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テイマー姉妹のもふもふ配信 ~もふもふをもふもふする最愛の妹がとってもかわいいので配信で自慢してみます~  作者: 龍翠


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配信二十一回目:がおー!

「さてさてれんちゃん! エサの貯蓄は十分かな!?」

「えっとね。百個セットが百個あるよ!」

「なんて?」


 さすがにそこまで持ってるとは思わなかった。アリスも目を丸くしてるし。いや、多すぎでしょ……。


「ディアもラッキーもみんなも、ちょっとずつ好みが違うの。だからいろいろ配合を変えてちょっとずつ増やしてたらこうなったの」

「え、なにそれ。初耳なんだけど」


 アリスを見る。首を振られた。どうやらアリスも、エサの好みなんてことは知らなかったらしい。


「エサに種類なんてあるの?」


 アリスに聞いてみると、少し考えてから答えてくれた。


「あるにはある、かな……。品質、という項目があるよ。ただ、品質でテイムの確率は変わらないから、何のためのものか誰も知らなかったんだけど……。味、違ったんだあれ……」

「むしろ味あったのか、あれ……」


 れんちゃんがみんなに配ってる時、モンスターたちがとても美味しそうに食べていたからちょっとかじったことあるけど、まあ人間が食べられるものじゃなかった。だからこんなものと思うことにしたんだけど……。さすがというか、よく見てるなあ……。


「うん。気を取り直して、行こっか!」


 深く考えても仕方ないからね!




 このゲームのストーリーのダンジョンは、基本的には何らかのイベントがある部屋が十部屋と、最後のボス部屋の全十一部屋になっている。これに関しては初めから終わりまで一貫していて、例外はこの最終ダンジョンのみ。十部屋目とボス部屋が入れ替わってるらしい。


 昔からのゲーマーさんにとっては物足りないらしいけど、これは仕事をしている社会人の人に配慮してそうなってるらしい。あまりに長いダンジョンだと、いつまでたってもクリアできずに詰まるかもしれないってことだね。

 適正レベルなら一時間前後がクリアの目安だと公式でも書かれていた。

 というわけで、一部屋目です。


「最終ダンジョンは出てくるモンスターはランダム要素なしの固定のみだよ。で、一部屋目は……」

「オルトロス、と。……オルトロスってタコじゃなかったっけ?」

「ミレイちゃん、お父さんが古いゲーム持ってるでしょ。もしくはリメイク」

「なんで知ってるの?」


 確かにお父さんが古い家庭用ゲームを持ってて、少し遊ばせてもらったことあるけど。

 オルトロス、と赤い文字で表示されたモンスターは、二つの頭を持つ犬だった。真っ黒な犬で、とても大きい。ディアより一回りは大きいと思う。二つの頭は、先頭にいるれんちゃんを睨み付けていた。


「むむ!」


 れんちゃんがなんか反応した! 両手を上げて、叫んだ! がおー! 何がしたいのこの子。


「モンスターにも簡単なAIが積まれてるって聞いたけど、ほんとなんだね。オルトロスが微妙に戸惑ってる……」

「ほんとだ……」


 オルトロスは敵意が薄くなって、ちょっと困ったような様子。れんちゃんをじっと見つめて、そして助けを求めるかのように私たちを見た。何故。


「これで私たちが動けば、戦闘開始だね。動かないけど」

「残念だったねオルちゃん、がんばってれんちゃんと遊んでください」


 敵意がないと襲われない、はここでも正確に反映されてるみたいで、オルトロス改めオルちゃんは身動きできずに止まっていた。じっと、れんちゃんを見つめている。

 対するれんちゃんは、モンスターを呼び出した!


「ラッキーおいでー」


 ぽてん、とれんちゃんの頭の上に落ちてきたのはいつもの子犬のラッキー。ラッキーはオルちゃんを見上げて、首を傾げて、そして何もせずにれんちゃんに抱かれた。

 れんちゃんはラッキーの前足を持ち上げて、


「がおー!」

「…………」


 オルちゃんが涙目になってる。なんだこの子、かわいいかよ。


「がおー!」


 三度目の咆哮。……咆哮? いいや咆哮で。

 今度は、オルトロスも反応した。


「ガアアァァァ!」

「ぴゃ!」


 れんちゃんが目をまん丸にして驚いてる。そして、どうなるのかと思えば、


「かっこいい!」


 まじかよれんちゃん。さすがだねれんちゃん。


「わあ、おっきいけどもふもふだ。ディアと同じくらい? もっと? もふもふしてる……。にくきゅうさわりたい。ぷにぷにしたい! 足持ち上げて! そうそうありがとー! おー、ぷにぷにだー!」


 なんだこれ。いつの間にかオルちゃんは言われるがままなんだけど。オルちゃん色々諦めてない? 大丈夫?


