配信三十二回目:ごほうびはもふもふ情報と引き換えです
とても美味しいお刺身でした。猫たちも大満足だったみたいです。ちなみにれんが釣った魚は鯛だったそうです。何故池で、という突っ込みはしちゃいけないそうです。
美味しかったので、大きな葉っぱに包んでお持ち帰りです。お姉ちゃんへのお土産なのです。お姉ちゃん、喜んでくれるかな?
猫の案内で向かっているのは、放牧地です。にゃんにゃんかわいい案内です。かわいいので子猫を一匹抱き上げてなでなでしています。もう一匹から羨ましそうに見られているので、あとでこちらも撫でておきましょう。
え? クロも撫でてほしいの? 仕方ないなあ。
順番にもふもふなでなでぎゅっとしていたら、いつの間にか放牧地にたどり着きました。
「ひつじ! さん! だー!」
ふわふわもこもこな羊を見つけて、れんは思わず叫びました。
『羊サンダー?』
『…………』
『…………』
『その、すみません』
コメントを無視して、れんは羊に駆け寄ります。触ってみると、とてももこもこしていました。ちょっとだけ、感動です。
抱きつかれた羊は特に何も反応せず、嫌がるような素振りはありませんでした。それどころか、わざわざその場に座って、れんがもふもふしやすいようにしてくれました。
すぐにれんは全身でもふもふ羊を堪能します。もふもふ。もふもふ。
「もふもふ……。レジェとはまた違う、すごいもふもふ……。ふわあ……」
『れんちゃんがとろけてるw』
『とろとろれんちゃん、かわええ』
『羊かあ……。羊のモンスターっていたかな……』
それはれんにも分かりません。きっとお姉ちゃんが調べてくれます。
羊をたっぷりもふもふしながら、れんはのんびりとした時間を過ごすのでした。
・・・・・
ホームにれんちゃんが帰ってきた。
「おかえりー!」
「むぎゅう」
ぎゅっと抱きしめる。ああ、れんちゃんだ。うえへへへ。
『ミレイの奇行を見ると落ち着くな』
『実家のような安心感』
『お前の実家やばすぎるだろw』
本当にね。……いや待て、どういう意味かな?
「んー……。おねえちゃん、はなして?」
「だめ」
「えー」
れんちゃんと遊びたいからこのゲームをしてるのに、一時間以上別行動になっちゃったからね。れんちゃん分が足りないのです。だからもうしばらく、このままで。
ただ、このままだと動きにくいとは思うので、少し体勢を変えることにしよう。
その場に座って、シロを呼ぶ。シロに背もたれになってもらって、れんちゃんをぎゅっと抱きしめる。仰向けになったれんちゃんは何か言いたそうだったけど、仕方ないなあとでも言いたげに笑われてしまった。
我が儘なお姉ちゃんでごめん。
そうして、のんびりとした時間を過ごす。後ろはもふもふ、前はれんちゃん、最高です。
「おいで。おいで」
暇になってきたのか、れんちゃんが手招きし始めた。家の前にある、柵へ。すると柵から子犬たちが歩いてくる。子犬とはいえ、れんちゃんの言うことはちゃんと聞くみたいだ。
「子犬なのに賢いね」
『そいつら狼……、いや、気にするな』
『正直子犬も子狼も見分けつかねえし』
『何言ってんだ! 子狼はもっとこう、シュッとしてるんだよ!』
『つまりお前は見分けがつくと』
『つくわけねえだろ、アホか』
『どっちだよw』
まあ、実際のところ、どうなのか分からないんだよね。このゲームで子犬なんて見たことないし、リアルだと子狼を見たことがない。違いってあるのかな?
そんなことを考えてる間に、子犬たちはれんちゃんの元にたどり着いた。れんちゃんによじ登ろうとしたり、足をぺしぺし叩いたりと遊び始めてる。あ、ころんと転がった。かわいいなあ。
『ミレイちゃんミレイちゃん。ちょっといい?』
「んー? アリスかな? なに?」
『耳寄りの情報を仕入れたよ』
おや、なんだろう。わざわざ私に言うってことは、もふもふ関係かな? 正直私は、今でも結構満足して……。
『ペンギン見つかったよ』
「ぺんぎん!」
反応したのはれんちゃんでした。
「ぺんぎん! ぺんぎんいるの!?」
『いるよいるよ。さっき掲示板見てたらさ、ペンギン見つけたって報告があったんだよ』
それはびっくりだ。私もこまめに掲示板は見るようにしてるけど、昨日まではそんな話はなかったはず。今日見つかったのかな?
