幼なじみとのお話と、ひつじもふもふ
「ふへえ」
「だらけてるわねえ……」
放課後の喫茶店。私はテーブルに突っ伏してだらけていた。ふへえ。
「聞いて下さいよ菫さん」
「はいはい。聞いてあげるわよ。どうしたの?」
「れんちゃんがもうかわいくてかわいくて!」
「それは今日に入って二十回は聞いてるけど、それで?」
「そろそろれんちゃんにも友達を作ってあげたいです」
「脈絡なさすぎない?」
そうかな? そうかも。でも菫ならこれぐらい分かってくれると思うんだよね。なんだかんだと、そんな信頼が菫にはある。
「そんな変な信頼はいらないわよ。で?」
「うん。菫さ、れんちゃんの友達になってあげてくれない? 菫なられんちゃんとも気が合うと思うんだよね。意外とかわいいもの好きだし」
菫はクールで格好良いと評判だけど、実はかわいいもの好きだ。学校の鞄にはちっちゃい犬のキーホルダーがついてるし、スマホには猫、家には大きなぬいぐるみまである。
あまり学校で表に出さないのは、小学生の頃にからかわれたかららしい。いいと思うけどね、私は。
「未来。本気で言ってる?」
「んー……。いや、半分冗談」
「でしょうね」
私だって分かってる。れんちゃんと菫だと年が離れすぎてるって。仲良くなれるとは思うけど、友達というよりは、姉の友達、友達の妹、という関係までしかなれないと思う。
でも私に小学生の知り合いとかいないから他に頼めないんだよね。友達の妹はほとんどが中学生か小学校高学年だし。やっぱり年が離れてると、なかなか難しい。
「ねえ、未来」
「んー?」
「その友達って、内気な子でも大丈夫?」
「え? まあ、うん。大丈夫だと思うけど……」
いきなり二人きりにはさせるつもりはないから、私がフォロー……できるかは分からないけど、やればいいと思う。がんばる。
「じゃあ、私の妹とかどう?」
「え? ……ええ!? 妹いたの!?」
「いるのよ」
「教えてくれたらいいのに!」
「あんたに教えたら危ないでしょうが」
「どういう意味かな!?」
シスコンだなんだと言われてるけど、否定しないけど! 私は別に幼女が好きなんじゃなくてれんちゃんが好きなのだ。小さい子が好き、みたいなロリコンじゃない。
「人様の妹とかどうでもいいよ」
「その言い方はとても腹が立つ……」
「めんどくさい姉だね菫も」
ああ、なんとなく視聴者さんの気持ちがちょっと分かったかもしれない。なるほどこれは、ちょっと面倒だ。まあ。改めるつもりなんてかけらもないわけですが。
「でも内気なんだよね? 大丈夫? 病院に来れる?」
「大丈夫。れんちゃんのファンだから」
「なんと」
意外な繋がりだ。プレイヤーじゃない人も視聴してくれてるのは知ってたけど、まさかこんな身近にいたとは思わなかった。いや、そう言えば、菫も見てくれてるらしいし、結構多いのかな。
「ちなみに、クラスの半分以上が視聴者よ」
「マジかよ」
「マジよ。あれだけ妹かわいいれんちゃんかわいいを連呼してたら、そりゃ誰だって興味持つわよ」
そんなもの、なのかな? そう言えば最近あまり付き合いのなかった佐々木さんから、れんちゃんの写真が見たいって言われて驚いたけど、そういうことなのかな。
ちなみにその時はとても熱く語りました。それなのに引かれずに話を聞いてくれてとても嬉しかったです。
「じゃあ、うん。一度会ってもらおうかな。気が合わない可能性もあるし」
「そうね。明日とかどう? 土曜日だし、お昼とか」
「あ、いいかも。でもそんなに勝手に決めちゃって大丈夫なの? その子の都合もあるんじゃ……」
「大丈夫よ。友達がいなくていつも家にいるから」
「それ大丈夫じゃないと思うよ私は」
いや、うん。その子のことを知らないから私が言うべきじゃないと思うけど。本人次第なところもあるし。でも小学生でそれは大丈夫なの……?
「病院はどこの病院だっけ」
「あ、うん。この駅の……」
まあ、やっぱり私が何か言うことじゃない。人の家のことだし。でも、菫から何か協力を頼まれたら、いつでも引き受けるよ。それなりに長い付き合いだし、ね。
夕方。私がログインしてホームでれんちゃんを探すと、なんだか珍しい組み合わせを見つけてしまった。
「アリス?」
「あ、ミレイちゃん。お邪魔してます」
羊さんをもふもふするアリスと、そして、
「おねえちゃーん!」
「おっと。今日も元気いっぱいだねえ」
私の胸に飛び込んできたれんちゃん。今日もかわいいなあ。なでなでくんかくんか。
「…………。ちょっときもちわるい」
「ひどい」
罵倒が早すぎませんか……。
「今日は早めにインしたの?」
「うん! 看護師さんが、内緒よってやってくれた!」
「そっかそっか」
くそう。そうと知ってたらもっと早くインしたのに……! 失敗した!
早めにインしたれんちゃんにアリスが気付いて、相手をしてくれてたのかな。正直助かった。そんなアリスに目を向ければ、羊さんに抱きついたままむむ、と唸ってた。
「何やってるのアリス」
「んー……。まだ調査中なんだけどね。羊毛って、好感度が高いととっても良い質の羊毛が取れるらしいんだよ。それで、れんちゃんならどうかなって」
「へえ、そうなんだ。でも、羊がここに来てから一週間も経ってないよ」
「私も最初はそう思ったんだけどね」
アリスが羊さんから離れる。すると羊さんはのんびり歩き始めて、れんちゃんの側に来てしまった。ぴと、とれんちゃんにくっつく。なんだこの子。かわいい。
「羊さん!」
もふっとれんちゃんが抱きついて、羊さんもどことなく嬉しそうだ。さすがれんちゃん、モンスたらしだね……。
「ここまで懐いてるなら、いい羊毛が取れると思わない?」
「確かに」
本当に好感度が関わるなら、いい羊毛がとれると思う。まあ、とれたら、だけど。
壁|w・)結構身近に視聴者さんはいます。主に妹自慢をしまくる姉のせいで。
次回は、羊毛ちょきちょき。ただし難易度ベリーハード。
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ではでは!






