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美伊の説教



一五四六年  毛利(もうり)美伊(みい)



次郎に勧められて始めた散歩も今ではすっかりと日課になってしまいました。降り注ぐ日差しは暖かくも風は随分と冷たくなってきたように思います。そろそろ打掛を羽織られねば寒くなりそう。


「お庭の紅葉も随分と色鮮やかに染まってきましたね」


「はい、お方様。お山もすっかり賑やかになって参りました」


庭に植えられた紅葉を見上げながら共に散歩をしている侍女とそう話していると、視界の端に漸く呼び出していた息子の姿が映った。久しぶりに見た次郎は随分と身長が伸びたようで、体つきはすっかり逞しくなったみたいです。ますます御祖父様(おじいさま)吉川経基(きっかわつねもと))に似てきたように思います。

襲われ意識を失ったと聞いた時は本当に心配でしたが本当に良かった。ですがなかなかこちらに来ようとしません。


「次郎、そのようなところで何をしているのです。一緒にお庭でも歩きましょう」


私から声を掛けられるとは思わなかったのでしょうか?びくっと身体を震わせると恐る恐るといった様子で近付いてきました。


「母上、遅くなってしまい申し訳御座いませぬ」


私の元まで来るなり深く頭を下げて次郎が謝りました。普段の乱暴な言葉使いがないあたり、緊張しているのでしょうか。


「まぁ、口調を整えて、随分と珍しい事。この母を待たせたことを反省しているのですか?」


「…はい、反省しております。先延ばしにし続けてしまい申し訳ありませんでした」


私の言葉に苦虫を噛んだように表情が曇りました。その後に何かいい訳でもしてくるかと思いましたが殊勝にも次郎は再び頭を下げます。反論をしてこないどころか謝罪をしているのです。ちゃんと反省しているのでしょう。


『歩きましょう』と声を掛けて庭先をゆっくり歩き回ります。その間、次郎は大人しく私の後を付いてきます。ふふ、これで溜飲が下がりました。意地悪をするのはこれくらいにしておきましょう。


「十分に次郎も反省しているようなので、遅れに遅れさせたこのことに関しては許しましょう。口調も普段通りで構いませんよ。さ、部屋に戻りましょうか」


「ん、ありがとうお袋」


先程まで私の後を付いてきた次郎が先導するように先を歩いていると改めて大きくなった息子の成長が嬉しく思います。

生まれた頃は他の太郎と三郎の二人よりも随分と良く泣く子でしたが、いつの間にか元気に笑う様になり今ではすっかり私よりも大きくなっている。太郎よりも大きいのではないかしら?


先に次郎が縁側へ上ると私に手を差し出してきました。『ありがとう』と声を掛けてその手を握ると私を支えるように引き上げてくれました。太郎も三郎も優しい子に育ちましたが次郎は殊更私を大切にしてくれるように思います。次郎様(ここでの次郎は毛利元就のこと)ほどではありませんが。


部屋へ戻ると侍女にお茶を用意するように伝えました。すぐに侍女が湯飲みを二つ持ってくると私たち二人の前に置いていきます。温かな湯気が立ち上るそれを手に取るとゆっくりと飲みます。体が温まるようで美味しい。

次郎も一口飲むと先に口を開きました。


「お袋、体調の方はどうだ?何か違和感とかは」


「貴方はいつも気遣ってくれますね、その割にはなかなか私に顔を見せてはくれませんでしたが。来るのはいつも刑部大輔(ぎょうぶたいふ)口羽通良(くちばみちよし))殿ばかりで」


