配信九回目:空の上で
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さて、空の旅を始めたれんですが。
「たかーい! こわーい! あははははー!」
テンションうなぎ登りの天井知らず。ひたすらに笑っています。これでもかと笑っています。あっちこっちを見て笑顔を振りまいてます。
『すごい景色!』
『やばいなこれ。楽しそう。でも怖そう』
『れんちゃんのテンションが完全にぶっ壊れてるwww』
だってとっても楽しいですから。
「みゃー!」
『何故猫w』
「わんわん!」
『落ち着けれんちゃんwww』
『気持ちは分かるがw』
楽しい。とても楽しいです。れんは今、風になっているのです!
「たーのしぃー!」
『れんちゃんwww』
『ここまでテンションの上がったれんちゃんは初めてではw』
『れんちゃんの病気を知ってると、涙が出そうになる』
『おいばかやめろ。触れないようにしてるんだから』
「生きてるだけで嬉しいっておねえちゃんは言ってくれるのー!」
『ミレイ……』
『いや、うん。よくネタにするけどさ。やっぱりいいお姉ちゃんだと思うよ』
『本当にな』
それはれんも知っています。誰よりも、両親よりも、れんが一番知っているのです。
「おねえちゃんはねー! わたしの、自慢の、大好きなおねえちゃんなのー!」
『そっか』
『どうしよう。ちょっと泣きそう』
『本当に、いい姉妹だ』
「でもたまに気持ち悪いのー!」
『れんちゃんwww』
『もう色々と台無しだよwww』
『草w』
『草に草を定期』
『ちょっとは反省しろミレイw』
空の旅を楽しみながら、れんはコメントさんたちと楽しくおしゃべりするのでした。
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そして私は膝をついていましたとさ。
「きもちわるい……きもちわるいて……」
「いや、うん……。その、何て言えばいいか……。ほら、お姉ちゃんが大好きって言ってくれてたじゃないか」
「そうだけど……。ぞうだげどぉ」
「ガチ泣きじゃないか……」
れんちゃんの言葉の前半がなんかもうとっても嬉しくて涙腺にきて、そして後半で落とされてもう感情がぐちゃぐちゃだよお!
「ひぐ……。あ、そうだ、フレンドになろう……。たまにでいいからドラゴンに乗せてあげて……」
「あ、うん……。それぐらいでよければ」
泣きながらフレンド登録。フレンドリストにエドガーという名前が登録された。今度は私も乗せてもらいたいところだ。ということで。
「エドガーさん。次の機会でいいので私も乗りたい」
「ん? 別に今でもいいよ?」
「そろそろ配信を終える時間なの。配信が終わったらぱぱっとお片付けをして、れんちゃんが落ちるのを見届けないといけないからね。時間超過は病院に怒られるので」
「病院……」
エドガーさんが神妙な面持ちになる。そんな顔をしないでほしいんだけどね。なにせ、れんちゃん自身がそれほど気にしてないから。
「その、確認だけどさ。れんちゃんって、光そのものに過敏に反応するっていう……」
「お。テレビのまとめでも見たの? 名前が大島だったられんちゃんだよ。よければ寄付もよろしく」
「もちろん。必ず」
「あ、いや。言っておいてなんだけど、無理しない範囲でいいので……」
そんなに即答されるとは思わなかった。助かるのは助かるけど、無理に出させたと思われると、私も心外だしれんちゃんも悲しむ。それだけはやめてほしい。
「うん。分かってるよ。れんちゃんがテレビで言ってたぐらいだしね。……戻ってきたよ」
あ、はやいかも。
エドガーさんに言われて空を見ると、真っ直ぐにドラゴンが落ちてくるところだった。垂直に。怖くないかなあれ!?
そんな私の心配なんて知らないとばかりに聞こえてきたのは、
「あはははは!」
れんちゃんの楽しそうな笑い声。うん。楽しそうで何よりです。
ドラゴンは地面の直前に一瞬だけ浮かぶと、ゆっくりと着地した。
「ただいまー!」
うわあ、まさに満面の笑顔。とても、とっても、機嫌がよさそうだ。
「おかえりれんちゃん。楽しかった?」
「楽しかった! びゅーんが空でぐわーなの!」
「なるほど、まるでわからん」
まあそれでも、すごく楽しかったというのはよく分かった。私としても、すごく嬉しい。でも少し心配なのは……。
「おねえちゃん、おねえちゃん」
ドラゴンから下りたれんちゃんが私の元に駆け寄ってきて、私の服をつまむ。とても、とても嫌な予感がする。
「わたしも、ドラゴンと友達になりたい!」
ですよね、そうきますよねー! エドガーさんまで表情が引きつってるじゃないか! やめなさい、その、俺やらかしちゃいましたか、みたいな顔やめなさい!
壁|w・)空中散歩。……散歩? うん。散歩。
今日で連続更新はストップの予定です。
さすがにストックがね……。
でも今日はまだ夕方と夜間に更新するですよ……!
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ではでは。






