おともだち
改めまして。
「こちら、私の友達の青野菫。ちょっと無愛想だけどいいやつだよ。その隣が、菫の妹の響ちゃん」
「よろしくね、れんちゃん」
「うん。菫さんと響ちゃん。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げるれんちゃん。挨拶できてえらいなあ。なでくりしちゃう。
「おねえちゃん、ちょっとうっとうしいから、離れて」
「あう……」
お姉ちゃんとしてはもうちょっと構ってほしいです……。
「うう……。で、この子が私の愛しの妹、世界一かわいい我が最愛の!」
「おねえちゃん、うるさい」
「うぐう……」
「いつも思うけど懲りないわね……」
ほっとけ。れんちゃんへの愛を語って何が悪いのか! 私は! 世界の中心でもあるこの病室で叫ぶぞ! れんちゃあああん!
「大島佳蓮です」
「ええ。よく知ってるわ。配信見てるもの」
「わ! そうなんですか! ありがとうございます!」
「無視はひどくないかなあ!?」
いつになく親友と妹が冷たい気がする!
「はいはい。悪かったわよ」
「うう……。私は寂しいとれんちゃんに甘えるんだぞ……」
「え、めんどくさい」
「ひどい!?」
いや本当に、今日のれんちゃん冷たくないかな!?
「あのね。それより、その子は……?」
おっと。れんちゃんの興味は響ちゃんにいってるみたいだ。それなら仕方ないかな。うん。嫉妬じゃないよ。嫉妬しそうだけど。
「あ、の……。配信、見てます……」
「わ! ありがとう!」
にっこり笑顔のれんちゃん。でも響ちゃんはなんだか緊張のしすぎみたいだ。まだ会わせるのは早すぎたかな?
「響ちゃんももふもふ好き?」
「う、うん……。好き」
「そうなんだ!」
れんちゃんはベッドから出ると、響ちゃんの手を取った。びっくりしたのか目を丸くする響ちゃんを引っ張って、ぬいぐるみがたくさん並ぶ棚へ。れんちゃんは猫のぬいぐるみを手に取ると、響ちゃんに言った。
「かわいいでしょ?」
「うん……!」
ああ、なるほど。自慢したいんだね。何をするのかなと思ったけど、妙に納得した。
響ちゃんが嫌そうだったら割り込まないといけないところだけど、幸い響ちゃんは突然始まったれんちゃんの自慢をちゃんと聞いてくれてる。これなら、私が何か言う必要もないかな。
「仲良くなれるかな?」
「どうかしらね。まあ、私たちは見守るとしましょう」
むしろ、それしかないとも言う。
まあ、とりあえずはのんびりと二人の様子を眺めよう。
結果を言えば、無事に仲良くなれたみたいだった。
「ふうん。たくさん集まって勉強するんだ……。なんだか大変そう」
「うん……。わたしは、ちょっと苦手」
「あははー。わたしはどうかな。ひいちゃんと一緒なら楽しそうだけど」
「そ、そうかな?」
「うん!」
今は学校の話をしてるみたいだね。学校がどんなところかは少しだけ教えたことがあるけど、やっぱり同じ年の子から聞くのは違うみたいだ。
ちなみにいつの間にか、れんちゃんは響ちゃんのことをひいちゃんと呼ぶようになってた。あまりにも自然に変わってたから、いつ変わったのか全然気付かなかったよ。
響ちゃんは、呼ばれるたびにちょっと照れくさそうだけど、嫌じゃないみたいだ。
「わたしも、れんちゃんと学校に行きたいな……」
「ん……。行きたい、ね……」
「あ、ご、ごめんね! 変なこと言っちゃって!」
「んーん。気にしなくていいよ」
学校、か。さすがにそればかりは、どうにもできないからね……。せめて行くだけでも、ですらできない。夜でも光はたくさんあるから、れんちゃんが出歩くことはできないから。
「病気が治ったら、一緒に行こうね」
れんちゃんがそう言うと、響ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。
とまあ、そんな感じで二人は楽しそうに話してたんだけど、物事には終わりがあるものだ。なんてちょっとかっこつけてみたけど、ただただ単純に三時までと決めていただけだ。
「また来てくれる?」
「うん。その、来週とか、また来ても、いいかな……?」
「うん! 待ってるね!」
おっと、再会の約束しちゃってる。でも響ちゃん、この病院、決して近いってわけじゃないから、響ちゃんが来るには菫の同行が必須なんだけど。
遅れてそのことに気付いたみたいで、響ちゃんはあ、と短い声を上げて菫へと振り返っていた。
「あ、あの、お姉ちゃん………」
響ちゃんが菫へと振り返る。菫は無表情で響ちゃんを見つめ返して、
「今日と同じ時間でいいわね?」
菫がそう言うと、響ちゃんはぱっと顔を輝かせた。
やれやれ、なんて首を振ってるけど、分かるよ菫。大事な妹にあんなおねだりの目を向けられたら断れないよね。とっても、分かる。
「じゃあ、来週、また来るね」
「うん! 待ってる! 気をつけてね!」
響ちゃんが小さく手を振って、れんちゃんがぶんぶんと大きく手を振って。なんだか対照的だけど、これはこれでいいかもしれない。
「それじゃ、未来。先に帰るから」
「了解。また月曜日、学校で」
菫がひらひらと軽く手を振って退室していく。こんな時でも格好つけというか、クールというか。……いわゆるちゅうにかな? 本人に言ったら怒られそうだから言わないけど!
私はもう少しここにいようと思う。菫も、帰りは一人で大丈夫って言ってたしね。
「仲良くなれた?」
れんちゃんに聞いてみると、れんちゃんは嬉しそうな笑顔で頷いた。
「うん!」
どうなるか不安だったけど、結果的には良かった、かな?
残りの時間はれんちゃんから響ちゃんのことを聞きながら過ごすことにしよう。れんちゃんもなんだかいろいろと話したそうだしね。
壁|w・)世界の中心で妹を叫ぶ姉。
信じられるかい? 最初の設定では、別にこの姉、こんなにぶっ飛んだ人じゃなかったんだぜ……。
次回は先輩配信者とのコラボ、の前にれんちゃんのガチャ。
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ではでは!