「うぐ…、それは悪かったって」


あら、いけませんね。気付かぬうちに嫌味なことを口走ってしまいました。私自身、息子の顔が見れないせいで鬱憤が溜まっていたのでしょうか。

気恥ずかしさを誤魔化す様にこほんと小さく咳払いをして気を取り直します。


「体調は特に問題ありませんよ。お庭を歩くようになってからは昔よりも元気になったように思います。次郎のおかげですね」


「そっか、なら良かった。長生きしてくれよ」


私がそう告げると次郎は嬉しそうに笑みを浮かべました。こうして息子に心配して貰えるというのは嬉しい事です。息子たちに注いだ愛情が無駄ではなかったのだと実感します。


「はい、貴方の子供を抱くまでは死ねませんからね」


さて、軽く嫌味を言ったところでそろそろ本題に入りましょう。次郎が逃げ回った本題に。それにしても何故縁談のお話を私が託されたのでしょう?当主となったのだから太郎がするのが筋でしょうし、次郎様がなさっても良い筈です。考えても詮無い事ですね。


「此度呼び出したのは外でもありません。貴方も既に察しているでしょう?」


「俺に結婚しろってことだろ?ここに来る前に三郎からも、うんと説教されたよ」


この城に来てからすぐに私の元に来なかったのは三郎の元に行っていたからなのですね。三郎がこの子を匿っていたのかしら。…違いますね。三郎も状況は理解している、それに次郎自身も説教されたと言っていますし。次郎は手に持った湯飲みをじーっと見つめたまま顔を合わせようとしません。この子は何故これ程までに縁組に消極的なのでしょう?


「三郎に言われて来た、というのは感心しませんがその通りです。太郎を中心に、あの尼子家を打ち倒してから毛利家にいくつも縁談の話が来ています。特に大きな所では三条家から」


「…はっ?三条家?公家の?…俺に?」


驚いたのか漸く目が合いました。御祖父様譲りの鋭い目が零れてしまうのではと思う程に見開かれています。


「貴方ではありません。宮鶴丸(みやつるまる)です。それに左大臣(三条公頼)様の御子は一昨年生まれたばかりですよ。次郎では年が離れすぎているでしょう?」


「そっか…。俺じゃないのか」


つい最近、側室の光殿が次郎様の子を産みました。名を宮鶴丸。次郎達の弟、毛利家の四男という事になります。

光殿にとっても待望の男子でしょう。今も光殿がきっとあやしている筈です。私自身が腹を痛めて産んだ子ではありませんがあの子も毛利の子。抱かせてもらった時には愛おしいと感じました。私にとっても可愛い子です。


次郎様は側室の子だからと私の産んだ子と区別されようとなさっていましたが私が止めるようにお願いしたため、何不自由なく私が産んだ子等と変わらず同等にすくすくと育っています。

それにしても虫けら等と酷い言葉を言われるとは思いませんでした。あれは私への義理立てなのでしょうがそれにしても酷い言い様です。思わず次郎様を叱ってしまいました。光殿に聞かれてなくて良かった。


まさかその宮鶴丸が公家、しかも三条家から嫁を貰う事になるなんて。私がもう少し若ければあと一人くらい次郎様の子を…。いえ、どちらにしてもめでたいことに変わりはありません。やんごとなきお家から嫁を貰えるほどに毛利家が大きくなったことを喜びましょう。


それにしても三条家と縁を結べる栄誉にも関わらず次郎は自分でないと分かると目に見えるほどにほっとしたようでしたね。


「でも何で左大臣様の息女が毛利に嫁ぐ話なんて来るんだ?」


「詳しい話は私にも分かりませぬが、左大臣様は大内家と親しく、その縁で太郎の婚儀の際にもわざわざ安芸にお越し下さったのは知っていますね。そこから三条家と毛利家の縁が始まりました。その後も大内家から色々とお話を聞いて毛利家を注視していたのかもしれないですね」


私は政に詳しい訳ではありませんが左大臣ともあろうお方がわざわざ自らの足で太郎を祝いに来てくれたのです。次郎様も以前公家は利に聡い、というようなことを言っていました。私の予想もあながち間違っていないでしょう。


「成程…。てかそんな大きい話、俺聞いてなかったんだけど」


次郎も納得したように頷いていましたが、この話が自分の耳に届いていなかったことが気に入らないのか拗ねたように唇を尖らせています。


「私から伝えるつもりでいたのです。それなのに貴方が逃げ回っていつまでもこのお城に来ないのがいけないのでしょう?太郎も三郎も、刑部大輔殿も私が話すと聞いていたから気を回して貴方に話さなかったのではありませんか」


