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お怒りのご様子

「冗談でしょう? そんな数二人でなんてとてもじゃないけど……やっぱり応援を呼びましょう?」


「中途半端が一番良くないんじゃなかったのか?」


「うっ……けどいくらあんたが凄くても現実的じゃないわ」


「応援を待つほどの時間はおそらくない。夜の山狩りは危ない。明日、出直そう」


「分かったわよぉ……」


 すっかりしょぼくれたゆまを連れて島唯一の民宿に向かった。

 廃墟とは言わないまでも、叩けば壊れそうな宿である。

 それを見たゆまの顔が少し引きつっている。


「わ、私を舐めないでよね。これくらいの宿余裕よ」


 罰ゲームみたいに言うな、馬鹿。


「じゃあとっとと行くぞ」


「アイドルである私と一緒に泊まりたくてこの宿にしたわね」


 余裕あるな、こいつ。心配して損した。


「あんたの期待には悪いけど、答えられないわ。だって私はアイドルだから……!」


「先入ってるぞ」


 俺はゆまを無視して先に宿に入る。


「絶対にこっちの部屋に入ったらダメなんだからね! 分かってる?」


 ゆまは叫びながら別の部屋に入っていった。

 部屋に入ると、畳六畳の中央に布団が敷いてある。

 年季を感じるテレビが隅に置かれており、フロアランプが暗めの部屋を照らしていた。

 布団に倒れると、莉世が突然顕現する。


「なんですか、今日は!」


 莉世が頬を膨らませながら、大声をあげる。


「私に顕現するなと言っておいて、あの小娘とデートですか!? 許せません!」


 お怒りのご様子。


「それは悪いと言っているだろう? お前は何というか、目立ちすぎる。撮影が入っている以上お前が映るのは具合が悪い」


 莉世の妖艶な美しさはあまりにも目立つ。営業妨害に近い。


「そんなの相手側の都合でしょう? 私達は関係ないではありませんか! 明日からは絶対についていきますから!」


 そうとう怒っているのか、こちらに背を向けすっかりへそを曲げてしまった。


「莉世、お前は綺麗すぎる。お前が映ってしまうと、アイドルである彼女が目立たないだろう?」


 俺の言葉を聞き、莉世がちらりとこちらを見る。


「確かに私は綺麗ですけど……」


 少しだけ声が弾んでいる。もう少しで機嫌も良くなるか?


「って、騙されませんから! ふうー、危なかったです。明日は私も一緒に行きますから!」


 困ったな。こうなると中々言うこと聞かないだろう。

 無理やり戻すこともできるが、ずっとへそを曲げそうだ。


「それはそうと明日の旧鼠狩りどうするかね?」


「私が山を全部燃やせば終わりですわ。一匹も残しません」


「それじゃ旧鼠を祓えても島も滅びるだろうが。それは却下。黒曜が居れば部下の大天狗に任せて数で祓えたんだけど」


「道弥様、それではまるで私が黒曜以下みたいではありませんか! 私にだって眷属くらいいます! 私にお任せください! 黒曜より完璧に、仕事をこなしてみせますので!」


 と立ち上がり、拳を握る。

 謎のやる気だ。


「千年前に居たのは知っていたけど、今も居たのか。じゃあ、そいつらに任せていい?」


「お任せを!」


 キラキラした笑顔で言うので、素直に任せるとしよう。

 俺は旅で疲れた体を癒すために風呂に入った後すぐ布団に潜った。

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