寝起き配信
れんちゃんはこっちに向き直ると、ふんわり笑って頭を下げた。
「こんにちは。れんです。もふもふが、好きです」
ところで、とれんちゃんは私をじっと見つめてきた。
「何の配信?」
「いつものやつ。視聴者さんも同じです。れんちゃんの寝顔を撮りました」
私は逃げも隠れもしない女。言い訳のしようがない、というよりもあとで記録を見られたらどのみちばれるので、素直に謝る。もちろん、もうしないとは口が裂けても言いません。
私はれんちゃんを自慢したいからね!
れんちゃんは、予想と違って別に怒らなかった。そうなんだ、と頷いて、それだけ。これには私の方が拍子抜けだ。いや、怒られたいわけじゃないんだけどね?
「怒らないの?」
「え? なにが?」
「あ、いや……。別に……」
どうやられんちゃんの怒りポイントではなかったみたい。一安心だけど、いいのかな、これは。
そう思ってたら、れんちゃんがぽつりと呟いた。
「だって、もうテレビで流れてるし。今更だよ」
「あー……」
うん。ちょっと、否定できない。
怒ってはないけど、不愉快ってわけでもないってところかな?
スマホを置いて、れんちゃんを抱き寄せて、撫でる。
「ごめんね」
「んー……。もっと撫でて」
「うん」
甘えてくるれんちゃんをひたすらに甘やかした。
たっぷり十分間、なでなでしました。
『てえてえ』
『ほとんど無言だったけど、それでも良かった』
『れんちゃんは本当にお姉ちゃんが好きなんだな』
「うん。大好き」
ぎゅっと私に抱きついてくるれんちゃん。かわいい。すき。
ちなみにれんちゃんにもイヤホンを渡してる。片耳だけだけどね。もともとそのつもりだったから、コードには余裕のあるやつを選んでる。聞きたがると思ったからね。
『迷いのない即答。良かったな、ミレイ』
「嬉しすぎて死にそうです」
『迷いのない頭のおかしい発言、いつも通りだな、ミレイ』
「うるさいよ」
まあそれはそれとして、この後はどうしようか。れんちゃんの病室を紹介しようと思っただけで、何かをやりたいってわけでもない。むしろ何もできないし。
「病室の紹介も、紹介するものないし……」
『まあこんな真っ暗な部屋で、光が全てアウトってなると、なんもないだろうな』
『テレビもダメなら、ゲームもほとんどアウトってことだしね。れんちゃんは普段何して過ごしてんの?』
「んー?」
れんちゃんはベッドから抜け出すと、壁際の棚に向かう。ぬいぐるみの棚と並んでもう一つある棚。そこはれんちゃんのおもちゃ箱だ。ん? おもちゃ棚かな? ただまあ、おもちゃ棚っていうよりも、半分以上は本なんだけどね。
さすがにコードの長さが足りないので、私もれんちゃんと一緒に向かいます。
「本を読んだりしてるよ」
『本? 絵本とか』
「えっとね。らいとのべる?」
『まじかよ』
『れんちゃんラノベ読むのか!』
『ちな、お気に入りは?』
「ちな……? えっと、この、女の子がいろんな国を見て回るお話」
れんちゃんのお気に入りだ。何度も読んでるらしくて、ちょっとだけ他の本よりも傷んでしまってる。れんちゃんは気にしないみたいだけど。
『こんなに暗い部屋で読めるの?』
「うん。読めるよ?」
「ちなみに私は読めません」
多分だけど、この暗さに慣れたというか、適応したというか。それがいいことなのか悪いことなのかは分からないけど、ただこの病気が治ったら少し苦労しそうだなとは思う。
『こっちから見える映像がほとんど白黒なんだけど、れんちゃんの髪って……』
ん? 今更そんな質問がくるとは思わなかった。
「れんちゃんの見た目はゲームと同じ。髪色も含めてね。真っ白だよ」
『あれってキャラメイクの時に変更したわけじゃないのか』
『元からあの色なのか……そうなのか……』
『ちょっと痛ましい……』
そういう見方もある、かな? ただれんちゃんは髪の色についてはあまり気にしてないみたいだ。
「んー……。えっとね。他の人と違うのは、ちょっとだけ気になったよ」
「え、そうなの?」
『やっぱりそうだよなあ』
『自分だけ真っ白だもんな』
『そりゃ気になるわ』
あれ? でも、気にしてる様子なんてなかったような……。
「おねえちゃんがね、白くてきれいな髪だねって言ってくれたの。だからわたしも、この髪の色が好き」
『ミレイさりげなくファインプレーしてる』
『お姉ちゃんが好きだから好きなのか』
『心が苦しいっす……』
うん。全然知らなかった。えっと、どうしよう、ちょっと反応に困る。
『ミレイの反応がないぞ』
『照れてると予想』
『多分顔真っ赤なミレイちゃんやーい』
「う、うるさいよ……」
『うるさいにキレがない』
ほっとけ。
もうまったくこの子はもう! ぎゅっとしちゃえ!
「おねえちゃん? どうしたの?」
「なんでもないです。なんでもないのでぎゅっとします」
「意味が分からないよ?」
いいんだよ、分からなくて。
三分ほど抱きしめて、れんちゃん分を補給。生き返るわあ。
「お姉ちゃんはれんちゃん分が足りなくなると行動できないのです」
「え? そうなの? えっと、もうちょっとぎゅっとしてもいいよ」
「れんちゃんはかわいいなあ!」
「うるさいのはや」
「あ、はい。すみません」
『れんちゃんが冷静すぎるw』
『いつものことなんやなってw』
『ゲーム内とほとんどかわらんなw』
私もれんちゃんも完全に素だからね。
壁|w・)ちょっとだけお部屋紹介。
次回も病室からと、そして雪遊び。
あと、ご心配ありがとうございます。無理はしていないのでご安心ください。
さすがに仕事は犠牲にしませんので……!
面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、ブックマーク登録や、下の☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。
書く意欲に繋がりますので、是非是非お願いします。
ではでは!