はあ、まったくこの子は。自分のことは棚に上げて人を恨むだなんて。

私の表情が曇ったのでしょう。私が話し始めるとしまった!と言いたげな表情をしましたが既に時遅しです。


「まあまあ、お袋。そう怒んなって。せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ」


「実の息子にそのような世辞を貰っても嬉しくはありませぬ。そういう言葉は嫁を貰ってから言いなさいな」


私を宥めようと言ったのでしょうがどの口が言っているのだと言いたいです。本当にこの子は。私が指摘すると口籠りました。


「縁談の話は大きな所では備後の山内家、それに今貴方がいる伯耆の南条家からも話が来ていますよ」


どちらの家も今の毛利家にとっては大事な家です。年頃も次郎と丁度良いでしょう。ですが南条家の名前を出すと次郎が驚いた顔をしました。


「南条家からも?」


「はい、豊後守(南条国清)殿の遣いが嘆いていたそうですよ。貴方がその手の話になると露骨にはぐらかすと。心当たりがあるのではないですか?」


「…ある」


「貴方は吉川家の主で太郎の弟ではありますが毛利家の家臣でもあります。主家に許可もなく縁談を進めなかったのは良いことですが露骨に避けてはあらぬ疑いが振りかかりますよ。貴方、好きな女子でもいますか?まさか男しか愛せないとか?」


「へっ?まさか!そんな暇ある訳ないし、男に欲情なんて絶対ない!」


良かった、男色であればどうしようかと思いましたがきっぱりと淀むことなく否定するあたり本当のようですね。私の知る殿方に男色の方はいませんからそのような文化があるとは知っていても全く理解は出来ませんでしたが。

とはいえ大内家の太宰少弐様は嗜まれるようですし。まさかと思いましたが私の思い過ごしで本当に良かった。既に家中では少数ですがそのような噂が流れていますからね。

ですが、ならばなぜここまで乗り気では無いのでしょう?


「なら何故そこまで縁談を避けるのです。母にも話せませんか?」


「…」


私が問い掛けても次郎から言葉が出ません。項垂れるように小さくなっています。ここまではっきりとしない次郎を見るのは思い返してみても初めてではないでしょうか?この子は打てば綺麗かどうかはさておき響く子でしたが。とはいえ今日ここではっきりとさせなければなりません。


「男ならはっきりとなさい!」


うじうじと情けない姿を見せる次郎に気合を入れるように声を出しました。久しぶりの大きな声に私自身も吃驚するかと思いました。

次郎も驚いたのでしょう。表情は驚いていますが姿勢を正して今は真っ直ぐ私を見ています。

そして次の瞬間、何故か深く頭を下げ始めました。


「お袋すまない!理由は言えないが一月だけ猶予を貰えないか」


頭を下げたのはそれをお願いするためなのでしょう。ですが一月だけ猶予とはどういう意味でしょうか?一月で何かあるのでしょうか。理由は言えない?やはり想い人が?


「理由は言えない、という事ですが、聞いても答える気はないのですね?」


「…はい、今は答えられない」


「一月待てば縁組を受け入れるのですか?」


「…受け入れる。だから頼む」


頭の中には何故という疑問が多く浮かんでいます。でもそれを今次郎に聞いてもきっと答えないでしょう。そう雰囲気が物語っています。


「顔を上げなさい」


私がそう言うとゆっくり次郎が顔を上げました。その表情は先ほどの情けない表情ではなく何か決意したような表情です。この子は何か迷っている?分かりません。でもこの表情をする次郎はきっともう何をしてもその決意を覆さないでしょう。納得は出来ませんが。


