56:あまりにお約束な展開
王都の大通りにある冒険者ギルドは、人で賑わっていた。
カウンターには、ズラリと受け付け窓口が並んでいる。
個性的な係員達がそれぞれ対応して、依頼を終えたばかりの冒険者達を次々に捌いていく。
列に並ぶ冒険者達は、皆一癖も二癖もありそうな者達ばかりだ。
依頼を終えて気が緩んでいるのか、あるいは気が立っているのか、列に並ぶ冒険者達は一種独特の雰囲気を纏っていた。
ギルドに併設された酒場では、酒類の販売も行っているのだろう。
赤ら顔の男達がテーブルに座っては、酒を酌み交わしている。
そんな場所に舞い込んできた、学生服の四人組。
しかも、その内二人は女子だ。
あまりに場違いな私達を、列に並ぶ冒険者も酒を搔っ食らう冒険者も興味深げに眺めている。
「なんだぁ、随分と綺麗どころが来たじゃねぇか」
酒を飲んでいた男が、私とキャロルを見るなり立ち上がって近付いてくる。
長身、強面、筋骨隆々の、正に絵に描いたようなチンピラだ……。
こんなお約束みたいな展開、実際に起きるんだなぁ。
「こりゃいいや。お嬢ちゃん達、ちぃと相手をしてくれや」
「彼女達は、僕達の連れですので」
スチュアートが私とキャロルを庇うように、男に対峙する。
デリックも、無言のままで隣に立つ。
こうして見ると、二人とも男の子なんだなぁ。
緊張しているのか、ピリリと張り詰めた空気が伝わってくる。
「ああ? 舐めてんのか、ガキが」
男が口元を引き攣らせ、腰の武器に手を掛けようとした、その時だった。
「はーい、ギルド内での喧嘩は御法度でーす」
のんびりとした声と共に、カウンターから一人の男性が歩いてくる。
ずらりと並ぶ受付カウンターの中で、唯一の男性スタッフだ。
男性比率の高い冒険者ギルドにおいて、男性受付スタッフは人気が無いのか、彼の受付カウンターだけは列が出来ずに空いていた。
「それに、気付いているかい。アカデミーの制服を着ているってことは、彼等は貴族家の子女である可能性が高い。そんな相手に喧嘩を吹っかけるのかい、ブレンダン」
「ケッ」
ブレンダンと呼ばれた冒険者は小さく舌打ちをすると、再び酒場のテーブルへと戻っていった。
スチュアートとデリックの肩から、力が抜ける。
「ごめんねぇ、どうにも気が荒い連中が多くてさ。君達、見ない顔だよね。一年生?」
「はい、今日は冒険者登録に来ました!」
受付の男性に声を掛けられ、デリックが頷く。
男性は私達四人を見回し、笑顔を浮かべた。
「女の子まで一緒だなんて、嬉しいなぁ。アカデミーの生徒でギルドに登録する子は居ても、大半は男子生徒だからさ」
「それはそうでしょうねぇ」
男性の言葉に、スチュアートが呟く。
冒険者活動に興味を持つ貴族令嬢なんて、私とキャロルくらいなものだろう。
「さ、こっちにどうぞ。登録を済ませてしまおう」
男性に促されるままに、私達は一つだけ空いた受付カウンターへと向かった。
受付男性は、マイクさんと言うらしい。
「僕のところはいつでも空いているから、穴場だよぉ」
なんて笑っている。
「そんなに女性の受付嬢のところに並びたいものなのかしら」
私の疑問に、キャロルが首を傾げる。
「冒険を終えて疲れて帰ってきたところだから、癒やしがほしい……とか?」
受付嬢と話すことが、癒やしになるのだろうか。
こればかりは、女の私には良く分からない。
「まぁ、下心を持って通い詰めている連中がほとんどなんだけどねぇ」
マイクさんが苦笑している。
「そういうものなの?」
「僕に聞くなよ」
クラスメイト二人に聞いてみたら、スチュアートからはどこか上擦った声が返ってきた。
「俺達は別に、女の子なんていざとなればアカデミーにいっぱい居るし」
「あ、ああ、確かに」
デリックはさらりと答えて、スチュアートもそれに同意する。
こういう時、デリックの方が場慣れしている感じがするよね。
「はい、お待ちどおさま」
マイクさんが、カウンターに四つのカードを並べる。
そこには私達の名前と「F」の文字が描かれていた。
「これが君達のギルドカードだよぉ。再発行にはお金が掛かるから、大事に保管してね」
「ういっす」
冒険者になりたいと言っていたデリックは、カードを手にして目を輝かせている。
「ランクは一番下のFから。依頼の達成次第でランクは上がっていくから、頑張ってこなしてねぇ」
「「「「はい!!」」」」
新品のギルドカード。
これが冒険者の第一歩だと思うと、デリックじゃなくても嬉しくなってくるよね。
マイクさんに御礼を言って、ギルドを出る。
解散するより先にどこかの屋台で何か軽く食べようか~なんて話をしていたら、私達の行く手を遮る姿があった。
「よぉ、無事に登録したみてぇだな。その嬢ちゃん達を置いて、お前達二人は帰んな」
ブレンダンと呼ばれた男と、彼と同じテーブルで酒を酌み交わしていた男達だった。









