配信九回目:どらごん
その後もれんちゃんはいろんな人のモンスターと触れ合った。特にれんちゃんがあえて最後に残していた人、そのテイムモンスターには興味津々だったようだ。
「どら! ごん! だー!」
緑色の、いかにもなファンタジーのドラゴン。正直私も気になってた。
『おいおい。ドラゴンって、こいつ前線組だろ』
『現時点でドラゴンは最新のダンジョンの最深部限定だろ』
『なんで都合良くそんなやつがいるんだよ』
視聴者さんたちも困惑してる。私も困惑してる。ここに集まる人は戦闘なんてどうでもいい、テイムモンスターを愛でたい人がほとんどだ。こんな、いわゆるガチ勢が来るような場所じゃないはずなんだけど。
「いや、その、なんだ。俺はれんちゃんの配信を最初から見てたんだけどさ」
「わあ! ありがとうございます! じゃあ、もふもふ好き!?」
「いや、もふもふもだけど、どっちかというとそれに癒やされる二人を見るのが楽しみだったよ」
『わかる』
『むしろここにいるほぼ全員がそうだと思う』
私もれんちゃんを自慢したいがための配信だからね。満足な感想です。れんちゃんは首を傾げてたけど、れんちゃんはそのままでいてね。
「でさ、俺のこいつを、是非ともれんちゃんに自慢したくて。なんせ、俺のフレはみんなこいつを戦闘力でしか見ないからさ……」
『あっ(察し)』
『ああ、うん。その、落ち込むな』
『ペット自慢には不向きな連中ばっかりだもんなあ……』
前線組と呼ばれる人はそれはもう戦闘大好きな変態さんたちだ。バトルジャンキーばっかりだ。ドラゴンを見て思うのは、多分かっこいいとかそんなことより、強そう、になると思う。
「自慢したくて、そろそろかなと思って、待機してました。すみません」
「そうなんだ! 会わせてくれてありがとうございます! あのね、触ってもいい?」
「うん。もちろん」
れんちゃんがそれはもう嬉しそうにドラゴンに触る。ぺたぺたなでなで。そんなにいいものなのかな? 私はふわふわな子の方が好きだから、よく分からない。
「れんちゃんはドラゴンも好きなんだね……。生き物が好きらしいから分からないでもないけど、そこまでの反応はお姉ちゃんは予想外です」
「だってドラゴンだよ! かっこいいんだよ! ぐわーって!」
「ぐわーとは」
『ぐわー』
『意味が分からないけど大好きは分かった』
「だってだって! 男の子の憧れだよ!」
「うん。そうだね。でもれんちゃんは女の子だね」
「男の子も女の子も関係ないの!」
「あ、はい。……男の子のくだりは必要だったの……?」
『興奮しすぎて勢いで喋ってるんだろうなあw』
『これはこれで、いい』
『まあドラゴンは初めて見ただろうしなw』
なるほど、それもあるのか。もふもふはディアやラッキーで堪能してるものね。初めて見るドラゴンに興奮する、というのは分かるかもしれない。
「ちなみに、背中に乗せてもらえるよ。飛べる」
テイマーの青年の発言に、れんちゃんの目が輝いた。すごいすごいと大はしゃぎだ。確かにプレイヤーを乗せて飛べるモンスターなんて聞いたことがない。このドラゴンが初めてなのかも。
「乗ってみる?」
青年の問いに、れんちゃんはすぐにぶんぶんと首を縦に振った。
というわけで、ファトスの外に来ました。
青年がドラゴンに専用の鞍を取り付けて、れんちゃんを乗せてくれた。れんちゃんのわくわくが私にまで伝わってきそうだ。
『いいなあ、俺も乗りたい』
『ドラゴンのテイムってやっぱり難しいのか?』
ああ、それはちょっと気になる。れんちゃんも気になってるだろうし、聞いてみようかな。
「ドラゴンのテイムって難しいですか?」
というわけで聞いてみました。
「いや、ごめん、実は分からないんだ」
「分からない?」
「うん。たまたま見かけて、たまたま持っていたエサを上げたら一発でテイムしちゃって」
『なんという豪運』
『前線組の私、ドラゴンのテイムに失敗すること千回以上』
『あー……。どんまい……』
『いじれよぉ! 慰められると泣いちゃうじゃん!』
まあ、つまりはそれだけ確率が低いってことだね。千回やってもテイムできないってよっぽどだと思う。よくやるよ。
「れんちゃん。騎乗スキルは持ってるかい?」
「持ってる! 山下さんに勧められたの!」
「確かゲームマスターの一人だっけ。いい選択だね」
まったくだ。騎乗スキルがなかったら、そもそもディアに乗れなかったと思うし、さすがは運営の人だね。片手剣なんて取らなくてよかったと今なら思う。
「それじゃあ、補正がかかるから落ちることはないから安心していいよ」
「なかったら落ちるの?」
「落ちる。落ちた」
『経験談かw』
『すっごく怖そう……』
『想像しただけで、ちょっと、むずむずする』
「あれだね、いわゆる玉ひゅんだね」
『女の子が言っていい言葉じゃないからな!?』
それは失礼。
さてそんな話をしている間に、あちらの準備は終わったみたいだ。青年がこちらに駆け寄ってくる。……あ、出発前にやることが一つ。
「れんちゃん!」
「なあに?」
「光球、れんちゃんを追うようにしておくから! 楽しんでくるんだよ!」
「はあい!」
『おお! 助かる!』
『空からの景色とか初めてじゃないか!?』
『これは良い判断。ミレイやるな!』
「むしろ私が見たいだけだよ。あとで見るから」
『納得したw』
お、ドラゴンが走り始めた。れんちゃんいてらー!
壁|w・)ドラゴン? いいえ、どらごん。
7000ポイント突破のお礼の夜間更新でした。
ありがとうございます、なのです。
明日も夜間更新するですよ。
まだ、あと一回なら、いける……!
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