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第069話「アカリ」

「そうさ二人なら~どんな困難だって乗り越えられるさ~♪ 翼なんてなくても~♪ きっとどこまでも羽ばたいて行ける~♪ だから手を繋いで前へ進もう♪ 輝く未来を目指して~♪」


 レッスン場で切れのあるダンスを披露しながら歌う俺を見て、忍たち四人は感嘆の息を漏らす。


 花音が「サボりすぎて下手になってないか心配だから歌って見せろ」と言うので、披露してやることにしたのだ。


 最後まで歌い終えると、俺はその場で軽快にバク中を決めて華麗に着地し、右手を天高く掲げて決めポーズを取った。


「ふぅ……こんな感じだけどどう?」


「……なんで新曲をこんな完璧に歌えるのよ。あんた相変わらず化け物じみてるわね」


「円樹ちゃん凄いわねぇ~。さすがはU・B・Aが誇る天才さんだわぁ~」


「むしろ前よりもダンスのキレも歌声も向上しているように感じマシタ。さすが円樹なのデス」


「ふふっ、円樹は『なにもしてない』って態度とってるけど、影でいっぱい努力してるタイプだもんね」


「ちょっと忍! 余計なことは言わないで! あたしは天才だから"努力"とか"練習"とかそういう単語とは無縁なの!」


 俺はツインテールを逆立てながらぷりぷりと怒って抗議するが、当然裏ではめちゃくちゃ努力しまくっている。


 セレネに幼少期から音楽の英才教育を受けてきたし、最近は歌姫MOONとしての活動も精力的にこなしてきたので、どんどん歌唱力が向上しているのだ。


「はぁ……まあとりあえずそれだけできるならフェスは安心ね。……ところであんた、話は変わるけど新メンバーに顔見せはしてきたの?」


「まだだけどどうせいつもの面子でしょ? わざわざ会う必要ないんじゃない?」


 U・B・Aでは毎月ファン投票と探索者実績に基づいたランキングが発表され、下位の三名が下部組織U・L・Aの二名と外部からの一人と入れ替わる。


 ただし外部からの新たな加入メンバーについてはスカウト制であり、五傑の誰かの推薦が必要となっているので、俺たちのお眼鏡に叶うような人材がいないときは入れ替わりは二名のみの場合もある。


 そして先程の述べた通り、アイドルと探索者両方の実力を兼ね備えた逸材なんてそうそういないので、外部から人を入れることはそう多くなく、大抵いつも同じような面子がU・B・AとU・L・Aをエレベーターのように行き来するだけのことが多い。


「それが今回は外部から一人入ってきたのよ。しかも推薦者は忍なんだから、あんたも会ってあげなさい」


「……え? 忍がスカウトしたの? 珍しいわね」


「うん。前に佐東鈴香ちゃんを勧誘しようとしたら円樹に止められたけど、この子も鈴香ちゃんと同じように凄い可能性を感じたから誘ってみたの」


「へぇ、それは楽しみね」


 忍が積極的に外部から勧誘するケースは滅多にない。


 実際忍に推薦されてU・B・Aに入ったのはアスタと円樹(オレ)くらいだしな。


 となると今回の新人も結構な期待が持てそうだな。将来的には五傑入りもあり得るかもしれない。







 花音たち三人は食事に行くと出て行ったので、俺は一人レッスン場に待機して忍が連れてくる新メンバーを待つことにした。


 そして約十分後――。


「お待たせ~。連れてきたよ」


 忍と一緒に現れたのは、ストロベリーピンクの派手な髪色をした高校生くらいの少女だった。


 身長は俺や忍よりは少しだけ高めなので女子高生の平均くらいか。


 体型はスレンダー……というか女性的な丸みは殆ど感じられないが、その容姿は文句なしに美少女と言えるものだ。


 そして表世界にいるというのに魔力を感じる。つまりこの歳で魔核持ちということになる。


 間違いなく超有望株だなこいつ。探索者としてもアイドルとしても相当に高いポテンシャルがある。


 だが――


「どもども~。初めまして円樹先輩! 僕の名前は――」


「アカリ……」


「あれれ~? まだ名乗ってないのに僕の名前知ってるんですか? あは~! 僕って有名人だからそういうこともありますよね~! あっ、ひょっとして円樹先輩って僕のファンの方だったりします? これから同じグループの一員になりますし、特別に握手も一緒に写真撮るのも好きにして良いですよ~!」


 きゃるんっ、と右手で目元に横ピースを作りながらマシンガンのように矢継ぎ早に喋る、くっそうざいピンクヘアー。


 こいつ……九州地方で活動してる有名な美少女配信者のアカリじゃねーか。


 鈴香がデビューするまで、裏ちゃんねるの『注目の新人ランキング』で半年くらいずっと一位を独占していた女だ。


 そして鈴香がこいつを抜いて一位になった途端、めちゃくちゃライバル意識を持って絡んできて、もう毎日のようにY(ワイッター)で対抗心バリバリの投稿をしてくるし、先輩風を吹かすような長文DMを送ってくる鬱陶しいやつ!


