配信四十回目:コラボのお誘い
『ところでもうすぐ時間だけど』
「え」
いや、まさか、そんな、とか思って時計を見てみたけど、確かに二十時十分前。そろそろれんちゃんはおやすみの時間だ。はやいなあ……。
『終わる前にいいかしら』
「ん? どちらさま?」
『ルルよ』
おっと、先輩配信者さんじゃないですか。エンドコンテンツのダンジョンのモンスを複数テイムしてるすごいテイマーさんだ。ペンギンの情報はとても有り難いものだった。
『ルルがまた人様の配信に突撃してる……』
『前もいたよな? もしかしてここの常連?』
『待って。最近ルルの配信って八時ちょっと過ぎからになってるのって……』
『れんちゃんを見てからやってるからに決まってんでしょ、言わせんな恥ずかしい』
『まじかよwww』
ええ……。それはちょっとびっくり。ちょっとだけ光栄。先輩配信者さんが見てくれてるとやっぱり嬉しいね。
『その先輩配信者は視聴者数でも投げ銭の金額でも負けてるわけですが』
『はいはい。それは煽りにならないから。あたしはれんちゃんのファンだからね。れんちゃんかわいいもの。かわいいは正義。おわかり? かわいい、つまりれんちゃんは、正義』
『こわいwww』
ちょっと背筋がぞくっとしたよ。前も思ったけど、この人結構やばいのでは? いや、でも、悪い人ではなさそうだけど。今まで他の視聴者さんに紛れてたぐらいだし。
『ちなみに毎日投げ銭してるから』
『推しが推しに貢ぐ綺麗な関係』
『推し(幼女)』
『自分で言うのもなんだけど、それ見るとあたしって結構やばいね。気にしないけど』
いや、うん。何も言うまい。
「で、ご用件は?」
『そうそう。明日もここに来るのかしら』
「あー……。多分来るかな。まだフクロウと遊び足りないだろうし」
れんちゃんを見る。いつの間にかフクロウを追いかけて広場を走り回ってる。フクロウも嫌で逃げてるわけじゃないみたいで、わざわざ広場を回るように飛んでくれてる。優しい。
逃げるつもりならそもそも空に行くだろうし、当たり前かな。
『じゃあ明日、コラボしない?』
「うん。……うん? うん!?」
『うんの三段活用』
『三段活用とは』
いや、まさかコラボのお誘いが来るとは思わなかった。だって、他の配信者さんは色々と工夫を凝らしてるけど、私はもふもふをもふもふするれんちゃんを配信してるだけだし。見てる人は多いというのは知ってるけど、コラボには向かないと思ってたんだけど。
「ちなみに、何をするか決めてるんですか?」
『そうね。実は迷いの森って、特定のモンスがいると色々と案内してくれるのよ』
『なにそれ』
『おい新情報だろそれ! 聞いたことないぞ!』
『あらそうなの。テイマーの間では知ってる人は多いけど』
『テイマーさん、もうちょっと情報オープンにしよう?』
いや、うん。テイマーの掲示板で見たことあるかな、それ。シロやクロはそういうのなかったから気にしなかったけど。
というより、確かそれって、エンドコンテンツのダンジョンのモンス限定だったはず。多分これ、あえて隠してるんだろうなあ……。まあ、私も触れないでおこう。
『それでね。あたしがテイムしてる空狐は綺麗な小川に案内してくれるの。よければどうかしら』
「綺麗な小川……」
正直に言うと、すごく興味がある。むしろ行きたい、是非とも行きたい。川遊びとかできるんじゃないかなそれ。
「泳げる?」
『もちろん』
「アリス!」
『水着だね任せて!』
『さすが、打てば響くような返答だなw』
『まああの流れならそれしかないだろうけど、アリスも即答すぎるだろw』
うんうん。これは楽しみになってきたね! あとは問題は時間だけど……。
「夕方でもいいかな? お昼あたりはちょっと用事があるから」
『いいわよ。でもできれば、アリスにはご遠慮いただきたいけれど……』
『ルルちゃん。新衣装、素材持ち込みで無料で作ってあげる』
『是非一緒に行きましょう』
う、うん。仲良くしてくれるならいいけど、即答って。さすがアリス、こっちでも人気なんだね。
とりあえずれんちゃんに報告かな。勝手に決めるのは、怒られないだろうけど、だめなことだと思うから。
「れんちゃん、ちょっといい?」
「はーい」
戻ってき……なにあれ。なんか、フクロウがれんちゃんの服を掴んで、ちょっと飛んでるんだけど。雀の時に似たようなものを見た気がする……。
「何やってるのれんちゃん」
「ふわふわしてる」
「うんそうだね。ふわふわしてるね」
それはそうだけど、そうじゃないんだよ……。いいけどね?
「れんちゃん。明日の夕方だけど、ルルさんとコラボしても大丈夫かな?」
「こらぼ?」
「そう。コラボ。んー……。ルルさんと一緒に遊ぶ、ぐらいで思っておけばいいよ」
「いいよ!」
あら。あっさりと許可が出た。れんちゃんがそれでいいなら、私としても文句ないけど。
「ルルさんって、テイマーさんだったよね?」
「ああ、うん。そうだね。きっと空狐を見せてもらえるよ」
「キツネさん!」
「うん。とっても強いキツネさん」
まあれんちゃんにとっては強さなんてどうでもいいだろうけど。キツネって聞いただけで嬉しそうだし。れんちゃんが楽しみに思ってくれるなら十分だ。
『良かった。安心したわ』
「うん。ルルさん、明日はよろしく」
『任せて。素敵な思い出にしてあげる』
『無駄にイケメン』
『そいつ一応女だけどな』
『一応ってw』
ルルさんも見てるってこと、分かってるのかな。後で怒られればいいと思う。
とりあえず明日は、菫たちと会ってから、ここでフクロウと友達になって……。
「おねえちゃん! フクロウさんと友達になった!」
「いやだから早いよ」
『知ってた』
『さすがやでれんちゃん』
『これが……モンスたらしの実力……!』
変な二つ名がつきそうで怖い。正直、同じ気持ちだけど。
まあ、うん。これで明日は心置きなく遊べるね! そういうことにしておこう!
壁|w・)というわけで? 先輩配信者さんとのコラボです。
川遊び、ですよ。
次回は、幼なじみの妹と会います。
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ではでは!






