指名依頼
「どういうことですか⁉ 何があったんですか⁉」
俺は尋ねる。
「詳細はまだ下の私にまで降りてはないのですが……。夜杉町占領を行った妖怪は二級妖怪だったので、問題なく奪還できると想定していました。だが、二級陰陽師三人、三級陰陽師七人で編成されたメインチームは全滅。溢れた妖怪に呑まれて補助として参加していた者も多くが亡くなったようです」
桜庭先輩は確か補助として参加していたはずだ。
「陰陽師協会は今回の夜杉町を占領している妖怪は一級妖怪と考えて一級依頼に変更しました。ですが、現状一級妖怪を祓除できる者が全員出払っているため、停滞している状態です」
「奪還依頼に俺を参加させてください」
「芦屋さんはまだ三級ですので、難しいです……既に二級陰陽師が複数人やられている状態なので。一級陰陽師の方の参加が決定したなら、補助として参加できるかもしれませんが」
こんな状態で何を言っているんだ、と思うが今電話で話している人に決める権限などないだろう。
結局権力がまだ足りないのだ。
「分かりました。情報ありがとうございます」
俺は電話を切ると、すぐさま岳賢に電話をかける。
コール音だけが響き、中々電話に出ない。
任務中か?
しばらく待った後、ようやく電話が繋がる。
「どうした、道弥。今こちらも任務中だぞ。アドルフの件で何かあったのか?」
小さな声で話している岳賢。
「すみません、お願いがあって連絡しました。夜杉町奪還依頼に参加したいのですが、一級依頼になってしまい参加できないんです。どうにか、指名依頼に変更できませんか?」
指名依頼とは特別指名依頼を差し、陰陽師の階級に関係なく陰陽師協会により指名された者であれば参加できる依頼を指す。
階級が足りていないが、その者の補助などが必要な場合に行われることが多い。
「ああ……俺も詳細は任務中だから聞いていないが、一級依頼になったということは失敗したのか。分かった。協会に連絡してすぐに指名依頼にしてやる」
「ありがとうございます……ですが、良いんですか? 指名依頼で失敗すれば岳賢さんが責任を取らされますが」
指名依頼で階級に足りていない陰陽師が失敗した場合、指名した協会側に責任があることになる。
今回の場合だと岳賢さんだ。
「お前が負ける所など想像もつかん。全て連絡しておいてやるから行ってこい」
「ありがとうございます。恩に着ます」
俺はそう言って電話を切る。
「真、夜杉町に向かう。全速力だ」
「承知しました。すぐに向いましょう」
顕現した真に乗り、俺はすぐさま夜杉町へ向かった。
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