配信四十一回目:空狐のそら
「ニーズヘッグちゃん!」
「ちゃん!?」
『ニーズヘッグちゃんw』
『パワーワードが過ぎるw』
さすがにちゃん付けはないと思うな私も! いや、いいけどね? 間違ってないけどね?
「ルルさん、ニーズヘッグちゃんに触ってもいい?」
「ん……。いいよ。…………。ニーズヘッグちゃん……」
『ルルもさすがに予想外だったみたいだなw』
『その名前にちゃん付けは予想できないわw』
れんちゃんはドラゴン改めニーズヘッグちゃんに駆け寄ると、ぺたぺたと触り始めた。れんちゃんはとっても嬉しそう。レジェとは違うから、これはこれでいいのかもしれない。
「でもすごいですね。ドラゴンのテイムってすごく成功率が低いって聞きましたけど」
ルルさんに話しかけてみる。ようやく慣れてくれたのか、すぐに返事をしてくれた。
「ん。前も言ったけど、千回以上失敗した」
「え? 前?」
「ん」
ルルさんとドラゴンの話なんてしたことなかったような……。
いや、待って。千回以上失敗って、どこかで見たことがあるような……。主に、コメントで……。
「とりあえずエドガー。お前は許さない。絶対にだ」
『ヒェッ』
『エドガーいたのかw』
『思い出した。初期の頃の、放牧地訪問のやつ』
『あー! あー! あれってルルだったのか!』
『お前本当にコメントの時と性格違いすぎるだろ!』
『あんなもんわかるか!』
あー……。うん。私も思い出した。放牧地で思い出した。エドガーさんと会った時に、千回以上失敗してるってコメントがあったね。あれがルルさんだったのか!
「え、つまりルルさんって実は初期の頃から見てくれてます?」
「ん。最初から見てる。古参勢。どや」
「へ、へえ……。そうなんだ……」
そ、それはちょっと、嬉しいというか、なんというか。うん。嬉しい。
『ミレイがにまにましてるw』
『かわいいような、気持ち悪いような……』
うるさいよ。
『ルルちゃん……。一度予定時間からおもいっきり遅刻したことあったけど……』
『あ。さてはれんちゃんの配信見つけて遅刻したな!?』
「ぎくり」
『ぎくりを口で言うやつ初めて見たぞ』
あー……。いや、私のせいじゃないだろうけど、まさかそんな影響が出てるとは思わなかった。本当に最初からなんだね。ちょっと、感動した。
「ルルさんルルさん!」
れんちゃんがルルさんを呼ぶ。れんちゃんを見ると、ルルさんのドラゴンを満面の笑顔で撫でていた。いつも通りだね。
「ん……。どうしたの、れんちゃん」
「この子かわいい!」
れんちゃんがドラゴンに抱きつくと、ドラゴンは器用にれんちゃんのほっぺたを舐めた。エドガーさんのドラゴンよりも人懐っこいかもしれない。個体差があるのかな。
「そう? 喜んでくれたのなら、嬉しい」
ルルさんが手を伸ばすと、ドラゴンはルルさんの方へと首を伸ばす。わざわざ撫でられるために、かな。愛嬌があってかわいいかも。
「それより、そろそろ川行かない?」
のんびりとドラゴンを眺めていたところでアリスから声をかけられて、我に返った。そうこうしてる間に三十分が経ってる。早く行かないと、ね。
「ん……。ごめん。すぐに召喚する。れんちゃん、ドラゴンは帰すから」
「はーい」
ちょっと残念そうにしながら、れんちゃんが戻ってきた。私としては、あのドラゴンが欲しいとか言われないか、ちょっと心配だ。れんちゃんにはレジェがいるから、大丈夫だとは思うけど。
ルルさんのドラゴンがいなくなってから、ルルさんが別の名前を呼んだ。
「そら」
そうして呼び出されたのは、とても小さいキツネだ。子キツネよりもさらに小さい。全体的にふわふわでまんまるで、もふもふだった。毛の色は、茶色っぽいかな? キツネと聞いて思い浮かべる色だと思う。
「わあ……!」
れんちゃんの目が輝いた。じっと、じぃっと、小さいキツネを見つめてる。
気持ちは、とても分かる。すごく分かる。なんだこのもこもこ毛玉。
「なにこのちっちゃいキツネ。これが空狐?」
『そうだぞ。その姿に騙されたプレイヤーが何人いたことか……』
『見た目通りに素早さ特化、ついでに魔力も高い』
「あれは本当にトラウマになる」
テイムまでしてるルルまでそう言うってよっぽどだね。でもそれが仲間になってるなら、すごく心強いと思う。
「ルルさん! だっこしてもいい!?」
「ん……。いいよ」
「わーい!」
れんちゃんが空狐に両手を広げると、空狐は嬉しそうにれんちゃんの胸に飛び込んだ。ふわふわしっぽをふりふりしながら、れんちゃんの顔をなめまくってる。かわいい。
「ふわあ……もこもこ……」
「かわいい、でしょ? 自慢の子」
えへん、と胸を張るルルも十分かわいいと思う。いや、でもほんと、空狐かわいいね。私もだっこしたい。だめかな? れんちゃん、次私ね?
「はい」
「おおっと……」
れんちゃんから譲ってもらって、抱いてみる。これはすごいもふもふだ。ラッキーに負けてないんじゃ……。
なんて思ってたら、ラッキーがいつの間にかれんちゃんの腕の中にいた。もしかして、嫉妬、したのかな? 心なしか空狐を睨んでるような気もするし。
「ラッキーももちろんかわいいよー?」
れんちゃんがラッキーをぎゅっと抱きしめてる。いつもはれんちゃんの頭の上で寝てばかりのラッキーだけど、独占欲というか、他の子と仲良くされてたらそれはそれで面白くない、なのかな。
甘えるラッキーと甘やかすれんちゃんを、空狐をもふもふしつつ眺める。平和だね。
「いや、川は?」
「はっ!」
アリスの呆れ声で我に返った。これももふもふ毛玉でかわいい空狐が悪いんだ。
壁|w・)空狐のそらちゃんは顔出しだけです。
ふわもこちっちゃいキツネさん。
実は掲示板やコメントには今後出てくる人がこっそりいたりします。
今後も誰かが出てくる、かも?
残念ながら一次で落選しました。しょぼん。
どこかがれんちゃんを拾ってくれたらいいなあ、とか思いながら、引き続くがんばります……!
面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、ブックマーク登録や、下の☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。
書く意欲に繋がりますので、是非是非お願いします。
ではでは!






