124 求む者たち
昨年の10月中旬から今日までにかけてのすごーくたくさんの誤字報告ありがとうございました!
1300件近くあって(件数二度見した)感謝と申し訳なさが綯交ぜであります。ちょっとずつ直していきます! またぜひよろしくお願いします!
そしてさらなるレビュー! 奇跡か!
またもらっちゃいました! スゲー!
ありがとうございました! 嬉しい! すごく!
子供たちはザクザク稼いだ。
聖水鉄砲で魔物を倒すことで「自分で倒した」扱いになり、レベルがゴリゴリ上がった。
自分達ではレベルの上がり方がよくわかってないようだった。
なによりこれで今後は探索者として稼げるだろう。
あと子供達の横の繋がりか何かで助け合って他の子達のレベル上げでもしてくれればいいと思う。
……今日稼いだ分で数十年くらいは遊んで暮らせそうではあるんだけどな。
子供の成長ってすごいよね。
その辺の探索者より稼いでんじゃねーかな?
それなりにレベルも高いから脅されてカネをとられることもなくなるだろうし。
そう考えるとレベリングってすごいな。
普通の子供がたった数日で大人より強くなっちゃうんだから。
前にもこんなことあったような……。
これ以上は思い出さないでおこう。
とりあえず、アーシュレシカに高レベル者の常識とかモラル的なことを子供たちに教えるよう言っとこうかな。
モンスターハウスを一掃すること10回目。
今日はもう切り上げさせた。
夕飯時だったので。
「あー、楽しかった!」
子供達は切り上げさせたときはブーブー言ってたが「夕食いらないならもっと遊んでていいぞ」と言ったら素直に戻ってきた。
そして口々に楽しかったとコメントしている。
もはやリアルシューティングゲームと化していたようだ。
「楽しいのもセージ様あってこそです。ダンジョンはそんなに甘くはありません」
「わかってるよ、ですよ。この不思議な結界とたくさんの聖水があるからだって。次からは自分たちの力で魔物を倒さなきゃならないって。です」
「理解しているのならかまいません」
「はい。最初は覚えたスキルを試しながら安全を考えて探索する、です!」
子供たちは俺が思ってる以上にしっかり考えてた。
俺のかわりに言ってくれたアーシュレシカも、子供たちの言葉に満足そうに頷いている。
多分あれだな。子供達の成長云々ってよりか俺のスキルあってこそというところで子供達が当然のような感じで「わかってる」と返事したことに満足してる感じだよな。わかってる。
しかし、やっぱり普通はレベルが上がったことで覚えるスキルってあるんだよな。
俺はなかったけど。
もしくは牢屋に入る度に何かしらのスキルがアップデートされている感じだな。薄々気づいてたけどさ。
俺にレベルとかあんま関係ないとかあってほしくなくてさらっと事実を流してたけど。
まあいいさ。
これは俺の問題だ。黙っとけばなんの問題もない。
んなもん何食わぬ顔で知ったかしとけばいいんだよ。
そうだよね、知ってる知ってる。レベル上がると色々スキル覚えまくるよねー! って。
待ち合わせまで数日間、俺は宝箱回収を終えてしまったことでやる気がどこかへ行ってしまい、ダラダラと過ごした。
子供達は飽きずにモンスターハウスでカネとレベル経験値を稼ぎまくった。
そしてその待ち合わせの日、待ち合わせ場所に行ってみると、ハルトたちが既にいた。
「なんだ、早いな。待ち合わせ時間までまだ何時間かあるだろ」
そう、俺達は待ち合わせよりずいぶん早く来たはずだった。
こちらは【聖女の願扉】を使ったので一瞬。
子供らにモンスターハウスの周回をせがまれるのを回避したいがために起きてすぐに来たんだけど、それよりハルトが早いってことは前乗り的な?
「セージ!」
ハルトに声をかけたら思った以上のテンションで反応された。
「なんだ? どうした? 誰か怪我したか? たとえ死んでも死体さえあれば復活させられるから任せろ!」
「なんだそのヤバいスキル!? あ、いやお前ならあり得るのか、うん」
あ、なんか失礼な事言われたように聞こえた気がする。
「重症者か?」
「ああ、そだ。そうじゃないけどある意味重症なやつだ」
「どゆこと?」
改めてハルト陣営を見回してみるがみんないる。
怪我も無さそう。
ただ何人かが元気無さげ。
その何人かってのは転移者と転生者だな。
「お前、料理できたよな」
「うん」
なんだ?
どした?
ハルトの目力が強くなった。
肩も掴まれた。
痛いデスヨ?
「頼む! 飯作ってくれ! 和食!」
「ん? 俺の使い捨て【異世界ショップ】端末あるよな?」
足りなかったのか?
と思いつつ、今度は千枚ほど渡す。
それをせっせと転移転生者達と分け合うハルト。
分け合いながらハルトはボソリとつぶやく。
「そうじゃないんだ。コレジャナイ」
じゃあなぜ受け取ったよ。
それはソレ的なそれかよ。
「じゃあなんだよ」
ハルトの行動と勢いに若干引いてる俺。
現地生まれの人達もハルト達にちょっと引いてるぞ。
「店の味とかじゃなくて家飯が食いたいんだ」
「………」
「お、お前の言いたいことはわかるぞ。これだけ異世界組がいるんだから自分達で作って食えばいいだろ、って」
「うん」
なんだその演技くさい力のこもったセリフは。
まあ、ここまで言うってことはやっぱりあれなんだろうな。
「ダメだったんだ」
さらにくさい演技で涙をにじませながら悔しげに目を瞑るハルト。
それにリンクする転移転生組。
なんだこれ。
「………」
「オレたちみんな、壊滅的に料理ができなかったんだ!」
ハルトがカッと目を見開いて宣言するように言いきると、ハルトの後ろにいた異世界組が悔しそうにしながら膝から崩れ落ちていく。
なんのハルト劇団かな。
でもまあ、そうなんじゃないかなと思い始めていましたよ。
「【異世界ショップ】に料理本あったろ。家庭的なやつ含めて」
「それは料理本の味だろ」
うわ、めんどくせえ。
家庭の味に飢えすぎて面倒な奴らになっている!
「おうちカレーが食べたいです」
カレーくらいなら誰でも作れるだろうよ!
学校の授業で作るやつ!
「おうちハンバーグが食べたい」
混ぜて焼くだけ!
できるだろ!
「家の味噌汁が飲みたい」
それぞれの家庭の味!
無理!
「家庭的な煮物」
味噌汁同様それぞれの家庭の味の再現無理!
「お鍋食べたい」
「ギョーザ」
「野菜炒め」
「茶碗蒸し」
「絶妙な濃いめのポテサラ」
「作りたてのカリカリベーコンにスクランブルエッグぅ」
「濃厚ナポリタン」
「テールスープ」
だんだんめそめそグシグシとまじで涙混じりに食べたいものをあげていく転移転生組。ちょっと鼻水垂らしてる人もいる。
あと和食じゃないやつもでてるぞ。
そんな劇団を呆れつつ眺めていたら、
「セージ、お前なら全部作れたよな?」
そんなことを言うハルトにガシッと肩を掴まれた。
目がマジで結構引く。
「作れるけど、人んちの味噌汁とか煮物の味って家によって結構違うだろーが」
「いいんだよ。店っぽい味になんなきゃ」
俺は今むちゃくちゃなこと言われてる!




