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第3話 義眼を調達へ


「アゥ……」


 朝起きたら右目が見えなくなっちゃってたよ。


 左目しか見えないよ。どないしようとか思ってたら、お母様が僕の異変に直ぐに気づいて、僕専属のお医者さんを呼んでくれたんだけど……この右目の違和感。絶対に呪いのたぐいだよね。


「これは珍しい……右目だけ失明なされていますな。お痛わしいや」


 いや、そんな深刻そうな顔されても困るんだけど。お医者さん。


「やはりか。朝からライトの動きを可笑しかったのはそのせいか」


「そんな! 昨日まではちゃんと見えていたのよ? 昨日は私が部屋に結界を張ってたのよ。なのになんで? それにライトの瞳に映ってるこの模様、明らかに呪いよ。貴方」


「落ち着け。イリア、子供の前だぞ!」


「でも! このままじゃあ、ライトの右目が見えなくなったのよ。なんで貴方はそんなに冷静でいられるのよ!」


 あ~、夫婦喧嘩始まっちゃったよ。止めて止めて喧嘩は止めて。お母様。お父様~!


「(俺が冷静にいるだと? でいられるわけないだろう!)……たしかに視力・・は失ったが、代わりのの力をライトに与えれば良い」


「代わりの眼?……貴方、まさかこの子の右目をえぐり取って。義眼を埋め込むきなの?」


「それしかないだろう。右目が見えなければこれからの人生の中で相当なハンデになる。今のうちに義眼に慣れておく事が、この子の為でもあ……」


バチンッ!


「ふざけないで! この子は私がお腹を痛めて産んだ最愛の子供よ! その子の身体の一部を奪うなら、いくら私の愛する夫でも許さない! 叩き潰すわよ!」


 凄い音がしたけど右目の視界だから上手く見えなかったよ。


 ……だけどお母様が凄く怒ってくれたのは良く分かる。なんか嬉しいな。


「イリア……少しは落ち着いてくれ。これにはちゃんと理由があってだな」


「落ち着けるわけがないでしょう! 貴方はライトが……実の息子が可愛くないの? それでも父親なの?! だから皆に無愛想なんて言われるのよ!」


「なんだと?! 君だって。怒った時のヒステリックばかり起こすだろう! 何を人の事を棚に上げている。だいたいお前がライトを1人にした事が原因じゃないのか?」


 あ~! これは不味いね。たしかゲームだとお母様もお父様も、息子の事で口論になって夫婦仲が最悪になるんだったね。


 それで喧嘩をした次の日には夫婦仲は最悪。お家の中で、お母様派とお父様派に派閥が別れて血みどろのお家騒動になるんだよね。


 そんな最悪の家庭環境の中で、悪役であるライト・クラウディアは実の両親に暗殺されかけたりして性格がネジ曲がっていくんだけど。


 ……その原因が今、起きているイベントなんじゃん! 不味いよ。不味いよ! 早く止めないとお母様とお父様が仲が最悪になっちゃうよ!


「なんですって! それなら、ライトがちゃんと最長するまでの間くらい中央での仕事を抑えて家に居てくれれば良かったのよ。私だって実家での仕事があるのよ!」


「魔女会か? そんなの縁を……ん?……何だ? この臭いは?」


「……クチャいわね。貴方……てっ! ライトがお漏らししちゃってるのよ!」


「何? ライトはもう2歳になるんだ……臭っ!!」


 良かった。お尻の穴に力を入れたお陰で、ウンチが出てきてくれたよ。


 これにプラスして幼子の奥義技嘘泣きを発動するよ。


「……うえぇんん!! モラシェチャッテごめんなチャイ!!」


「ぼ、坊ちゃま。直ぐにメイド長のセレスティナ様をお呼びしてきます」


 専属医師のスバンさんが扉を開けて出てっちゃったよ。計画通りだね。


「あぁ!! 良し良し。お父様と喧嘩して騒いだから、ビックリしちゃったよね。ごめんね。ライト~!」


「す、すまない。ライト……取り乱してしまったな。す、直ぐにオムツを変えてやろうな。イリア、怒鳴ってしまって悪かったな。ここは俺がライトを見ておくから、君はライトの新しい服を持ってきてくれて。さっきは強い言葉を言って済まなかった。愛している」


「貴方……え、ええ、私も……凄く言い過ぎちゃったわ。愛しています」


 ちょっ! 僕の下半身を露出させて無視したまま、愛を確かめ合わないでよ。お母様。お父様~!


