配信三十三回目:ちんまいもこもこ殺人毛玉
「せいやあ!」
シロクマを追い越して、れんちゃんが落ちてくる前にキャッチした。勝った!
「わわ……。びっくりした……。ありがとうおねえちゃん」
「いえいえ。ふふふ……勝ったよ私は……」
「え?」
『れんちゃんのこのきょとん顔よ』
『知るはずもあるまい……。れんちゃんを助けようとしたシロクマと張り合ってたなんて……』
『普通は考えすら出ねえわw』
『シロクマも固まってるからなw』
ふふん。悪かったねシロクマ。
「お前もまさしく、強敵だった……」
『いきなり何言ってんの? いや本当に何言ってんの?』
『意味が分からなさすぎるwww』
『今日の奇行はまた一段とひどいなw』
うるさいよ。
「あ、ラッキー! おねえちゃんの頭にいたんだね!」
わふん、というラッキーのお返事。ぱたぱた揺れる尻尾がちょっとくすぐったい。
『お姉ちゃんの頭にいた、というパワーワードについて』
『なんだろう、疑問に思って当たり前なのに、それほど変に思わない』
『れんちゃんに毒されすぎだろお前らw 俺もだけどな!』
『何か問題が?』
『ありませんねえ!』
なんだこいつら。こいつらの奇行、というか変な発言もいつもよりひどいと思う。
「あ、シロクマさん」
「へ? うわ……」
いつの間にか、シロクマはすぐ隣にいた。やめてよ驚くから。君、一応肉食動物だからね? 怖いからね?
『まあその肉食動物すらぶっ殺すのが我々プレイヤーなわけですが』
『むしろシロクマがびっくりだよ』
れんちゃんがきょろきょろと周囲を見回す。少し離れたところに、あの大きな鮭も落ちていた。れんちゃんが安心したようにため息をついて、満面の笑顔。
「シロクマさん、あのお魚なら足りるかな?」
何の話だろう。シロクマには通じたみたいで、頷いてる。いや、人の言葉分かるの?
シロクマはのっしのっしと大きな魚の方に行く。そして、吠えた。
そして、ひょこりと、どこにいたのか姿を見せたのは、小さなシロクマ。シロクマの子供。
「なにあのちんまくてもこもこでかわいい殺人毛玉は!」
『落ち着けミレイwww』
『ミレイちゃん、どーどー』
『でもほんっとうにかわいいな。もこもこふわふわやぞ』
だよねだよね。れんちゃんも目を輝かせてる。本当に、かわいい。
小熊はシロクマの元まで行く。大きな魚を食べ始めた。ああ、なるほど、つまりこの子たちのご飯を釣り上げることが、本来のイベントだったらしい。
『いや気付かないから! うっそでしょそんな単純だったの!?』
『まあいきなり肉食動物に吠えられたら、びびるし戦闘にもなるわなw』
『でも確かに単純なイベントだし、多分あと二、三日でれんちゃんでなくても気付けただろうな』
それはまあ、そうだろうね。ペンギンの時も釣りをしたわけだし、それを考えると十分に予想できた流れだったと思う。ちょっと不親切だとは思うけどね。
あの子熊はシロクマの子供かな。二匹で仲良く魚を食べてる。とても平和な光景だ。
「おねえちゃんおねえちゃん」
「ん? どうしたの、れんちゃん」
「シロクマさんもホームに来るんだって」
「え」
『知ってた』
『まあペンギンの流れでシロクマだからな』
『なるほどね。あたしも早速やってこようかな』
ああ、うん。まあ、そうだよね。ペンギンのイベントを終わらせるとペンギンがホームに来るんだから、シロクマを終わらせたらシロクマが来るのは道理だ。……いや道理か?
ともかく、とりあえずはペンギンとシロクマのイベントはこれで終わりらしい。魚を食べ終わったシロクマも、そしてあのペンギンたちも、私たちに頭を下げるとどこかに行ってしまった。
まあ、どこかというか、れんちゃんのホームにだろうけど。
「それじゃあ、行ってみますか!」
「うん!」
ではでは、いざれんちゃんのホームへ!
あ、いや、その前に。
「どうやって出るのこれ」
『草』
『先に確認しておけよw』
『ちなみに、ドーム状の部屋の中央に魔法陣があるから、そこに乗ったら出れるよ』
「ありがとうございます!」
うーむ、最後の最後でしまらないね。
壁|w・)調整のため、今回は短めでした。ごめんなさい。
次回は、引っ越してきたペンギンさんとシロクマさんに会いに行きます。
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ではでは!