『テイマー掲示板の情報だな。すでに色々調べられてるみたいだぞ』
『あのさあ……。ペンギン見つけたの、あたしなんだけど。あたしがれんちゃんに教えたくて頑張って調べたのに!』
『え、あ、ご、ごめん』
ペンギンを見つけたのは視聴者さんだったらしい。れんちゃんに教えてあげようと、前もって色々調べておいてくれたんだって。いい人だ。
その人曰く、キツネたちがいた雪山の頂上に洞窟があるらしい。九尾をテイムしていることが条件みたいで、テイムしてない人は見つけられないんだとか。
その洞窟がペンギンたちの住処。しかもこのペンギンたち、モンスター扱いじゃないみたいで、襲ってこない。通常のテイムスキルは使えないみたいだけど、何らかの条件を満たせば仲良くなることができて、ホームにお引っ越ししてくれるらしい。
ちなみにその条件は、まだ調査中。そこまでは調べられなかったとのこと。
『どう? 参考になった?』
「うん! ありがとうお姉さん!」
『どういたしまして』
『誰か知らないけど、満足顔を幻視した』
『俺は俺らに対するどや顔が見えた』
『ああ、そうだれんちゃん。調べてきたご褒美が欲しいなって』
「ごほうび?」
む。何を要求するつもりだ。思わず顔が険しくなったみたいで、慌てたようなコメントが流れてきた。
『いや、ごめんごめん! そんな変なのじゃないから! できれば、名前で呼んでほしいなって。今回だけでいいからさ。だめかな?』
まあ、それぐらいならいいでしょう。見上げてくるれんちゃんに頷くと、にぱっと笑った。かわいい。
『何今の笑顔』
『かわいすぎるんだけど』
「えと。それで、お姉さんのお名前は?」
『ルルよ』
ルル。はて。どこかで聞き覚えがあるような、ないような。
『おそらく一番有名なテイマーだな。エンドコンテンツのダンジョンのモンスターを複数テイムしてるぞ』
『配信もやっててそれなりに人気だったな。れんちゃんに負けたけどな!』
『あ、それは別に気にしてないから。むしろそれでいいから。れんちゃんかわいいもの。かわいいは正義なの。いい? かわいいは、全てに勝るのよ』
『あ、はい』
『おいこいつ意外とやべえぞ……』
『変人だー!』
『うるさい、空狐ぶつけるぞ』
『やめてください死んでしまいます』
ああ、知ってる知ってる。むしろこの人の配信をかなり参考にさせてもらった。咄嗟に出てこなかったのは、まさか見に来てくれてるとは思ってなかったから。そういうことにしておこう。
「ん……。えっと。それじゃあ……。ありがとう、ルルさん」
『…………。あたし、あと十年はがんばれる』
『お、おう』
『ああでもくそ、羨ましいなあ!』
『ちょっと俺も新しいもふもふの情報を探してくる!』
れんちゃんに名前を呼んでもらうのって、嬉しいみたいだね。いや気持ちは分かるけどね! れんちゃんかわいいからね! ぎゅっとしちゃう!
「んぅ? おねえちゃん、どうしたの?」
「れんちゃんは私の妹だこの野郎、アピール」
「……? わたしはおねえちゃんの妹だよ?」
「うん。れんちゃんはかわいいなあ」
なでくりなでくりこちょこちょ。くすぐったそうに身をよじるれんちゃん。でも嫌がってはいなくて、すり寄ってくる。
『てえてえ』
『ほんっとうに距離感近すぎるだろこの姉妹』
『もふもふがまとわりついてるw』
れんちゃんが慌てて子犬を抱き寄せる。子犬も本当にかわいい。
さてさてとりあえず。明日の予定は決まったね。
ペンギンを探しに行こう。
壁|w・)もふもふ情報があれば名前を呼んでもらえるらしい。
次回は、ペンギンさんを探しに行きます。
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ではでは!






