配信七回目:いろいろあるけど姉が好き
れんちゃんからメッセージが届いた。フィールドに入らずに待っててね、だってさ。ははは、胃が痛い……!
了解、と返事をしてからしばらくして、ファトスの門の前で待っていた私の元にれんちゃんが走ってきた。なんかもう、すごい笑顔。まさにいたずらっ子の笑顔。純粋な笑顔。汚れた私にはきっついよ……。
「おねえちゃん、お待たせ!」
「うん……。あ、いや、待ってないよ。それで、行っていいの?」
「あ、待ってね」
れんちゃんがささっと配信を始める。おお、一回で慣れたのか。
ん……?
『反応』
反応……? あ。
れんちゃんを見る。こちらをわくわくしながら見ていた。そうだよね私から見たら初めてのはずだもんね!
「す、すごいねれんちゃん! 自分でできるようになったんだ!」
「うん! うん! すごい? すごい?」
「すごい! れんちゃんすごいなあ!」
「えへへ……」
照れ照れれんちゃんとてもかわいい。抱きしめたい。でも配信中なので自重します。
というわけで、いよいよれんちゃんのホームへ。れんちゃんと一緒に、転移します。そうして広がるれんちゃんの草原。その、目の前に、いた。
ライオンやトラたち、そして大きな白虎。
よし。よし。やるぞ!
「わ、わあすごい! ライオンとトラに白虎まで……! れんちゃんいつの間に友達になってきたの? びっくりしちゃった!」
「ふうん。おねえちゃん、配信見てたんだね」
「!?」
即バレである。まじかよ。
『草』
『通り越して大草原』
『むしろサバンナ』
『トラだけにw』
『何言ってんのお前』
こいつら他人事だと思って……!
思わずコメントを睨み付けていると、れんちゃんも私のことを睨んでいるのに気が付いた。怖いです。
「ふうん。ふうん。そうなんだ。へえ、そうなんだ」
「あ、あの、れんちゃん……?」
「ふーん。ふーん。へえ。そう、なんだあ」
「すみませんでした!」
秘技、土下座! 言い訳なんてそれこそできない! 怖い! れんちゃんがすごく怖い!
返事がないので恐る恐る顔を上げると、れんちゃんは頬をぷっくり膨らませていた。
「おねえちゃんなんて、だいっきらい!」
「ぐはあ!」
れ、れんちゃんに嫌われた……嫌われた……。ぐすん……。
・・・・・
膝を突いたお姉ちゃんはそのままに、れんは白虎の方に向かいました。頭にはいつものようにラッキーが居座っています。
白虎の元にたどり着いて、その大きな体に抱きつきます。ふわふわ。
れんの苛立ちが分かるのか、ウルフたちも含めてみんなが集まってきます。れんのことを代わる代わるなめていきます。それだけで、少しだけ落ち着きを取り戻しました。
ちょっと、言い過ぎたかもしれません。
『れんちゃん』
ふとコメントが目に入りました。今回はれんが配信を開始したので、光球もれんについてきたようです。
『ミレイちゃんはミレイちゃんなりにとっても悩んでたよ。れんちゃんのことが大事だから、すごく悩んでたの』
「うん……」
『れんちゃんの気持ちも分かるが、あまり怒らないでやってくれ』
『できればさ。二人が仲良くしてるのを見たい』
『けんかをしてるのを見ると、ちょっと悲しい』
「うん……」
本当に、いい人たちだと思います。
れんだって、分かっています。ちょっとめちゃくちゃ言った気がします。勝手に配信しちゃったのはれんなのです。本来なられんが怒られてもおかしくないのです。
いわゆる逆ギレというやつです。だめな子です。
「謝ってくる……」
れんがそう言ってお姉ちゃんの方へと向かうと、
『えらい』
『自分から謝れてえらい』
『がんばれれんちゃん、俺たちがついてるぞ!』
そんなコメントが流れて、れんはくすりと笑いました。
お姉ちゃんの前に立ちます。お姉ちゃんが顔を上げます。
お姉ちゃんの、とても悲しそうな顔。意を決して、れんは口を開きました。
「ごめんね、おねえちゃん」
「れんちゃん?」
「ちょっとね、いらいらしちゃってたの。だから、ごめんなさい」
お姉ちゃんは目を何度かぱちぱちしていましたが、
「れんちゃん、許してくれるの?」
「うん。だからね、あのね、わたしが勝手に配信しちゃったのも、許してほしいな……?」
「許すよ! 全部許しちゃう! ごめんねれんちゃんありがとうれんちゃん!」
「わぷ」
お姉ちゃんが抱きついてきました。なんだかいつもより力が強い気がします。ぎゅーっとされています。ちょっとだけ苦しいですけど、でも悪い気はしないのです。
『うんうん。やっぱりこうでないとね』
『てえてえに似た何か』
とても、調子の良いコメントさんたちです。ちょっとだけ怒るべきでしょうか。そんなことを考えていたら、お姉ちゃんの呟きが聞こえてきました。
「はあ、れんちゃん……んふふ……」
「うあ」
『こわいwww』
『これはwww』
『おいおい、死んだわあいつ』
おねえちゃんの肩を叩きます。おねえちゃんは体を起こして、れんの顔をまじまじと見つめてきます。そんなお姉ちゃんに、れんはにっこり笑顔でいいました。
「きもちわるい」
「…………」
固まるお姉ちゃん。れんはふんと鼻を鳴らして、もふもふに戻るのでした。
『そういうところやぞ』
『あーあ。せっかくフォローしてやったのに』
『これはもう自業自得』
どうやらコメントさんたちも今回は賛成のようです。
れんはくすくすと小さく笑いながらお姉ちゃんへと振り返ります。おねえちゃんは呆然とこちらを見つめていましたが、
「おねえちゃん、もふもふする? この子、さらさらだよ」
白虎を撫でながら言います。ふらふらと近づいてきたおねえちゃんに苦笑しながら、れんはもふもふさらさらを堪能するのでした。
壁|w・)配信七回目、終了!
次は掲示板回なのです。
6000ポイント突破のお礼?の夜間更新でした。
ありがとうございます!
次は7000ポイントで追加更新するですよ。
……すでにこえてるんですけどね……。
誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。






