配信三十回目:白いふわもこキツネさん
「別の意味で緊張してきた」
『おなじく』
『ここのキツネは警戒心が強いのかな……?』
れんちゃんはなおも手招きしていて、しばらくそれが続いて……。
突然、キツネの奥の茂みから何かが飛び出してきた。
「んん!?」
『なんだ、敵か!?』
『ミレイ体を張ってれんちゃんを守れお前はどうなってもいいから!』
『さりげなくひどいw』
本当にね!? いやもちろんそれでいいんだけど!
でも私が動くよりも前に、飛び出してきたものはれんちゃんの前で立ち止まった。尻尾をふりふりしているのは、真っ白なキツネ。れんちゃんは白い子に好かれる能力でもあるのかな?
「わあ……」
白いキツネは、もふもふだった。ふわふわだった。いや違う。もっふもふでふっわふわ。なにこの毛玉。
『あれはまさか!』
『知っているのかまさかニキ!』
『多分モデルはホッキョクギツネだな! 寒いところに住むキツネだからか他の種類よりももふもふだ! あと白い!』
『本当に知ってた……』
ほほう。ホッキョクギツネ。あとで調べてみようかな。
白いキツネは尻尾をふりふりしながられんちゃんに近づいて行く。この子は警戒心のけの字もないらしい。迷いなくれんちゃんの腕の中に飛び込んだ。
「わわ……」
慌てながらもれんちゃんは優しく受け止めて、何故か白いキツネと見つめ合った。じっと。じぃっと。そしてこれまた何故か、ぎゅっと抱きしめた。ぎゅーっと。
「かわいい……!」
うんうん。やっぱり懐いてくれる子はかわいいよね。分かるよ。とても分かる。だからお姉ちゃんにも抱かせてほしいなあ。もふもふしたいなあ……。
その白いキツネを皮切りに、茂みからたくさんのキツネが出てきた。おっかなびっくりといった様子で、たくさんのキツネが少しずつれんちゃんに近づいて行く。
れんちゃんは気付いてるのかな? 白いキツネに夢中だけど。白いキツネはれんちゃんをぺろぺろ舐めて甘えてる。ちょっとどころかかなり羨ましいです。
あ、れんちゃんが気付いた。すっごく顔が輝いてる。笑顔が眩しい。なんて嬉しそうな顔なの。
おお!? キツネが一斉にれんちゃんに飛びかかった!
「私の妹がキツネさんに気に入られた件について」
『めっちゃ懐かれてるwww』
『もふもふ祭りや!』
『相変わらずれんちゃんはモンスたらしだなw』
「たらし。正しいかも……」
あっちもぺろこっちもぺろぺろ、尻尾でもふもふ。なんだこれ。かわいい。
「問題があるとすれば、キツネに埋もれてれんちゃんが見えなくなったことだね!」
『問題しかねえw』
『助けてやれよw』
「いやあ、すごく楽しそうな笑い声が聞こえるから……」
『この人でなし!』
「なんで!?」
キツネの山かられんちゃんの楽しそうな笑い声が聞こえるからきっと大丈夫。キツネの山……。キツネって、なんだっけ。
私ももふもふしたいな。一匹こないかな?
じっとキツネたちを見つめていたら、一匹だけこっちを振り向いた。とことことこっちに歩いてきて、私の目の前で立ち止まった。黒いキツネさんだ。これはこれでかわいい。
私が手を差し出すと、ぴょんと飛び跳ねて私の首にまとわりついてきた。
「おおー……。尻尾もふもふ……」
『ミレイ! この裏切り者!』
『久しぶりにキレちまったよ……』
『ミレイちゃんのばかー!』
「ええ……。なんでこんなに怒られてるの私」
真面目に意味が分からない。一匹ぐらいなら、誰でもテイムできるはずなんだけど。
黒いキツネさんの尻尾をもふもふしていたら、ずしん、と地面がわずかに揺れた。その揺れは、少しずつ近くなってる。これは、やっぱり……。
ぬっと、奥の方から出てきたのは、大きなキツネだった。九本の尾を持つ巨大キツネ。間違い無く、九尾のキツネだ。
うん。いや待ってほしい。なんでボスが下りてきてるの!? 頂上から動かないはずでは!?
『九尾キター!』
『おいおいおい、なんでボスが下りてきてんだよ』
『この二人はほんっとうにイレギュラーばかり遭遇するなw』
本当に。こっちは好きでやってるわけじゃないけど。
九尾の様子を注意深く見つめていると、九尾はれんちゃんの方を見た。れんちゃんもじっと九尾を見つめている。いつの間にか、他のキツネたちはれんちゃんと九尾の様子を見守ってるみたいだ。
じっと見つめる。見つめ合う。しばらく見つめ合って、ようやくれんちゃんが動いた。
「こんにちは」
にっこりにこにこの挨拶。九尾はそれでも動かなかったけど、しばらくしてから九尾の周りに火の玉が浮かび上がった。確か、狐火、というスキルだったはず。
正真正銘の、攻撃スキルだ。
『おい、さすがにまずいんじゃ……』
『どう見てもれんちゃんを攻撃しようとしてないか!?』
『ミレイやっちまえ!』
私も思わず間に入りそうになったけど、もう少し様子を見たい。狐火は確かに攻撃スキルだけど、でもそれはあくまで、このフィールドのボスが使う攻撃スキル。つまり何が言いたいかと言えば、さほどダメージが入るわけじゃない。
「しかもれんちゃんはもこもこれんちゃんだ」
『いや何の関係が?』
『どうしたミレイ。大丈夫か? 頭』
「うるさいよ」
失礼な人だね本当に。
「そうじゃなくて、れんちゃんはアリスの服を装備してるってこと」
『あー……』
『なるほど、服とはいえ、ある程度の性能もあるのか』
『もちろんあるよ。市販の鎧よりも防御力高いよ!』
「だよね。……物理的には納得できないけど」
『それは言わないお約束』
いや、まあ、分かってるけどね。多分魔法的な理由だ。きっとそうだ。
さて。九尾もそこまで本気で攻撃の意志はないみたいで、狐火はゆっくりとれんちゃんに近づいて行く。なんだろう、どんな意図があるのかな。
そして、れんちゃんは近くまできた狐火を、不思議そうに見つめながら右手で触れた。
壁|w・)ホッキョクギツネが気になった人は調べてみましょう。
すごくかわいいのだ……!
次回は、敵意。シリアスじゃないよ!
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ではでは!






