配信三十二回目:じゃくにくきゅうしょく
では早速、とれんは大きな猫を撫でます。優しく、ゆっくり。猫は特に抵抗せずに目を細めてくれます。とてもかわいい。
けれど猫はすぐに抜け出してしまいました。ちょっぴり残念ですが、大きな猫は子猫を鼻でつつきました。子猫を撫でろってことでしょうか。
子猫を撫でます。子猫はちっちゃくて、れんにとっては撫でやすい大きさです。丁寧に優しく撫でてあげて、喉のあたりをこちょこちょします。とても気持ち良さそうです。
「えへへ……かわいい……」
「おまかわ」
『おまかわ』
『おまかわ』
れんがそうやって撫でていると、もう一匹の子猫が割り込んできました。じっとこっちを見つめてきます。撫でてほしいみたいなので、遠慮無く。もふもふなでなで。
しばらくそうして猫たちを撫でていると、ぽちゃ、と水の音がしました。見ると、男の人がまた釣りを再開しています。見られていることに気付いた男の人は、笑いながら言いました。
「気にしなくていいよ。ゆっくり撫でてあげて」
「うん」
ゆっくりなでなで。れんにとって、至福の時間です。犬もいいけど、猫もかわいい。
『れんちゃんは猫派かな?』
『犬派では? ラッキーもいるし』
『あ? やんのかコラ』
『お? やってやんぞコラ』
「どっちも好きだよ。喧嘩しちゃう人は嫌いかなあ」
『すみませんでした』
『ごめんなさい』
『お前ら学習能力ないのか……?』
喧嘩はよくないのです。みんなかわいい。
不意に、男の人が何かを釣り上げました。大きい猫が反応します。お魚を回収している男の人に、猫がすり寄っていきました。
「どうするかな……」
男の人がれんを見ます。何か気にしているようですけど、何でしょうか?
『ああ、そこのプレイヤーさん。れんちゃんは別に猫が魚を食べていてもそれほど気にしないから大丈夫ですよ』
「あ、そうかい? それじゃあ……」
男の人が魚をはずして、猫の前に置きました。ぴちぴちはねる魚を猫が押さえつけて、がぶりと食べちゃいます。すぷらったです。
『れんちゃん、本当に平気なのか』
「うん……。ちょっとかわいそうだけど、私もお肉とかお魚とか食べてるから……」
むしろ大好きなので、ここで文句を言うのはずるっ子なのです。
「じゃくにくきゅうしょくだよね。ちゃんと知ってるよ」
『うん……うん?』
『弱肉給食www』
『間違ってるのに、意味合い的には間違ってない気もするw』
「あれ?」
なんだか違ってたみたいです。ちゃんとお医者さんの先生にまた聞いておきましょう。
「れんちゃん。どうせなら釣りもやってみる? お魚をあげると、猫も喜ぶよ」
「やってみたい!」
それはとても楽しそうです。れんの返事に、男の人は笑って頷きました。
釣り竿を借りて、振ります。ぽちゃん、と落ちました。
釣り竿が。
『知ってた』
『正直期待してた』
『れんちゃんがすっごい涙目になってるぞw』
「あ、あの……。ごめんなさい……」
釣り竿を落としてしまいました。どうしよう。怒られる。
ごめんなさいしましたが、男の人は何も言いません。恐る恐る顔を上げてみると、何故か笑いを堪えていました。
「いや、うん。気にしなくていいよ。うん。……期待してたし」
最後はよく聞き取れませんでした。
『確信犯かよw』
『だが許そう。特別にな!』
『ちゃんとフォローしてあげてね』
男の人は指を動かし始めます。多分メニュー画面を開いているのだと思います。すぐに池に落ちた釣り竿は消えて、男の人の手元に戻ってきました。すごく便利です。
「所有権を放棄しない限りは手元に戻せるから気にしなくていいよ、れんちゃん」
男の人が釣り竿を振ります。ぽちゃん、と遠くの方で音が聞こえました。その後すぐに、釣り竿がれんに渡されました。
「え? あの……」
「いいから。がんばって」
「うん……」
というわけで、再チャレンジです。
のんびり待ちます。ゆっくり待ちます。桟橋に座ると、シロが背もたれになってくれました。ぽすんとシロにもたれかかります。ふわもふです。膝の上にはクロが座ります。ふわもふです。さらに子猫が側を陣取りました。かわいいです。
「俺、ここで釣りしててよかった……」
『処す? 処す?』
『殺す』
『こえーよw』
『怒るのはとても分かるが、れんちゃんがかわいいのでどうでもいい』
不意に、竿が引かれました。ちょっと力が強いです。れんが慌てると、男の人が手伝おうとしてくれて、けれどどうしてか止めちゃいました。
代わりに、れんの服を、シロが噛みました。
「う?」
「あー……」
『察した』
シロが、おもいっきりれんを持ち上げて、ぽーんとれんは空に放り投げられました。
「…………」
じっとりとした目でれんがシロを睨んでいます。シロはしょんぼり俯いています。その横では、猫たちがれんの釣り上げたお魚に大はしゃぎです。
『珍しくれんちゃんが怒ってるなw』
『まあさすがにあれはなw』
『ぷりぷりれんちゃんもしょんぼりシロもかわいいなあ!』
あまり怒っていても仕方ないのは分かってます。助けてくれようとしたのも分かっています。まあ、ちょっぴり、怖かったですけど。
「もう……。許してあげる」
シロを抱きしめ、もふもふします。シロは嬉しそうにれんのほっぺたを舐めてきました。
シロをもふもふしていると、男の人が話しかけてきました。
「あー……。ちょっといいかい?」
「うん」
「れんちゃんが釣った魚、よければ調理しようか?」
それはつまり、今すぐ食べられるということ。れんはすぐに頷きました。
壁|w・)犬派と猫派の仁義なき戦い……。ちなみに私は狐派です。
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ではでは!