 鈴香は人が良すぎる善人キャラだから仕方なく全部返信してるんだが、さすがにそろそろ面倒臭くてブロックしようかと検討していたところだった。


「……」


「あれあれ~? 急に怖い顔になりましたけど何かあったんですか? あっ! もしかして僕がここで活躍して先輩を追い抜いちゃったらどうしようみたいな心配をしています? そりゃ天才の僕ならすぐにでも五傑入りは果たしちゃいますけど、まだしばらくの間だけは先輩の立場も保証されてますからご安心を~! まあ? しばらくと言ってもたぶん一ヶ月くらいですけど! あははははっ!」


「髪パンチ――」


「――ぶげぇ!?」


 ドスっと魔力を込めたツインテールを鳩尾にめり込ませてやると、アカリはその場に崩れ落ちて胃液を吐き出した。


 ……やはりアホには拳でわからせるのが一番だな。


「ちょ、ちょっと円樹……いくらアカリちゃんがうざいからっていきなり攻撃するのはやりすぎだよ……」


 やっぱお前もうざいって思ってんのかよ……。


「げほぉ……ぐぇほっ……。な、なにするんですか!? 僕は裏ちゃんねるの『注目の新人ランキング』一位の超人気者で今日本中で最も勢いに乗っている美少女配信者なんですけどぉ! 美少女に暴力とか論外ですよ!」


「今の『注目の新人ランキング』一位は佐東鈴香でしょうが」


「やれやれ……まったく先輩まであの女に踊らされてるんですか? 勘弁してくださいよ~。僕のほうが圧倒的に可愛いじゃないですかぁ~。それにあれは絶対男を知ってますね。清純ぶってますけど絶対腹黒いビッチですよ!」


「髪パンチダブル――」


「――ほげろべっ!?」


 今度は二本のツインテールを両脇腹に突き刺すと、アカリは地面をゴロゴロとのたうち回って悶絶した。


 ふぅ……魔核持ちは防御力が高いから遠慮なくぶっ飛ばせていいな。


「だから暴力反対ですってばぁ! 僕が可愛すぎるから嫉妬するのは仕方ないですが、限度ってものがありますよ!? 暴力沙汰で甲子園に出場できなくなっちゃったらどうするんですか!?」


「残念ながらうちは力が全てのアイドルグループなの。目指すのは地獄甲子園よ。生意気な後輩には鉄拳制裁も辞さない主義だから覚悟しなさい」


「ちょっと忍先輩!? この人こんなこと言ってますけど!? 止めなくていいんですか!?」


「う~ん、うちは完全実力主義だからね……。メンバー同士の喧嘩も上等ってところはあるかも」


「なにここ昭和すぎるんですけどッ!?」


 アカリは目ん玉ひん剥いて叫びながら、床をびっちびっちと跳ねまわってる。


 う~ん、こいつうざいけどボケもツッコミもいけるしリアクションも面白いから配信者として人気が出るのもわかる気がするな。


 ……しかし前々からもしかしてと思っていたが、今の殴った感触……まさかこいつ。


「ふ~む……ぺたぺたぺた……」


「ちょ!? なにしてるんですか!? 女の子同士とはいえセクハラですよ!?」


 アカリの肩や腰回り、腕や太ももなんかをぽんぽん触って確かめる。


 ……やっぱりそうだな。もう完全に間違いない。疑惑は今、確信に変わった。


「ふ~……そういえばちょっと汗かいたわね。忍、久々に大浴場でも一緒に行かない?」


「行く行く! 円樹とお風呂入るの久しぶりだから楽しみ~! ……あ、それじゃあアカリちゃんも一緒に行こ?」


「えっ? あ~……僕はちょ~っと用事があるので今日はこれで……」


「は? 先輩の誘いを断るわけ? いいから一緒に来なさいよ」


 ツインテールをにゅっと伸ばして、逃げようとするアカリの首根っこを捕まえて引き寄せる。


「ぐぇっ……」


「円樹ってばまたそんな乱暴なことしちゃダメでしょ~? でもアカリちゃんも汗かいちゃったと思うし一緒にお風呂に行こうよ。やっぱり裸の付き合いは大事だと思うんだ~」


「さあ行くわよ!」


「しょ、昭和すぎるぅ……。ぼ、僕はとんでもないパーティに所属してしまったのかもしれない……」


 抵抗するアカリの首を締め上げて大人しくさせると、そのまま二人で引きずるようにして大浴場へ向かった。

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― 新着の感想 ―
あっ(察し
更新お疲れ様です。 ボディチェックで疑念が確信に変わった……あかり、お、お前まさか!? 男の娘ジャンルでも鈴香より先輩ポジションなのか…? それでは今日はこの辺りで失礼致します。
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