「オルトロスってね、三部で出てくるボスなの」

「へえ?」

「というかね、ここのダンジョンって今までのボスが相応に調整されて出てくるダンジョンなの」

「昔のアクションゲームのボスラッシュだね」

「そんな感じ」


 ということは、アリスはオルトロスとも戦ったことがあるってことだね。普通に戦うと強そうだ。私が苦戦中の二部のラスボスより強いのかもしれない。


「それはもう、苦労したよ。結局強いフレさんに頼ったしね」

「そっか。……今、すごく骨抜きにされてるけど」

「ね」


 いつの間にかオルトロスがお腹を見せてる。そのお腹をれんちゃんがなでなでしながら、エサを上げてる。なんだこれ。


「泣きそう」


 そう呟いたアリスの肩を、私はぽんと叩くしかなかった。




 なんということでしょう。開始五分で仲間が増えました。双頭の犬、オルトロスです。れんちゃんを背中に乗せてご満悦です。アリスの目は死んだ。


「ドラゴンにたどり着く頃には仲間がそれだけ増えそう。なるほどまさに総力戦! ストーリーの最後にふさわしい!」

「確かにドラゴン戦で、一定時間ごとに仲間や以前の敵がかけつけてくれるって聞いてるけどね? 少なくともオルトロスはいなかったと思うなあ」

「細かいことは気にしちゃだめです」


 これもある意味総力戦。うん、間違い無い。

 オルちゃんの部屋を出て、それなりに長い通路を歩く。このダンジョンは通路や部屋の隅を溶岩が流れていて、独特な雰囲気がある。ちなみにこの溶岩は見た目だけで、触れることはできない。透明な床が上にあるからね。

 さて、二部屋目だ。れんちゃんはオルちゃんの上で、次はどんな子かなとわくわくしてる。

 そして部屋に入った瞬間、アリスが消えた。


「え」


 びっくりした。本当に、なんの前触れもなく消えた。なんだろう、そういう能力を持ったモンスター? どんな能力だよと言いたいけど。

 部屋の中へと視線を移せば、オルちゃんが丸くなって欠伸をしていた。あれ?


「れんちゃん? ここのモンスター、もうテイムしちゃったの?」

「んーん。オルちゃんが寛ぎ始めちゃった。安全なんだと思う」


 どういうことだろう。ふむ、こういう時は視聴者さんに聞こう。

 というわけで、コメントを可視化して、と。


「どもども。アリスが消えちゃったんだけど、どうなったのこれ? 今時珍しい回線落ち?」


『オルちゃん(笑)に突っ込みたいけど、違うぞ』

『十部屋目を除く偶数部屋はイベント。三分から五分程度で戻ってくるはず』

『お手伝いはイベントを見れないので、待ちぼうけです』


「あー、そっか。イベントか」


 要所要所でイベントを挟むと。最終ダンジョンだからそれも当たり前か。戦闘する部屋が減るからいいことかもしれない。


「ありがとう。じゃあ、不可視化します」


『まって』

『ちょっとそこのオルちゃんについて詳しく!』


「終わったらね」


 ぽちっとな。

 さて、正直配信するべきじゃなかったとは思うけど、一応山下さんには許可をもらったし、きっとどうにかするでしょう。私もオルちゃんを撫でようかな!


壁|w・)がおー!


次回はボス戦! おそらく、本作最初で最後の戦闘回です。

(読み返しながら)戦闘回……? ……いや、うん。戦闘回ってことで。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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― 新着の感想 ―
がおー! 百×百=千(初回)
[一言] m(//∇//)mがお~
[一言] >>昔からのゲーマーさんにとっては物足りないらしいけど、これは仕事をしている社会人の人に配慮してそうなってるらしい。あまりに長いダンジョンだと、いつまでたってもクリアできずに詰まるかもしれな…
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