125 うちの味、……ん?
レビューまたもらえた! みっつめによっつめ! ありがとうございます! 嬉しいいいい!
読みたい話と「愚痴」といいつつめっちゃ優しみの期待をありがとうございます!
全褒めかつ「好み」とかスゲー同志的なほっこりをありがとうございます!
作った。
全部うちの味だけど。
あれからすぐにその場で【堅牢なる聖女の聖域】という範囲結界を展開し、いつものテントを出した。
そしてものすごい勢いでアーシュレシカが料理していく。
「って、お前が作るんじゃないのかよ!」
代表してハルトが抗議してきた。
ちょいおこだ。
普段へらへらしてるやつが目をバキバキにしてマジなのって怖いね。
あー怖い怖い。とっても怖い。
「アーシュレシカはオール同期のオリジンタイプの久遠の騎士だから俺のスキルと記憶をトレースしてる。そーゆーわけだから俺が作るのとかわりないんだよ。むしろ俺の曖昧な記憶にある味を再現できるぶん優秀だ」
「おまかせください。セージ様のレシピは完璧に作れます」
ものすごい早さで料理しながらフォローしてくれるアーシュレシカ。ありがたいよ。最高だよ。
“セージ様のレシピ”という言い方が引っ掛かるけど。
あと俺がアーシュレシカを優秀と言った瞬間テンション爆上がりっぽい感じがちょっと怖いけども。
「お、おう」
張り切っているアーシュレシカにあまり強く出れないらしいハルトは煮えきらないお返事だ。
納得いってないっぽい。
でもそれも食べたら変わるぜ。
そうだな。
手付かず未開封の久遠の騎士を贈呈する準備しとくか。
ハルトもマモルも久遠の騎士をカスタムしたからな。
記憶もスキルも同期されなかったはずだ。
全て任意のオリジンタイプで起動してオール同期したあと、スキルブックで料理スキルを後付けし、【異世界ショップ】で料理関連の通信講座やレシピ本で勉強してもらって料理作りの下地作りをがんばってもらえたなら君の実家の味も完全再現できるはずさ!
俺の場合はもともと俺が料理できたのでアーシュレシカもシェヘルレーゼもそこそこ料理できる状態だった。その後本格的な勉強もしたみたいだけど。
てなわけでどーん。
アーシュレシカによって我が家の家庭料理の数々をテーブル所狭しと並べられた。
「ほら、食えよ」
敢えて生あたたかい表情と口調で諭すようにハルトたちにすすめる。
ニヤニヤしないように気を付けないと。
「そのニヤニヤやめろ。クソッ! これだよこれ! 悔しいがこれこそオレ達が待ち望んでいたやつだよチクショー!」
ニヤニヤしちゃってたわ。
そしてキレながらうまそうに料理をたいらげていくハルトたち。
器用だな。さすが勇者とその仲間たちなだけある。
そんなハルト達を見て自分達も食べて良いのかこちらの様子を窺いつつオロオロする子供たちと現地人たち。
子供たちや仲間になってくれた現地人組に気を使うことすら忘れて涙を流しながら暴食いする勇者と転移転生者たちを横目にしつつ、
「負けずに食べないとあいつらに食べ尽くされるぞ」
とコメントしておく。
こっちの人たちには馴染みのない食べ物ばかりだからちょっと引いてるっぽい。
アーシュレシカがビュッフェスタイルの食べ方を教えつつ食事を促す。
ついでにアーシュレシカが俺用に皿に適度に盛ってきてくれた。
「ありがとうな」
受け取り、さっそく食べながらマップ情報誌をペラペラ眺める。
お行儀? んなもんもとの世界に置いてきたわ。
たぶんもとの世界に戻れたらまた装備されると思うよ。たぶん。
「セージ様、これって何ですか?」
俺の隣でもぐもぐがつがつしながら、トラっこが聞いてくる。このこは俺やアーシュレシカが手にするものにいつも興味津々なようだ。
「……ん?」
マップ情報誌の今いる場所を解説しているページに、他のページより小さくて硬い紙で、袋とじされているのがある。
よくクーポンになってるようなやつ。
てっきりそうだと思ってたけど、トラっこに聞かれてよく見てみればちょっと違うことがわかった。
そもそもこの世界にクーポン使えるところなんてないもんな。
だったらこれはなんだ?
切り取りやすくなっているところがあったのでそこからペリペリと開いてみる
「こ、これは……!」
数日前にマップ情報誌を確認したときに見た星付きのドクロみたいなマークの解説が書かれていた。
あのドクロマーク、どうやら俺の予想と違っていたらしい。
このダンジョン、金貨が出る階層のその先がある!
ボーナスステージか!?
この世界ではほとんど知られていない貨幣が出る階層。
その階層への扉を守護するヤバい中ボスがあの星付きドクロだったみたい。
この世界で使われていない貨幣でも【異世界ショップ】なら使えるよな?
その貨幣で【異世界ショップ】のチャージをすればなんかいいような気がする。
「よし、そうしよう」
「?」
「おい、なんか唐突に納得顔で言い出してる奴がいるぞ。こわいんですけどー」
トラっこは不思議そうに俺を見て、ハルトはヤジを飛ばしてきた。爆食しながら。器用な奴。
「俺はこれから別行動する。帰りは自力を希望ならそのままどうぞ。その他は予定通り俺のスキルで1階層出口前に送る」
一部、ブーブー言う奴がいたが、結局全員一層出口に【聖女の願扉】でスッと送り届けた。
一応ハルトに子供達を任せた。
子供達には今回もお土産は持たせた。報酬は依頼書にサインしたやつを渡したので受付で受け取れるだろう。しっかり受け取るまでをハルトに頼んでおいた。
まあ、子供達のレベルだったらなにか起きても大丈夫だとは思うけど、念のため。
で、俺はアーシュレシカと共にまたダンジョン奥へと戻る。
そして星付きドクロマークことボーナスステージへ挑んだ。
「デュラハンでしょうか」
自分の首を小脇に抱えて白馬に乗ったフルプレートアーマーさん。デカイ。白馬込みで五階建てのマンションくらいありそう。
堂々とした姿だ。
カッコいい。
でもこのお方もやはりアンデッド。
ということでやっぱり【堅牢なる聖女の聖域】の範囲をふわっと広げただけでサアァァっと光の粒子になって消えた。
「そうみたいだね」
申し訳ない気持ちになった。
「お、すごい宝箱でてきた!」
申し訳ない気持ちがすぐふっとんだ。
宝箱ってなんでこんなにアガるんだろう。
最近見慣れてるけどやっぱり出てくると気分あがるよね!
デュラハン氏の宝箱はキラキラしていた。
宝石も品よく散りばめられたデザイン宝箱。
なんかこういうのいいね。
宝箱ごといただきましょう、そうしましょう。
中身を確認。
「これぞ宝箱の中身! って感じだな」
お茶箱サイズの宝箱には金銀財宝が入っていた。
やったね! ざっくざく!
「宝石、真珠、珊瑚、金貨に……銀、ではないですね。プラチナ硬貨とミスリル硬貨、アダマンタイト硬貨、ダマスカス硬貨、それに虹星硬貨ですね」
うむ。
後半よくわからないけど、きっといいものな気がする。
試しに虹色金平糖みたいなやつを一粒【異世界ショップ】にチャージしたら100億だった。
この先の扉の向こうの攻略に俄然やる気が出た。




