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津野港

 翌日。

 俺は東京駅で桜庭先輩を待っていた。


「やあやあ。待たせたね」


 桜庭先輩はいつものセーラー服と違い、ミニスカに縦セーターを着ていた。


「私服ですか。珍しいですね」


「狩衣は目立つからね。どうだい? ミニスカも似合うだろう?」


 そう言って桜庭先輩は一回転する。


「お似合いですよ」


「なんだ、冷静だな。つまらない」


 と言って笑う。

 からかっているのだろうか。


「行きましょうか」


 東京駅から新幹線に乗り、途中から普通電車に乗り換えて目的地に向かう。


「ふふふ。久しぶりの出張だよ」


 と桜庭先輩はご機嫌だ。

 経費で落ちるからと言い、駅弁まで買っている。

 最近の駅弁は美味いな。


「仕事ですのにご機嫌ですね」


「学校で授業受けるだけよりましさ。お金も入るしね」


 そんなものか。

 そんな感じでだらだら電車を乗り換えて、ようやく目的地にたどり着く。

 俺達は既に狩衣に着替え済である。


 津野港(つのみなと)

 兵庫県北部にある港であり、海外から多くの荷物が届く貿易港である。

 多くの荷物が届く貿易の中心であるはずの津野港だが、全く動いていなかった。


「やけに静かだね。依頼主をまずは探そうか」


 桜庭先輩がそう言って、津野港に入ろうとすると警備員に声をかけられる。


「こらこら、ここは今危険だから……君達は陰陽師? 依頼を受けた人達かい?」


「はい。淀川陰陽師事務所所属四級陰陽師の桜庭凛華と申します」


「ああ、助かったよ。随分若いようだが……今責任者を呼んでくるから待っててくれ」


 警備員はそう言うと、奥に消えていった。

 五分程して、少し痩せて不健康そうな中年男性がやって来た。


「早急に来てくれて助かったよ。私は長谷川商船の博多(はかた)だ。話は聞いている。淀川陰陽師事務所の桜庭四級陰陽師と、応援の芦屋道弥四級、いや三級陰陽師だね」


 少し疲れが見える。どうやら相当まいっているらしい。


「はい。今回は三級依頼でしたので、メインは芦屋三級陰陽師となり、私は補佐となります」


「芦屋三級陰陽師です。よろしくお願いいたします。早速ですが、状況を伺ってよいですか?」


「ああ。鉄鼠がこの港に住み着いてもう一週間となる。運ばれた荷物を皆食べてしまうために業務に支障が出てしまっているんだ。正確な数は分からないが、数千は超えているんじゃないかな。殺しても殺しても増える一方でね。話を聞くに、まとめて殺さないと駄目らしいね」


 そう言って、汗をハンカチで拭いている。


「実地を確認してすぐに祓いますか」


「それは助かるよ」


 と話していると、向こうから元ラグビー部のようなガタイの凄い大男が現れる。

 髪をオールバッグにしており、人相は完全にヤの人である。


「地上げ屋か?」


 俺は呟く。


「クソガキ共があ! 誰の許可を取ってここに勝手に入ってやがる!」


 襲い掛かってこんばかりの勢いで叫ぶヤの人。


「しゃ、長谷川社長! わ、私が呼びました!」


 博多さんが答える。

 こいつが社長かよ。

 この港、無理やり奪ったんじゃないだろうな。


「博多ァ! 勝手に何をしているんだ!」


 そう言って長谷川が博多さんを思い切りはたく。


「ご報告は何度もしましたが……」


「知るか、この無能が! それに駆除料二千万だと? たかが鼠退治に誰が払うか!」


「社長、鉄鼠は規模によっては二級妖怪にも匹敵するといいます。それにこのまま鉄鼠を放置しておけば、凄まじい額の損額が出ます。ここはプロに任せましょう」


「黙れ! たかが鼠如きに情けない奴だ。それにお前達まだ学生だろう? 一人五千円やろう。良い小遣いだろう? それでやれ」


「お断りします。二千万は適正価格であり、一切減額するつもりはありません」


「生意気な……こんなガキを雇うのに二千万など正気ではないわ。うちにはお抱え陰陽師も居るんだよ。おい、お前でも祓えるな」


 そう言って後ろを向くと、三十代の男性陰陽師が姿を現す。


「はい。鉄鼠は一体一体は五級から四級程度。やり方によっては私でも可能です」


「良い返事だ。分かったか。とっとと帰れ、クソガキ共」


 そう言って長谷川は帰っていった。


「酷い態度だねえ……中々あれほどの者は見ないよ」


 と桜庭先輩が呆れている。


「本当に申し訳ございません。しっかりキャンセル料は振り込みますので……」


 そう言って、何度も博多さんは頭を下げていた。

 何も悪くないのに可哀想に。


「博多さんは何も悪くありません。何かあったらこちらに」


 俺は連絡先を渡すと、桜庭先輩と港を出る。


「全く骨折り損だよ」


「まあまあ。ホテルも取ってあるんですし、今日は神戸でゆっくりしましょう。美味しい物でも食べれば元気も出ますよ」


 桜庭先輩をなだめる。


「意外だな。君は即帰りそうなものだが……」


「いや、まだ終わってないですから」


 俺はただそう言った。


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