでを振り返っていると不意に、


「んあ? 人がいる」


 勇者がぽつりと言う。


 ずっと先はまだ暗闇。セーフティーエリアはこの先。

 勇者の視力パねぇっすね。


「十数人、かな。生き残ってられたんだねー。すごい」


 どこから目線で言う賢者、さすがッス。


 こちらは周辺を文明の利器で照らしているので、あちらからも既に確認されているだろう。たぶん。いや、まだかもしれない勇者と賢者の視力すごそうだし。

 この先にいる人、穏便な人たちならいいけど。


 文明の利器。それは【異世界ショップ】で購入したライト類だね。

 なんか、アレなんだよ。ハルトが『行く先を照らされて何が攻略だ! なんか、違う!』とか悔しげな顔でだだこねて。ただでさえ勇者スキルでぬるゲー。そして俺の結界で過保護な状況、その上に安全安心な道しるべがあるなんて楽しくないとかなんとか。マモルもそれに同意するようにうんうん頷いてるしさ。でも自分たちが照らして進む分にはいいらしい謎。それはわからなくもないわけでもないかもしれないけど、めんどくせえなと思わなくもない。

 ハルトもマモルも光魔法使えるけど、それで魔力使うなら攻撃スキルや魔法に使いたいので現状となった。


 俺は自分の周りにだけ【聖女の輝導】を使用して足場と視界確保したよ。俺には【暗視】や【夜目】のスキルなんてないからね。その二つのスキルの違いはよくわからないけど、こういう現場ではよさげだよね。まあそれらがあっても足場の関係でやっぱり【聖女の輝導】使うだろうけどさ。


「おーーーーいっ」


 相手方にこちらの存在を知らせるように声をかけつつ進むハルト。

 すごいよな。手慣れてるよな。こういうの、ダンジョンマナー的なやつなんだろうか?


 そうしてセーフティーエリアにたどり着く。


「結構人がいるね。船ごと飲み込まれたのと、ちょっと前からいたかもしれない感じのがちらほら、かな?」


 マモルが教えてくれた。

 20人近くいるっぽい。


 うん。ちょっと前に似た感じの状況あったな。

 あのときは今より人多くて集落とかできてたけど。今回はそうでもなさそう?


 マモルがふわっと光の魔法を展開し、セーフティーエリア全体を照らす。


「あっ!」


 数秒してハルトが声をあげる。

 ハルトの視線を追うと、俺の近くにいたシロネも「あっ」と声をもらした。


「あれー? シュラマル、奇遇だねー。なにしてるのー?」


 マモルがのんびりと声をかけた。


「マモル殿。それにハルト殿、セージ殿」


 と、声を返すのは高校生っぽい体格の、小学生っぽい声と顔にあどけなさのある……ような鬼人族の子。

 鬼人族ってみんな名前がシュラマルなのかな? もしかして白髪はくはつの赤鬼系はみんな「シュラマル」とか?

 てかなんでそんな子が俺の名前まで知ってるの?

 マモルとハルトの冒険者関連の知り合いならまあそんなものか?

 もしかしてマモルとハルトが俺のこと話題にでも出したから名前知ってたのかな?


「なにお前、若返ってどしたん?」


 ハルトがさも普通にシュラマル少年に声をかける。


 ……若返って? 若返った? え、なに、じゃあシュラマルってあのシュラマルさんですかね?

 若返ったってことは若返りの実関係であれした感じですかね?

 え、待って、恥ずかしい。マモルとハルトがよそで「俺のこと話題に出した」とか考えてて恥ずかしい。

 チラリとマモルを見ると、かわいそうな子を見る目で俺を見ていた。……それも一瞬ですぐに視線をそらされた。ひどい。いや、ありがたい。武士の情け的なそれですね。

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