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121 西大陸人の美基準とセージ仕様の【異世界ショップ】

 

 その後まもなくマーニとも合流。

 たった数ヶ月だけど懐かしく思えた。


 ちなみにマーニのパーティーの男女比は3:2だった。

 じゃんけんで決めたらしいけど、組分け方法はもっとなんかやりようはあったと思うんだ。


 そして驚くことにこの二つのパーティーにご同郷がいた。

 転移者二人に転生者二人。


 そこまでだったら「お互い大変ですよね」と、そこから話を広げられたんだけど、他の地元民の人達の俺への態度がヤバかった。


「美しい……」

「女神様ですか?」

「妖精姫って本当にいたんだ」

「眩しく尊い……」


 四人が涙を流しながら俺を拝み始めた。

 それにともなって同じ安全部屋にいる他の冒険者達の視線も俺に集中。

 結果、半数以上がそっと涙を流し、拝み始めた。


 俺、静かにパニック。


「セージ様のご尊顔は、西大陸人にとって天上の美貌。当然の流れです」


 アーシュレシカのドヤ顔。

 ハルト達のドン引き。

 子供達のキョトン。

 俺、呆然。




「いや、あえてまた言うけどどう見ても普通顔だろ、こいつ」


「さすが我が友」


 ハルトの発言になんだか無性に感動した。

 同時にハルトはこの場の西大陸人を一瞬にして敵にまわした。……ような気がする。この場の雰囲気的に。


 さっきハルトに首もと掴まれてガクガクされたときにフードが落ちて顔バレしたんだよ。


 ガクガクされた理由は「お前スマホ見ろよ!」とのこと。


 シロネからこの街に居ると聞いて、たまたまハルト達もこの街のこのダンジョンで稼ぐ目的があったのでこちらで俺と合流を試みたらしいがなかなか見つけられなかったそうな。

 そのうちシロネからも連絡がなくなり、この街と言えばこのダンジョンに違いない! ってな訳で一昨日からこのダンジョンを捜索……というのが経緯なんだと。


「シロネもあれで忙しいからな」


「お前のせいだろうがよ」


「違わい。たぶん」


 なんでもかんでも俺のせいにするじゃないよ。

 なんだかわからないけどシロネが謎なくらい商売に関してやる気を見せているだけだ。

 ただ、そんなシロネにちょっとアイラをお任せしているだけで。……俺のせいか。



 さて、勇者の勇気ある行動のおかげでこの場は俺を拝み倒す雰囲気ではなくなり、半分はアンチ勇者な雰囲気、他は他大陸人なのか「なにこの雰囲気?」みたいな感じの人達とか、ハルトやマーニの同郷組の「そんなじゃれ合いとかいいからさっさと私たちを紹介して!」な雰囲気などなど。雰囲気祭りだ。


 俺が思うに、俺の顔面がこの大陸でどうのってのは完全にばーちゃんの影響だろうな。

 その高すぎる影響は他大陸でもあって、それが「男? いや女か?」みたいに思われやすいんだと思う。妖精族顔ってやつね。

 でも何故か子供たちは俺の性別が直ぐにわかるようで「兄ちゃん」と呼んでくれる。

 というのもあって自分では知らずして無意識に子供好きになってしまっているかもしれない今日この頃。

 だからたぶん今回子供連れでダンジョン入っちゃったのかも。

 とかいろいろ考える。現実逃避の自覚あるよ。


「ハルト様、皆様、まずはテントの中でお話ししませんか? 当方のテント内は防音の魔法が付与されておりますので」


 すっとアーシュレシカが間に入ってくれた。

 俺がハルトとわいわいしている間にしっかりテントを整えてくれていた。

 もっと早く声かけてほしかったよ、とおもわなくもない。

 出来ればフード落ちる前にでも。

 でもこいつ確信犯っぽいんだよな。俺がこの大陸で美人と言われているのを大変快く思っているようで、こちらに来てから隙あらば俺の素顔をさらそうとしてくる。しかも俺がこの大陸人にどう見られているか報告しないでいる確信犯ぶりだ。

