配信四十一回目:ラッコと一緒
「うん。いつものことだね」
『最早この程度じゃ驚きもしない』
『むしろれんちゃんなら、ここから百匹テイムをしてくれると信じてる』
『百匹テイムとかさすがにしないだろwww』
『甘いな初見さん、れんちゃんはウルフも猫又も百匹テイム済みだ』
『あほくさ。嘘ならもっとましな嘘をつけよ』
『…………』
『……まじで?』
『まじです』
『なにそれすごい』
うん。まあ、普通は信じられないだろうからね。触れ合い広場に来てても、まさか百匹もいたとは思わなかっただろうし。
そんなコメントを読んでる間に、いつの間にかラッコの山はとても低くなってた。周囲に散らばってるわけでもないから、そういうことなんだろう。
「えへへ……もふもふたくさん……ふわふわ……」
うーん。れんちゃんもとろとろだね!
「かわいい……一匹連れて帰る……」
「ちゃんとテイムしてからね」
「ん……」
そんなわけで、私たちもラッコのテイムにチャレンジだ。もふもふしながらエサを上げてみる。反応は、なし。まあそう簡単に成功しないよね。
「ん……。できれば、ある程度攻撃してから、やりたいところ、だけど……」
「あー……。やってもいいけど、どこか連れて行ってからやってほしいかな。れんちゃんは何も言わないだろうけど……」
「大丈夫。分かってる」
そう言いながら、ルルは結局動かずに、ラッコを撫で繰り回しながらエサを上げてる。
多分だけど、一応れんちゃんも分かってるだろうから、いわゆる本来のやり方でテイムをしようとしても、特に何も言わないと思う。でも多分、すごく悲しそうな顔になると思うんだよね。簡単に想像できちゃうほどに。
だから、まあ、私の我が儘だとは分かってるけど、できれば避けてほしい。
「かわいいなあ……。君も? じゃあ撫でてあげる。おいでおいで」
とっても楽しそうなれんちゃんの笑顔を、曇らせたくないから。
れんちゃんのもふもふが落ち着くまで、焦らずのんびりまったりと。ラッコをテイムしよう。
ラッコをテイムした後、最初の川に戻ってきた。
『改めて川遊び配信だ!』
『ただし残り時間は一時間を切ってます』
『そして参加人数が増えました』
最初の時と違うのは、コメントの通り参加者が少し増えたこと。参加者、というか参加モンスというか。ラッコが八匹、増えました。
れんちゃんをリーダーにして一列に並んでやってきたラッコたちは、我先にと川に入っていく。ちょっと浅い部分だけど、問題はないらしい。ぷかぷか浮かびながらラッコ同士で遊び始めた。
「あ! ずるい! わたしも!」
なんて言いながら、れんちゃんもラッコの群れに突撃していく。ずるいとは。
そしてその勢いのまま。
「ぶくぅ……」
沈んだ。
「うえぇ!? れんちゃあああん!」
いきなり突っ込みすぎでしょうあの子! 最初の自制心はどこにいったの!? あれか、ラッコがいるからか! おのれラッコめ! かわいいやつめ!
『ラッコは麻薬か何かなの?』
『まあ落ち着けミレイ、所詮はゲームだから沈んだ程度じゃ大丈夫』
『リアルと違って息ができないわけじゃないしな』
あ、なんだ。そうなんだ。それは知らなかった。じゃあとりあえずそこまで慌てる必要も……。
『ただし持続ダメージはある』
『完全に沈んだ状態だとだいたい二十秒で一割ぐらいの勢いな』
『三分程度で戦闘不能判定』
「地味に短い!?」
やっぱり急がないとだめじゃないか!
そう思って川に飛び込もうとしたところで、いつの間にかラッコたちの姿が消えていた。残っているのは三匹だけ。れんちゃんが連れてきた五匹がいなくなってる。
まさか、と思った直後に、ラッコたちが水面に戻ってきた。れんちゃんと一緒に。
「ぷはあ」
「あ、れんちゃん! 無事!?」
「おねえちゃん! 水の中綺麗だったよ!」
「あ、はい……」
うん。まあ、うん。慌てたのはこっちだけか。
いや、待って。そう言えば、アリスとルルも何も言ってないような……。
振り返る。なんだか生暖かい笑顔でこっちを見てた。
『というかそもそもとして、たとえ戦闘不能状態になっても、ミレイとはパーティ組んでるんだろ?』
『復活アイテムで復活させればいいだけじゃん』
『ガチャで大量に余ってるだろうに』
『そもそもラッコたちがいるんだから、ご主人がピンチになったら勝手に引き上げるだろ』
「うぐぐぐ……! だって、心配だったから……!」
『まあそこがミレイのいいところだ。うん』
『妹想いのいいお姉ちゃん』
『ただし頭はぶっこわれ』
「うるさいよ!」
心配して何が悪いのか。まったく。まったく!
「おねえちゃん? おこってるの?」
「れんちゃんには怒ってないよ!」
「わぷ」
とりあえず近づいてきたれんちゃんをぎゅっとする。はあ、落ち着く……。
まあ、うん。とりあえず、気をつけよう。うん。
壁|w・)ぴと、とれんちゃんにくっつくラッコたち。
なお、ある程度ダメージを与えるのが一般的な方法なので、ルルが過激というわけではありません。
次回は、バーベキュー。お肉もぐもぐ。
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ではでは!






