第16話 個性豊かな補欠試験者
変な男勇者の妨害はあったものの。なんとか時間通りにラグナ魔法学園の中で開催される補欠入学試験の会場に辿り着いたね。
今は、誰も居ない物陰に隠れている所だよ。
「それじゃあ、オディちゃん。『異空眼』でシロ君と一緒に異空眼の世界に飛ばすから、しばらくの間ゆっくりしてね」
〖キュイイ!!〗
僕の専属馬車引きのシロ君も嬉しそうだね。遠いクラウディア領地からここまで頑張って運んでくれたね。
「カァ……それじゃあ、ライト様。《《次》》のライト様のお世話係はエアリスちゃんが来るので宜しくお願いしますカァ。」
「ん? あぁ、もうそんな日だっけ? 了解〜!」
「……エアリスさんですか?」
『異空眼』
「カァ……ライト様。2日に1回のお世話係の変更。絶対に忘れてますね。カァ……」
なんかカァカァうるさいオディちゃんをさっさと異空眼の中にある僕のアジトに送りけてと。
「これで静かになった……」
ズズズ……とオディちゃんが消えた異空眼と外の世界を結ぶ次元の歪みが現れたね。何か出てくるのかな?
「ライト様……私。凄く嫌な予感が致しますわ」
「凄く嫌な予感? てっ! アリア凄い目付きになってるよ。それとなんで僕に抱き付いてるんだい」
ボワワ〜ン!と何かの演出?みたいな感じで現れたのは……
「ライト様。お久しぶりでございます。元エルフの王女にして、ライト様の正妻。エアリス・シルフィードです」
ロングスカートのメイド服を着た。高身長金髪美少女エルフさんのエアリスちゃんが、オディちゃんと入れ替わる様にして現れたね。
この子は昔、夜な夜な世直しの時に近眼盗賊団に捕らわれていた所を助けて。そのまま異空眼の中で捕まった子達が自立できるまでお世話していたんだけど。
その捕まった子達をまとめるリーダー役が、このエアリスちゃんなんだ。なんか、最近は結構大きな組織運営をしてるとか言ってたけど。
オディちゃんの手伝いとかではないよね?
「エアリスちゃん。久しぶり。今日から宜しくね」
「はい! ライト様! お任せ下さい。ですので久しぶりの再会に対してのハグをしても宜しいでしょうか? ライト様〜!……アリア……何をしているのですか? そこを退いて下さいませんこと?」
「エアリスちゃん……お久しぶりです。ライト様は私のライト様なので、勝手に触らないで下さい。お切りしますよ」
……なんか。凄い険悪な雰囲気になってきてるんだけど。何で?
「……相変わらず。《《私》》のライト様から一時も離れていないようね。アリア・ミーティアスちゃん」
「相変わらず。隙あらば《《私》》のライト様に近付こうとするんですね。エアリス・シルフィードさん」
なんか。アリアとエアリスちゃん。久しぶりに出会った瞬間から火花散らしているんだけど。何で? どうして?