 こちらの大陸ではさらにポンコツ具合がひどい久遠の騎士たちである。





 俺といっしょに来た子供たちはもちろん、ハルトとマーニのパーティーとともに内部拡張型テントに入ってお茶を飲んでホッと一息ついたところで、改めて紹介に入る。

 細かいことは覚えきれなかったがいずれにしろ転移者も転生者も俺達よりもこの世界で長く過ごしているらしく、最初は東大陸産の、日本食に欠かせない調味料に感謝していた。けどハルトと出会い、ハルトに感謝した。

 理由は【異世界ショップ】できちんとした日本の製品が手に入るようになったから。

 やっぱり異世界で作られた味噌や醤油はなんかこれじゃない感があったらしい。


 けど人間、どんどん高望みしたくなるようで。


「オレの【異世界ショップ】の専門店は勇者職仕様だからさ、お前の【異世界ショップ】にある専門店と違うんだよ」


 前に言ってたやつか。

 確かそれ問題で他人でも簡易的に【異世界ショップ】が使えるようになる使い捨ての端末を内輪で交換し合ったんだっけ。

 マモルのはうちの久遠の騎士さんたちが結構使ってたみたいだけど、ハルトのはあまり使われている様子はなかったなあ。

 勇者仕様の【異世界ショップ】は勇者に必要であろう商品、主に戦闘系に特化している。

 なので専門店系が兵器にまみれている。

 コンビニやスーパーまでは一緒みたいなんだけどね。

 そしてそのコンビニやスーパーでは手に入らないものがあるために俺を探していたらしい。


 まえにいくつか……かなりの枚数、使い捨ての【異世界ショップ】端末を渡したと思うんだけど、使い方を失敗して、今すぐ欲しいものだけを購入して使っていたため、あっという間になくなってしまったそうな。


「同じ過ちを繰り返さないためにもここで金を貯めつつセージ探せばいいと思ってよ。それとセージからの使い捨て端末は次からまとめ買いすることを学んだんだ」


 手を握りしめ、キリッとした顔で言われた。

 いい顔でそんなこと言われても「そうですか」としか言えないんだけど、どうしたもんか。


「そうか」


 結局言えることを言ってしまった。


「おいおい、温度差」


「ああ、なんかごめん。これ」


 適当謝ってゴソッと【異世界ショップ】の使い捨て端末を渡した。


「ありがたみのない渡し方!」


「そう言われてもなあ。勿体ぶったところでうざがられる未来しかねえよ」


「お前……しばらく会わないうちに賢くなったな」


 この勇者はいったい今まで俺をどんなバカだとおもってたんだよ。


「しかし、いいのか? 見た感じ制限かけてるとかないみたいだけど」


「制限?」


「端末は他人が使う前提だろ? だから【異世界ショップ】で買える項目を減らして渡したりするもんなんだよ」


 初耳ですが?


 でも俺の【異世界ショップ】のラインナップなんて日本に居たら普通に買えるものばかり。

 一部この世界の商品もあるけどハルトやマモルの【異世界ショップ】の商品に比べたら可愛いものしかない。


「へー。あ、でも端末にすると各種免許取得系は使用不可みたいだな」


「にしてもだよ。この世界じゃこれ使ってオレらでも商売できちまうだろ? いいのか? いまシロネ、それで商売してんだろ? つかなんでお前知識チート的な商売じゃなく未だに転売で稼いでんだよ」


「好きに使ってくれ。てか今の俺は転売などしていませんが。普通に【異世界ショップ】経由で小売業と卸業者として自営業登録してますー。それでまともに働いてるのはシロネだけだけども」


 これは結構はやい段階で【異世界ショップ】のコンシェルジュさんからおすすめされたんだよね。

 特に必要な資格もなく、店舗経営の申請とカネさえあればいいとのことだったんで、じゃあそれでお願いしますとコンシェルジュにおまかせした。

 以降商売用の商品は安く仕入れることが出来ていた。

 俺が経営していることになっているのは農地にある店舗すべて。

 客のほとんど来ない店だが。

 まあそれでシロネが思う存分商売できるんならよかったんだよ、きっと。


 あと知識チートとかはできるやつがやればいい。

 俺には向いてない。説明下手だし、知識ひけらかす人脈もない。そもそもひけらかす知識なんてないしな! 


「そ、そうか」


 ハルトは引き気味でそれだけを絞り出した。



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