「……オナガガヒエテデリュ」


 ぷりっ!


「「臭っ!」」


 こうして僕の右目の失明が原因での夫婦は僕がウンコを漏らしたことでなんとか丸く収まったんだ。


《深夜 ライトの部屋》


「フシュ~! チュカレタァ……」


 しかし、どうしよかな。お母様とお父様の不仲は止められたけどさ。


 僕の右目の視力を奪った謎鳥仮面……あれにまた襲われたら大変だし、そろそろ自己防衛の準備もしなくちゃいけないね。


「シリョクホシィ」


 失った右目の視力に変わるものを手に入れなくちゃね。


「フユゥギャン」


 ガチャっと窓をこじ開けてと。


 僕の魔眼の力の1つ。『浮遊眼』を使って真夜中のお屋敷を抜け出すよ。


「チュキキレィ~」


 夜空の満月が綺麗だね。2歳の子供が夜空を飛ぶなんて、これこそ本当にファンタジーな絵面えづらだね。


 フヨフヨと僕が飛んでいく先はクラウディア公爵領の最北端『ミミルの泉』に向かってるんだ。あそこには丁度良い《《眼》》が水没しているからね。


 しばらくの間。月の満ち欠け現象を見て楽しみながら、北へ北へとどんどん進んでたら、変な鳥に絡まれたんだ。


「カァ~! カァ~! お前。こんな真夜中に何で1人なんです? しかも幼児ですよね? お前~! カァ~! カァ~!」


 なんか変な黒いカラスみたいなのが飛んで来たね。北に向かってるだけに。うるさいし無視しようね。


 お母様にも知らない人に話しかけられたら無視ししなさいって言われてらるしさ。


「…………」


「カァ~! カァ~! 無視するなですよ。幼子。私の名前はオディ。お前の名前は何ですかカァ~?」


 何ですか?と語尾のカァ~!をかけたのかい?……つまらないね。でも、あれ? オディってたしかゼロ・スフィアの世界の……なんだったけ? 


 たしか凄い何かのキャラだったと思うんだけど。


 無視して敵対されても困るし。偽名名のっとこうね。


「………ボク、ライテュウ」


「カァ~? ライチュゥ? 変な名前ですね。カァ~!」


 誰が進化したデブ電気鼠だい。張り倒すよ!


「チギャゥ……ライテュ」


「ライテュ?……ライテュ。やっぱり変なに前ですね。カカカ!!」


「………シャぐガン」


 アホカラスに向かって、怒りの『灼眼』を発動したよ。焼き鳥になって落ちて言ってね。鳥さん。


ボッ!


「カァ?……ボッ?……ギャアアア!! 何しとんですカァ? この幼子は? 私の身体がバーニング?!! カァ~!」


 シュルシュルシュルシュルと燃えて焼き鳥に変身したアホカラスさんは下の森へと落ちていったよ。


 野生のモンスターさん達の養分になってね。焼き鳥さん。


「……イコゥ」


 僕は焼き鳥さんの犠牲を敬いながら。浮遊する高度こうどを少しずつ下げて、地上へと降り立ったんだ。


 目指すは森の一番奥にある『ミミルの泉』。とある義眼を求めて突き進んで行くよ。



「……あのクソガキ。絶対に許しません……カァ……かくなるうえは纏わり付いて使い魔として、私を養ってもらいますからね。ライテュちゃんカアァァ!!」


 何か近くで聴こえた気がするけど。放っておこうね。うん。


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