……あぁ、そうか。2人はライバル同士みたいな関係だからお互いを分かり合っていて。僕の前だとツンツンし合ってるるんだね。
それで裏では仲良しさんという百合漫画の王道パターンだね。
「うんうん。2人仲良しさんで羨ましいね。親友同士なんだね」
「な?……ライト様。違いますわ! この金髪エロフさんは恋の宿敵です。恋の宿敵なんです。ライト様」
「そ、そうです。こんな銀髪妄想メイドさんが親友なわけありません。第一に何故、この銀髪妄想メイドさんがライト様の専属メイドなんですか? アリアさん。昔、ライト様の専属メイド役は代わり番こに行うと決めましたよね?」
「そんなの《《貴女達》》が勝手に決めた事ですわ。私はライとは小さい頃からずっと過ごした幼馴染みであり。その頃から、ずっとお側に御使いする専属メイドです。お世話係のエアリスちゃんとは違うのですわ」
「つっ! ライト様と出会うのが数年早かっただけではないですか! それを盾にいつもいつももマウントを取って! これだからアリアさんは! 『風嵐』」
「む! ライト様に向かって技を放ちましたね。許しません! これだからエアリスちゃんは! 『銀化粧』」
なんか。2人がヒートアップして、強力な技の応酬し始めたからそろそろ止めないとね。
『相殺眼』
「……これは。ライト様の眼の力」
「私達が放った技が消えていきます」
「2人共。悪ふざけはその辺にしておこうか―――じゃないと本気で怒るよ」
僕は暴れそうだった2人に向かって、少しだけ怒気を強めて告げたんだ。これ以上目立ちたくないしね。
「「ひぃ!……ごめんなさい。ライト様」」
そうしたら。アリアもエアリスちゃんも怯えた表情で頷いてくれたけど。そんなに怖かったかな? 少しだけ怒った僕。
「うんうん。分かってくれれば良いんだ。分かってくれればね。それじゃあ、補欠入学試験の会場に向かおうか。アリア。エアリスちゃん」
そう告げると。僕は会場へと歩き出したんだ。
「……まさか。私達の技を一瞬で消し去ってしまうなんて。それにライト様を怒らせてしまいましたわ。これもエアリスちゃんのせいです……」
「ライト様。以前お会いした一週間前よりも強くなっていますね。凄まじい成長速度ですね……それと怒られてしまいましたね。アリアさんのせいで」
「……何ですか?」
「……またやる気ですか?」
仲直りして見つめあってるのかな? 喧嘩する程仲が良いって言うし。アリアとエアリスちゃんって本当に仲が良いんだね。
「ヨイショっと、です……何人であろうと。ライト様の隣は譲りませんわ。エアリスちゃん」
「そう。別に良いですよ。どうせ、私達がラグナ魔法学園の補欠入学試験に合格すれば。ライト様とは四六時中一緒に居られますからね。フフフ」
「……え? エアリスちゃんがラグナ魔法学園の補欠試験を受けるんですか?」
◇
なんて身内トラブルもあったけど。会場に来てみれば、また変な子達が補欠試験会場に居るんだね。
「オーホホホ!! 今度こそ受かってみせますわ〜!」
「流石です。ヨワールお嬢様」
あれは王都住まいの貴族。パープルアイ伯爵家だね。紫コーデのお嬢様服が目立ちまくってるよ。
「ゴホゴホ……や、やっと。補欠試験会場まで来れた。もう思い残す事はないよ……ゴホゴホ」
「しっかりしろ。ご主人! 試験すらまだ始まってないぞ!」
あれは騎士家の紋章。じゃあ、あの顔色が悪くて、今にも死にそうな男の子はユリウス・ハイブランド君かな?
たしか病弱だけど。魔法学に関しては凄まじい才能があるとかないとか。
「ハハハハ!! 前の試験では暴れて落とされたけど。ギルドからの謹慎も解けて、やって来てやったぜ! 補欠試験!!」
「ちょっと! エド! 皆見てるから騒ぐの止めなさいよ!」
「そうそう。以前の試験は君が試験官を殴り倒したせいで、パーティーメンバー全員。合格してたのに落とされたんだよ!」
「責任感じなさいよね! エド〜!」
男1に対して、可愛い女の子3のハーレムパーティーかい……羨ま……じゃなくて。けしからんね。エド?……齢15才にして、A級冒険者にまで上り詰めたエド・ワグナーの冒険者パーティーかい?
「へ〜、今年は凄い大物が補欠試験会場に居るんだね。それにまさかあんな子達まで居るなんてさ」
「……どうされましたか? ライト様」
「いや、今年のラグナ魔法学園の補欠入学者候補が粒揃いだな〜と思ってさ」
「ライト様〜! 私達の補欠受験票頂いて来ました〜!」
試験手続き場から、大きな胸を振るわせて、僕に笑顔で手を振りながらエアリスちゃんが走って来るね。
「オホホオオ!! 金髪エロフメイドとは! バインバインじゃねえか! それに、あれが俺様の親友候補。ライドバルが紹介してくれるとか言う。ヨワールちゃんか。ふつくしい!! 絶対に補欠試験に受かれよ! 俺様の親友候補! ライドバル!!」
そして、観客席には何故か。自称勇者のダーク君がお菓子を頬張りながら騒いでいたよ。
「……なんであの自称勇者君がここに観客席に居るの? 場違い過ぎでしょう」




