【121話】全員ひれ伏せ!(ペトラ視点)
裏社会に潜むゴロツキ共は、幾度となく相手にしてきた。
特設新鋭軍に入ってからは前線に立ち、反社会的な集団を叩きのめし、敵とどう戦えばいいかも十分に理解しているつもりだ。
そして今回も同じ。
帝国に敵対するような存在に慈悲などかけない。
「はぁっ……!」
スティアーノが前で牽制してる間に、風系統の魔術を放つ。
殺傷性はないものの、傭兵団の者共は数メートル単位で吹き飛んだ。
ただ、一人を除いて。
「ちっ……効いてないわね」
「ペトラ、あのローブ被ったヤツが傭兵団のリーダーか?」
「どうかしらね。でも、それに類するポストに就いているとは思うわよ」
こちらの魔術を涼しい顔で耐え抜いたローブの女。
というよりも……直撃する寸前で、魔術を無効化したように見えた。
魔術の規模はそれなりにあった。
普通なら多少なりとも魔術を受けるはずだった。
それがないということは……あの女は私よりも格上。
「気を付けなさい。相当のやり手よ」
「ああ。見りゃ分かるよ」
「……アンタ、先走るんじゃないわよ」
「俺は猪か!」
スティアーノは特に勇敢な性格をしている。
強敵が目の前にいるとなると、彼は無策に突っ込む可能性があった。
強者との戦闘は、用心を重ねるべきだ。
「絶対に距離は詰めないで。アンタは敵を寄せ付けないようにだけしときなさい」
「おう。分かった!」
弱腰な戦い方は嫌いだ。
焦ったいし、さっさと終わらせてしまいたい。
そんな私でも、あの魔術師には慎重にならざるを得ない。
──あの女、アルディアと似たような空気があるのよね。
強者が纏う独特の雰囲気。
目の前の女性からは、それが強く感じられた。
間合いを詰めるのはリスク。
そうなると必然的に遠距離での魔術の撃ち合いになる。しかし魔術発動のタイミングをミスれば、そこに隙が生まれ、漬け込まれれば一気に負けが見えてくる。
睨み合いを続けていると、ローブの女はこちらに手のひらを向けてくる。
「──スティアーノ、回避!」
勢いよく飛んできたのは、水弾。
私とスティアーノの横を掠めながら、後方へと飛んでゆく。
「っぶね〜! 助かったわ」
「魔術発動のタイミングは私が読むわ。アンタは私の合図が入ったら、回避行動を取って」
傭兵団はローブの女を中心とした動きをしている。
リーダー格を潰さなければ、彼らは引いてくれないだろう。
私も対抗するように、傭兵団のいる方に向けて手をかざす。
──私がこの戦況を有利に進めてやる!
「はぁっ!」
バチバチと空気が弾けるような音が響き、それは傭兵団のいる方向へと進んでゆく。
圧倒的な威力を誇る電撃波。
当たれば、相手もただじゃ済まないはずだ。
「…………」
けれども、ローブの女は動じることがない。
──避けるそぶりすらない!?
何で?
普通なら、これで逃げ出すはずなのに。
その電撃波が直撃する寸前に女の使った魔術によって、それらは霧散する。
「……は?」
──何よ。今の魔術。
あり得ない。
あの威力の魔術をいとも簡単に消してしまった。
高度な防御魔術を構築している時間はなかったはずだ。
今の一瞬で、勝負は決したと思っていた。
「なん、なのよ……とんだ怪物じゃない」
強者を前にすると、怯えという感情よりも……苛立ちが先に来る。
私よりも強い存在がいることを許せない。
私は誰よりも努力を重ねてきた。
若いとか、女だからとか、そんなのはどうでもいい。
私は努力して、魔術を極めてきた。
それでも一番になれないことが、酷く悔しい。
一番になるために私は努力を続け、雲の上で悠々とこちらを見下ろしてくる強者を引きずり下ろしてやるのだ!
「……まだ、終わりじゃないわ! はぁっ!」
「…………」
何度も何度も魔術を放つ。
魔力の枯渇なんて気にしない。
ただ目の前にいる余裕な顔をした相手に泥を付けてやりたいという一心で、私はひたすらに攻撃を続けた。
だが、決定打に欠ける。
「くっ……!」
──なんで、なんで届かないの!?
「おい、ペトラ。そろそろ……こっちも厳しいんだが?」
スティアーノも、複数の敵に攻められ苦しそうだ。
彼が維持していた戦線は徐々に後退し始めている。
いい加減勝負を決めないと、彼が限界だ。
「キツイのは分かってるから……ちょっと我慢してなさい」
「本当に頼むぜ……このままだと、俺らが負ける」
「……それも知ってるわよ」
私の魔術で活路を見出す。
厳しい戦いになるのは百も承知。
あの魔術師の方が私よりも格上で、どんなに強力な魔術を撃ち込もうと、全てを無力化されてしまおうと、私は諦めない。
「まだやる気?」
「当たり前! 完膚なきまでに叩きのめすから、覚悟なさい!」
「その強情な性格は【ルート】が変わっても相変わらずなのね」
「は? 何の話?」
「何でもないわ。全ては私の中にある──かつての記憶。貴女には分からないことよ」
意味不明なことを呟く女。
私たちの注意を逸らそうとしているのかと一瞬感じたが、考えれば考えるほど、彼女の言葉は自然と漏れ出たようなものに思えてならない。
「……まあいいわ。ここでアンタを倒して、知ってることを洗いざらい吐いてもらうから!」
「できるといいわね──秀才さん」
このまま終わることできない。
私たちは、この女に勝つんだ!
「私は絶対に……負けたりしないっ!」
勝ち目が薄いというのは薄々理解している。
けれども、負けるなんてことは認められない。
「さあ。本気で行くわよ!」
「合わせるぜ。ペトラ!」
「ええ。私の魔術をよく見てなさい。必ず勝てる盤面まで持っていってやるから!」
手に魔力を込め始めると傭兵団の者たちはすかさずこちらとの距離を詰めようと駆けてくる。
「させるか!」
「もう魔術を撃たせるな!」
そんな彼らに対して、足止めを行うのは当然スティアーノ。
前方から駆け寄ってくる傭兵団の者たちに向け、得意の剣技で動きを制する。
「くっ──!」
「馬鹿。通すわけねぇだろ! ペトラ。やっちまえ!」
「言われ、なくても!」
練りに練った究極の魔術。
私は手のひらから、魔力を凝縮した魔弾を放つ。
「──ひれ伏しなさい!」
思い知れ!
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