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天職という名の宗教

 結局、学童保育に縁はなかった。

印象の悪い面接は受かるというジンクスがあることを知り、その都市伝説に賭けたが、資格の有無が響いたようだ。ただ、資格に関しては、あれば有利というだけで、資格所有者が定員を満たしていれば、潜り込める可能性があることを知った。


 遊ぶことが好きな明智は、その手の求人を探し出してチャレンジするつもりだった。

他に課題が一つ、なんとか支援センターに行かなければならないことだ。

ネットで調べてみたら、どこの施設も半年から一年待ちの状況だという。

なので、やる気が起きず訪問を先延ばしにしている状態だった。

「果たして、ナントカセンターに行って、何か得することがあるのかな」

残念ながら、彼も福祉の手からこぼれ落ちるタイプのようだ。自分の障害に関する援助の手というものにもう少し敏感になればいいのだが。わりと気づけずにずるずると時を過ごす人間は多い。


いつものように、コールセンターへ行く。菊池さんのアドバイスで多少は楽になったものの、耳から経由する情報は明智の頭を悩ませる。アンケートの完了は数えるほどしかない。唐沢の叱責は未だに慣れることはないが、前ほど頻繁に注意されることも少なくなった。たまに水上さんに誘われて、いつもの喫茶店で詮索される日々。恋愛に進展なし、日々の業務は辛いことが多いけど、ある程度機械的にこなしている。


「多少はマシになったけど、平均から比べるとまだまだ能力不足だな」唐沢が、明智を評して菊池に伝えた。

「彼が自分の姿に気づいて改善できるようになればいいのだけれど」少し心配の入った表情で、明智の身を案じている。

発達障害を持つ者はメタ認知が苦手なタイプである。自分の普段の振る舞いや仕事ぶりが、他人の目を通した時にどのように映るのかが、全く理解も想像できないことが多い。そのため、普段の行動や思考の癖、言動を把握できずに、同じミスを繰り返す。そこから這い上がれない者がたくさんいる。


「学童保育さえ受かれば、すべて丸く収まるのだけどなあ」

そのことだけを支えにして、今の仕事を乗り切っている。辛いことが多いけど、学童保育に雇われれば、明るい未来が待ち受けていると信じている。今や、学童保育は明智にとって宗教と化している。明智はそれを天職だと信じ切っていた。


「いろいろ調べてみたけどよ、学童保育も難しいちゃー難しいわな」清太郎が資料片手に語る。

「わしもそう思うが、今やこの職業が明智にとって安全弁の役割をしておる。このまま様子を見よう」

「才能はあるかもしれないけど、やっぱりこの仕事もコミュニケーションなのよね」

「コミュニケーションに難のある奴には重荷よ。なーご」


職場に恵まれず、不慣れな労働にあえいでるたくさんの人たち、職場で不適応を起こしていてお荷物になってしまっている何らかの障害のある方々。彼らが、この辛い人生を生きていく上で、明けの明星のように救い星となっている職業は、漫画家だったりミュージシャンだったりお笑い芸人だったり小説家やライターなどもある。


日々の叱責と疲労感と不安、焦燥感を同伴者(パートナー)として人生で精神をすり減らすだけすり切っている人たちに幸いあれ。

何とかエタナールせずに終わりました。

予定では、学童保育で活躍させたかったので、その点が不満ですが、今の私には少し手の余る展開になりそうだったので、安全策をとりました。


ここまで読んでいただいた方、どうもありがとうございました。

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