配信四十回目:フクロウさん
「れんちゃん、行ってみる?」
「うん!」
というわけで、広場に立ち寄ってみた。予想通り、日の光があったかくて気持ちいい場所だ。ここだけ背の低い草が生えてて、お昼寝もできそう。
「あったかい!」
ディアから飛び降りて、れんちゃんが走り始めた。広場の隅っこから隅っこへ。また隅っこへ。いつの間にかラッキーも一緒になって走っていて、ちょっと楽しそう。
さて、私はどうしようかな……。
「できればフクロウを探しに行きたいけど、もう今日はこれでいいかなと思う自分もいる……」
『れんちゃんが遊び始めちゃったしな』
『のんびり眺めるのも悪くないと思う』
『普段と違う場所で遊ぶのもいいよね』
「うん。ピクニックみたい」
れんちゃんがディアに突撃して、片足でおさえられてる。と思ったら、れんちゃんがディアの足をもふもふし始めて、くすぐったいのかディアが逃げ始めた。れんちゃんとラッキーがディアを追いかける不思議現象だ。
「まてー!」
ぱたぱた走り回るれんちゃんと二匹を眺めながら、私はシロを背もたれにする。れんちゃんのホームじゃないからもふもふは少ないけど、これはこれで落ち着けるから、とてもいい。
「平和だなあ……」
『急にどうしたw』
『ミレイちゃんの周りは常に平和だと思うけど……』
『言いたいことはわからんでもないがw』
『最近慌ただしかったしな。触れ合い広場とか』
そうなんだよね。いや、忙しかったかと聞かれると、私は特に何もしてないんだけど。触れ合い広場は運営がほぼ全て終わらせてたし、あのお祭りも視聴者さん主催だし。
「あれ……? 私、何もしてないのでは……?」
『そこに気付くとは……さては天才か?』
『さすがミレイ、賢いな』
「バカにしてるよね」
『うん』
『もちろん』
『否定はしない』
ひどい。いや、本当に何もしてないから、怒られても文句言えない。
私も何かやろうかな、とか考えて視線を少し上げて。
「あ」
大きな木の上の方、枝と枝の隙間に、それはいた。というか、たくさんいた。たくさんいたといっても、見つけられたのは本当に偶然だ。たまたま上を見たその先にいただけだから。
「フクロウかなあれ……」
じっと、見つめてみる、なんだかあっちも、私のことを見てるらしい。それにしても、何羽いるんだろうあれ。
ぼんやり眺めてたら、一羽だけこちらに下りてきた。ふんわりとシロの頭の上に着地。シロが一瞬だけぴくりと動いたけど、面倒なのかそのまま動かなかった。それでいいのかウルフさん。
フクロウは白くてまるくてふわふわだった。特徴的な動きで首を傾げているのがかわいい。試しにつついてみると、逃げずにされるがままだった。
おお……。ふわふわだ。すごい。
「白いフクロウってあれを思い出すよね。魔法使いのお話の……」
『やめろ!』
『それ以上はいけない』
「ごめんなさい」
いや、でも、本当にかわいいねこの子。なでなでしてみたいけど、先にれんちゃんを呼ぼうかな。
「れんちゃんれんちゃん」
フクロウを驚かさないように小声で呼ぶ。それでもれんちゃんはすぐに気付いてくれて、シロの頭にいるフクロウにもすぐに気が付いた。ぱっと顔を輝かせて、こちらに走ってくる。
「フクロウさん!」
れんちゃんがフクロウの前に立つ、れんちゃんが手を伸ばしてもフクロウはやっぱり逃げない。そのままれんちゃんはフクロウを撫で始めた。
「わあ……。かわいい……」
フクロウも目を細めてとっても気持ち良さそうだ。
あ、フクロウがふわりと飛んで、今度はれんちゃんの肩にのって、れんちゃんに頬ずりしてる。あざとい。実にあざとい。けど、それがいい!
『フクロウが大きいせいで、れんちゃんがちっちゃく見える』
『確かに。いやもとからちっちゃいけど』
リアルの鳥と比べても大きいから、言いたいことはなんとなく分かるかな。
れんちゃんはしばらくフクロウを撫で続けてたけど、フクロウが突然翼を大きく広げた。びくっとするれんちゃんもかわいい。
「え、え? 嫌だった? おこっちゃった……?」
れんちゃんは不安そうだったけど、その心配はないと思う。というよりも、大きな木の上を見ていた私からすれば、このフクロウが何をしたのか察しがつくから。
大きな木からふわりとフクロウが下りてくる。目の前のフクロウよりも一回りも二回りも小さい。雛なのかな。ちっちゃいまんまる毛玉だ。
「わあ!」
歓声を上げるれんちゃんに小さいフクロウたちがまとわりつく。両肩に一羽ずつ、そして頭のラッキーの上にももう一羽。いやラッキー、反応しようよ。完全に寝てるね君。
頭のフクロウも不満だったみたいで、何度も飛んでは降りてを繰り返してアピールしてる。いい加減鬱陶しくなったのかラッキーも立ち上がった。
「わう!」
飛んで、小さいフクロウに襲いかかるラッキー。フクロウはひらりと避けて、ラッキーがまた飛びかかって、次も避けての繰り返し。
『幼獣大決戦再び』
『かわいい戦いだなw』
『相変わらずれんちゃんの頭を巡って起こる争い』
『れんちゃんの頭、気に入られすぎじゃない?』
いや、本当にね。どうしてそこまで気に入られてるのやら。
「フクロウさん、すごく大人しいね」
「ん?」
いつの間にかれんちゃんは地面に座ってて、フクロウはその膝の上にいた。れんちゃんが後ろからぎゅっと抱きしめても、特に抵抗せずに受け入れてる。
「いいなあ、ふわふわしてそう」
『ミレイも最初から懐かれてたっぽし、できるんでない?』
『珍しくミレイの方に先に来てたからな』
『珍しく!』
『そう! 奇跡的に!』
「強調するな」
失礼だねほんと。いや、まあ事実だけどさ。正直、私の方に先に来るとは思わなかった。
でもまあ、今はれんちゃんを優先してくれてるし、満足。幸せそうなれんちゃんを見てるだけで、私もほんわか幸せになれる。
壁|w・)遊んだだけで終わりました……。
次回は、コラボのお誘い。
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ではでは!