「猶予は一月だけです。一日の遅れも許しません。その期限を破るなら貴方の意思に関係なく縁組の話を太郎や殿に進めて頂きます。分かりましたね?」


「すまん、お袋。ありがとう」


私がそう言うと次郎は深く頷いた。


「時間はありませんよ。他に何か用事がないのであればすぐに動きなさい、次郎」


「そうする、お袋。ありがとう」


そう言って次郎はすぐに立ち上がると私にもう一度頭を下げて出ていきました。

また一月後に次郎はここに戻ってくるでしょう。その頃にはもう雪が降り始めるでしょうが大丈夫でしょうか。あの子が自分で言い出したことですからきっと守るでしょうね。


それにしても、まさか次郎が懸想(けんそう)する相手がいるなんて。次郎の事だから何処の馬とも知らない女子を連れてくることは無いと思うけれど。いや、次郎を信じましょう。






一五四六年  毛利(もうり)右馬頭(うまのかみ)元就(もとなり)



「次郎はもう戻ったのか?」


素知らぬ顔をして美伊の部屋に入る。次郎が城を出たのを確認してからここに来たのだ。


「次郎様、戻られていたのですか?」


私の姿を確認すると美伊は驚いた顔をした。隠居をしてから美伊は儂のことを昔のように次郎様と呼ぶようになった。二人きりの時だけだが。懐かしうもあり、こそばゆい思いもするが若い頃を思い出して何となく嬉しくなる。


「ああ、ついさっき戻った」


次郎と顔を合わさぬように供を連れて遠乗りをしていた。隠居の身になって少しずつ政務が太郎に移行するにつれて余暇の時間が生まれたおかげで少しずつだがこういうことも出来るようになった。


「そうなら同席して下されば良かったですのに」


美伊の隣に腰を下ろすと恨みがましくそう言われた。思わず苦笑いが浮かぶ。


「すまんの美伊。宮鶴丸の顔を見に行っていたのだ」


そう儂が言うと美伊は安心したような納得したような顔で頷いた。


「そうでしたか。これからも側室の子だからと区別せずに可愛がって差し上げて下さいね?」


「うむ、分かっておる」


美伊の事を慮って言ったつもりであったが美伊を怒らせてしまった。二度とあのようなことは言うまい。そっと美伊の身体を抱き寄せた。美伊も自然と頭を儂の方に預けてくる。幾つになっても愛い女だ。美伊の匂いを嗅ぐとほっとする。


「次郎が懸想している相手がいる様なのです」


何の前触れもなくぼそりと呟かれたその言葉に思わず反応しそうになるのを必死に堪えた。


「懸想?それは本当か?次郎がそう言ったのか?」


今初めて聞いたと言わんばかりに、心は努めて冷静にそう聞き返した。知らぬふりをするのにも苦労する。懸想と言えるものでは無いがの。だが何故美伊はそれを口にしたのだ。次郎が儂以外に話すはずもない。


「いえ、次郎は答えられないと。ただ一月時間が欲しいと言っておりました。ですが縁組をする気が無い訳ではない様です。ですから他に思いを寄せる女子がいるのではと。あの場では次郎ならば大丈夫だろうと思わず許可を出してしまいましたが今からでも止めた方が良いでしょうか?もしかしたら氏素性の定かならぬ女子かも」


はっきりとは言わなかったようだが美伊自身はどこか核心を持っているようだった。我が妻ながら鋭いの。それとも女の勘という奴か。侮れぬわ。


次郎は未来を知っている。不可思議な事であるが次郎が語る話は信憑性があった。まず知り得ないだろう各地の情勢を次郎は知っていた。毛利家の周りの情勢は確実に変わっているが他はそれほど変化がない。それ故に次郎が話していた情報が後から事実として届くという事が良くあった。これは信じるしかない。そしてそれを元に儂は様々な計略、謀略の種を各地に蒔いている。


そしてその未来の情報は自分が誰と縁を結ぶかいう事にも及んでいた。それで次郎は酷く悩んでいた。

次郎は自分の妻となる女人に対してはどうしても踏ん切りがつかないらしかった。既に次郎の知る歴史とやらと流れは変わってしまっているにも関わらずの。何が基準となってそこまで踏ん切りが付かぬのか次郎自身も良く分かっていないようじゃが。状況が変われば誰と縁組するかも変わっていくのが当然だというのにの。

