配信四十一回目:ルルとドラゴン
「何やってるのミレイちゃん……」
ちょっとしょんぼりして肩を落としてると、聞き覚えのある声が後ろからした。振り返った先にいたのは、
「うわ……」
ドラゴンだ。多分、エドガーさんのドラゴンと同種のものじゃないかな。かっこいい。そのドラゴンに、二人のってる。一人はアリス、今日はいつもの巫女服だ。
もう一人は、とても分かりやすい魔法使い装束の人。黒いとんがり帽子まで完備してる。髪の色はピンク色だ。
「えっと……。ルルさん?」
「ん……。どうも。ルル、です」
「あれ……?」
コメントの時と雰囲気が違うような? まじまじと見つめると、ルルさんはアリスの後ろに隠れてしまった。
『ああ、やっぱりこうなったか』
『ミレイとれんちゃんなら大丈夫かと思ったけど、そんなことはなかった』
『コラボって聞いて、ついに克服かと思ったんだけな』
「え、え? どういうこと?」
視聴者さんは分かるみたいだけど、私はさっぱりだ。どういうことなのやら。
「ミレイちゃん」
「ん? どうしたのアリス」
「この子、ルルはね。人見知りするの。コメントの時と違うのは、コメントを打つ時は相手が目の前にいないから平気なだけ」
「はい?」
まさか、と思ってルルさんを見る。ちょっとだけ顔を出してたルルさんはすぐにアリスの後ろに隠れてしまった。なんというか、コメントの時の印象と変わりすぎてびっくりだ。
「えっと……。自分の配信中は? 私が見た時はそんなことなかったんだけど」
『それ、ソロでダンジョンに突っ込んでる時だな』
『目の前にいなければ平気らしいぞ』
『まあそれでも自分語りとかしないから、かわいいは正義発言にはびっくりしたけどw』
ちょっとだけ納得した。それにしても、まさかルルさんが人前でこうなるとは思わなかったけど。このままだとちょっと困ると思うんだけど、どうしよう。
「ほら、ルル。ルルから言い出したコラボでしょ? 前に出なくてどうするの?」
「ん……。わかってる。すぐに、でる。だいじょうぶ」
「うん。そっか。じゃあ出ようか今すぐに!」
「う……はい……」
いやこれ本当に大丈夫? 中止した方がよくない? ものすごく心配だよ私は。
「というかさ。最初は一人で来るつもりだったんでしょ? 私がいなかったらどうするつもりだったの?」
「一人で来たら……大丈夫かなって。だめだった」
「うん……。来てよかったよ……」
本当に。アリスがいなかったら会話すらできなかったかもしれない。
さて、本当にどうしよう、と思ったところで。いつだって状況を打破してくれるのは、全力でこの世界を楽しんでる子だなと思う。
「あー!」
後ろから、れんちゃんの声。振り返ると、れんちゃんがきらきらした目でルルのドラゴンを見ていた。
「どら! ごん! だー!」
『ついにれんちゃんが気付いた!』
『ルル頑張れ超がんばれ!』
『れんちゃん泣かしたらルルでも許さないぞ』
「ひぇっ」
私たちの視聴者さん、ちょっと過激すぎじゃないかな?
そう思ったのは、どうやら私だけだったみたいで。
『そもそもルルからコラボを提案したからな』
『ルルちゃん、自分で声をかけたんだから頑張らないと』
『発案者がコラボ先に迷惑かけるのはだめだと思うよ』
みんななかなか厳しいなあ……。
「れんちゃん。まず挨拶だよ?」
「はーい!」
元気なお返事。れんちゃんはすぐにアリスの後ろにいるルルさんに気が付いた。すぐに駆け寄っていく。そしてアリスはその一瞬でルルを前に無理矢理出した。すごい早業だ。
『なんという早業。俺じゃなくても見逃さないね』
『まあ全員見てるからな』
『この時のために鍛えられた技だな。使い道限定されてるけど』
本当に。アリスもなんだか微妙な表情だし。
「はじめまして! れんです! ていまー、です!」
「ん……。はじめまして。ルル、です」
「でね! でね! この子がラッキー!」
頭の上のラッキーを持ち上げようとして。
残念! そこにいるのはフクロウだ!
「あれ!? ラッキー!?」
慌てるれんちゃん。でもすぐにラッキーは見つかった。何故か白い大きなフクロウの頭の上にいる。重くないのかなあれ。
「むう……!」
あ、れんちゃんが拗ねた。分かりやすいぐらいにフクロウたちが動揺してる。慌てたようにフクロウたちが寄ってきて、ラッキーをれんちゃんの頭の上に戻していった。
「もう……。ラッキー、いやなことはいやって、言わないとだめだよ?」
「わふ」
れんちゃんがラッキーを抱えてそう言うと、ラッキーがれんちゃんのほっぺたを舐める。よし写真だスクリーンショットだ保存だ。
「あ、ルルさん! この子がラッキーです!」
そうして、ラッキーを前に突き出すれんちゃん。ルルさんはラッキーとしばらく見つめ合って、
「かわいい……」
ぽつりと、そう言った。
「うん! えへへ、かわいいって。よかったね、ラッキー!」
「おまかわ」
『おまかわ』
『おまかわ』
みんなの心が一つになった気がする。アリスとルルも呟いてたし。
「あの! そのドラゴンさんは!?」
「ん……。昨日、テイムした。がんばった。すごくがんばった」
えっへん、と胸を張るルルさん。ようやく、少しだけ慣れてきたのかもしれない。
「ちなみに名前はニーズヘッグ」
『名前がいかついw』
『ファンシーな名前つけると思ったらまさかのw』
『ある意味見た目には合ってるけどw』
確かに、ドラゴンは格好いいからね。ファンシーな名前よりも、かっこいい名前の方がいいと思う。けど、いかついなあ。
壁|w・)無口キャラに見せかけたただの人見知りさんです。
慣れるとちょっと気楽に話せるようになります。多分。
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ではでは!






