ゲーマーズネットの倉橋さん
「初めまして、大島様。ゲーマーズネットの倉橋と申します」
「あ、はい。これはご丁寧に……」
お祭りの二日後、火曜日。病院の駐車場で、私は倉橋さんという人に会っていた。誰かと言えば、金ぴかさんだ。
ゲームマスターさんの山下さんから連絡があって、どうやら本当にゲーマーズネットの人で間違いないらしい。それならとこうして会うことになった。結構遠かったはずなのに、わざわざ新幹線で来てくれてびっくりだよ。
「ええっと……。倉橋さんは、れんちゃんの取材がしたいってことで、いいんですよね?」
「はい。その通りです。ご両親にも改めてご連絡を……」
「あ、どちらもここで働いてるのですぐに会えますよ」
「え」
あ、それは知らなかったのか。いやまあ、両親の仕事にはテレビでも少し触れただけだったからね。
お父さんもお母さんも、この病院で働いてる。お父さんが内科でお母さんが眼科。だからまあ、実は二人そろってのお給料は実はなかなか良かったりする。
「それでも募金を募るってことは、それだけお金がかかるってことですか」
「まあ、はい。そうです」
れんちゃんにすぐ会えるように近くのアパートを借りたけど、それもオートロックがあればいい、という程度だ。私も別に贅沢したいわけじゃないし、文句はない。
というよりも、最初はもっと大変だった。お母さんが患者さんに人気があったから病院側も便宜を図ってくれたみたいだけど、お母さんのお給料だけじゃれんちゃんの治療費や入院費には足りなくて、かなりの額を待ってもらってたみたい。
結婚してからは、お父さんが貯金も使って全部支払ってしまった。海外旅行に行こうと思ってたのにごめんな、とか言われたけど、れんちゃんが行けないなら海外旅行なんて行かないです。当たり前だよね。
まあ、それを言ったら微妙に笑顔が引きつってたけど。失礼な父親だ。
それでも、お金はやっぱり足りなくて。治療のためにはれんちゃんの病気から調べないといけないしで常に金欠状態。だからまあ、いろいろとリスクはあると知っていても、募金をお願いすることになったのだ。
今はある程度余裕ができて、れんちゃんの病気を調べるためのチームなんてできてるらしい。まあ未だに成果がなくて、会う度にめちゃくちゃ謝られるんだけど。私に謝られても困る。大の大人が高校生に何度も頭を下げないでほしい。いたたまれない。
「えっと……。それは、どこまで書いていいのかな……?」
「え? えっと……。必要なら、お父さんかお母さんの許可を取ってください。参考程度に話しただけです」
「なるほど。分かりました」
「ゲームの取材、ですよね……?」
「少しだけ触れておいた方がいいと思いまして。知らない人は、小学生が遊んでいることに疑問を覚えるでしょうから」
少しだけ納得した。まあ、そうだよね。テレビには出たけど、それを全員が見てるわけじゃないし。配信中でも知らない人はそれなりにいたしね。
面会の受付をして、十階へ。今の時間なられんちゃんの病室で昼食を食べてるはずだ。
「今更ですけど、学校はいいのですか?」
「休みました」
「ええ……」
「成績が優秀だといろいろと無理が通ります」
成績を上げておいて良かったことだね。なんとなく、れんちゃんが関わることは全て諦められてるような気もするけど。
準備室のような部屋に入って、電気を消す。
「ここまで暗くなるんですか……」
「ですよ。慣れるまでは大変だと思います」
ノックして、病室に入る。取材のことは両親に話していたので、二人ともちゃんと待ってくれていた。
「あ、おねえちゃん!」
「れんちゃん!」
あとはお任せしてれんちゃん分の補充だー!
ベッドに座ってれんちゃんを膝の上に。後ろから抱きしめて、一息。ベストポジションです。
「自分の娘ながら、どうしてこうなったのやら……」
お父さんが呆れてるけど、そんなものは一切無視である。れんちゃんかわいいよれんちゃん。
「おねえちゃん、学校は?」
「休んじゃった」
「え? おねえちゃん、おばかなのにだめだよ?」
「…………」
一度定着したイメージって、そうそう変えられないよね。ははははは。
父を睨む。即座に目を逸らされた。
「おぼえとけよこのやろう……」
「それが父に向かって言う言葉かな?」
「誰がおばかのイメージを定着させたのかな? 誰ですかねえ?」
「いや、うん、その節は大変申し訳なく……。言うんじゃなかったと本気で後悔してる……」
「こればかりはあなたの自業自得よ」
そう言ってくすくすと笑うのはお母さん。そっちに目を向ければ、ふんわりと優しそうな笑顔を浮かべてくれた。
「でもあまり休みすぎじゃだめよ? また成績下がっちゃうから」
「それは、まあ……。気をつける」
面会の時間を減らせとか言われたら嫌なので、それだけは本当に気をつけよう。
「お父さん、お母さん。そっちの人が倉橋さん。ゲーマーズネットの人で、れんちゃんの取材がしたいんだって。ちなみにれんちゃんは是非受けたいそうです」
「羊さん!」
「羊さん欲しいもんね」
羊に全力で釣られた気がするけど、まあいつものことだね!
「はは。分かった。それじゃあ、倉橋さん、ちょっと外で話しましょうか」
「は、はい。すみません、団らんの時間を邪魔してしまって……」
「ははははは。お気になさらず」
あ、あれ地味に怒ってる笑い方だ。よし、気にしないでおこう。
出て行く大人三人を見送って、私はれんちゃんの頭に顎をのせた。んー。れんちゃんの髪は柔らかいなあ。
「おねえちゃん、ちょっと重い」
「だめ?」
「もう……。しかたないなあ」
許可をもらえたので、そのままで。れんちゃんをこちょこちょしつつ、とりあえず今日はこの後の予定がないのでのんびりしようと思います。
れんちゃんを腕に抱いて、ベッドにごろんと。お、ベッドにキリンのぬいぐるみが転がってる。今日のお供はキリンさんらしい。
キリンのぬいぐるみを手にとって、ぽすぽすれんちゃんを叩いてみる。れんちゃんはキリンさんを見ると、ぱっと顔を輝かせてぬいぐるみを取りに行った。
人形遊びが好きなところはまだまだ子供だね。いや子供だけど。
壁|w・)話し合いは大人に任せて、のんびりまったり。
突然ですが、1日2回更新は本日で最後となります。
さすがに疲れました。これ以上は生活に影響が出そうなので、終わりとさせてください。
今後は毎日夜に更新となります。
来月ぐらいから感想の返信も再開したいところですが、書く方を優先したいのでその点はご了承くださいませ。
でもありがたく読ませてもらっています。感謝感謝なのですよ……!
ではでは、今後ともよろしくお願いします!
面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、ブックマーク登録や、下の☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。
書く意欲に繋がりますので、是非是非お願いします。
ではでは!