見て見ぬ振りをして今までは過ごし、問題を先送りにしてきたがその問題がついに目の前に来た。


儂からは何も言わなかった。このような不思議な体験をしている次郎はこの世界に自分が居てもいいのかとすら悩んでいたのだ。もし儂が無理に次郎を押さえつけてしまえば次郎の心が壊れてしまいかねん。それに次郎の知識によって毛利は助かっているのは事実だ。ならばこのくらいは次郎に好きにさせてやっても良いではないか。そういう思いから太郎にも次郎の縁組には口出しを控えさせ、縁組の話は美伊からさせた。


儂に出来ることは次郎が誰を選ぶにせよ、その選んだ相手と幸せに過ごせるように補助してやるだけだ。

だから一月の猶予が欲しいと自分で言ったのなら自分でしっかりと落とし前を付けるであろう。それに相手は誰か分かっているしの。


「まあ待て。慌てるな。次郎の様子は如何であった?」


「様子もいつもと違いました。歯切れも悪く普段の快闊な態度もすっかり萎んでしまっていて。最後は何か決心したようでしたが…」


「ふむ、ならば問題はあるまい。そなたも次郎を信じた故に許可を出したのであろう?次郎もそのくらいの分別はある筈じゃ。もし美伊の言う通り懸想していたとしてもそれなりの家の女子を選ぶであろうよ」


儂の言葉に美伊は一応理解した様子は見せたがそれでもまだ不安なのか口を開いた。


「そうでしょうか。私は経験したことはありませんが一目見て惚れることもあるそうです。あやや殿は太郎を見た時、そう感じたと言っておりました」


まるで儂には一目惚れでは無かったかのような言い草ではないか。


「何じゃ、そなたは儂を初めて見た時に儂に惚れてはくれなかったのか?」


「まあ、その質問は意地悪に御座います。次郎様が私に意地悪くなさるから、私も次郎につい意地悪く接してしまうんですよ?」


儂の言葉に美伊は驚くと何やら言い訳のようなことを言いだした。美伊が次郎に意地悪いことを言う様を想像出来んな。見て見たかった。それよりも。


「それよりもどうなんじゃ?」


「…次郎様は嫁ぐ前に私を気遣う書状や色々な贈り物をして下さいましたから。初めてお会いした時は、優しそうなお方だな、大事にしてくれそうだな、と期待しておりました」


「ふむ、では今はどうじゃ?」


「ふふ、今は心底惚れております」


そう言って照れたように笑みを浮かべた。幾つになっても儂の女房殿は可愛らしい。


「はははっ!そうかそうか」


その言葉につい嬉しくなって笑ってしまった。


「次郎様は?」


一人納得していると見上げるように美伊がそう聞いてきた。答えなど一つしかない。


「儂も美伊を愛しておるよ。これからも儂を支えてくれ」


「はい」


そう言って身を寄せてくる美伊の黒い髪をそっと撫でた。


次郎が言うには美伊は本来今年亡くなっていたそうだ。この話を聞いた時、酷く胸が苦しくなったものだ。だが美伊は今も儂の隣で生きている。大切にしなければならん。次郎も儂と美伊のような仲睦まじく過ごせる関係を築ければ良いのだがの。


「儂らは子等を信じてやればよい。そうであろう?儂らの子じゃ」


「はい、そうですね次郎様」






【新登場人物】


毛利宮鶴丸  1546年生。毛利元就と側室、乃美光の間に産まれた子。史実で言う穂井田元清に当たる。-16歳


三条左大臣公頼  1495年生。公家。従一位左大臣。大内家と交流が深くその縁で毛利家とも縁を結ぶ。+35歳


三条春  1544年生。三条公頼の三女。史実では本願寺第11世顕如に嫁ぐ教光院如春尼。-14歳。

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