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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
6章:神とか聖女とか迷い子とか、もうどうでもいいよ!

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92:新しい世界の在り方

「ちょっと待ってもらおうか」


そこに居たのは、ハーヴィー兄様とエディー伯父様──ヒントン辺境伯家の二人だ。

騎士として王城に出入りするハーヴィー兄様はともかく、辺境伯として国境の護りを担うエディー伯父様までここに居るなんて、どんな風の吹き回しだろう。


「ご無沙汰しております、伯父様」

「ああ、元気そうで何よりだ」


スカートの裾を抓んで、エディー伯父様に一礼する。

……そう言えば、私が迷い子であると公表されたことで、私が異世界からやってきた存在だということがバレてしまった。

つまりは、ティアニー公爵家の血を引いていないという訳で……私が地球から来たことを知っているハーヴィー兄様はともかく、エディー伯父様にとっては、私は実の姪ではないということが明るみに出てしまった。


「あの、伯父様……」

「色々と話は聞いている」


伯父様は、大きな手で私の頭を撫でてくれた。

……子供の頃と同じ、乾いた掌。

筋張って、ゴツゴツしていて、ところどころ剣だこが出来ているこの手が、私は大好きだった。


「迷い子様などと、余所余所しい態度をとるつもりはないぞ」

「勿論です! 今まで通りにしてください」


そんな風に距離を置かれたら、きっと泣いてしまう。

たとえティアニー家の血を引いていなくても、私にとって、二人は大事な親族なのだから。


「ルーシーが迷い子だからとか、そんなのは関係ない」


ジェローム兄様と暫し睨み合っていたハーヴィー兄様が、表情を綻ばせる。


「そうだぞ。ずっとルーシーが成長して、我が家に嫁に来てくれる日を、待っていたんだからな!」

「伯父上!?」


エディー伯父様の言葉に、ジェローム兄様が声を上擦らせる。

伯父様ったら、昔っからいつもこうなのよね。

どこまでが本気でどこまでが冗談なのかも分からないんだけど、当のハーヴィー兄様はと言えば、ニコニコと私と伯父様のやりとりを見守っている。


……その横で、ジェロームお兄様が毛を逆立てている訳だけれど。


「皆、玄関先で何をしているんだ」


呆れたような声は、お父様のものだ。

馬車が到着したのに気付いて、出てきたのだろうか。

その後ろには、お母様の姿もある。


「君からも言ってくれ、前々からルーシーは我が家の嫁にと望んでいたというのに」

「ダメです、ようやく兄妹という(くびき)から逃れられたんですから、ルーシーは俺が貰います!!」


エディー伯父様とジェローム兄様の張り合う声に、お父様が眉間に皺を寄せている。


「あのー、貰いますって、物や動物じゃないんですから……」


流石にこんな扱いをされてしまうと、私としてもいたたまれない。


「そうですよ、ルーシーの結婚相手は、ルーシーが選ぶんです」


お母様が、私の肩を抱いて男性陣をキッと睨み付けた。

ああ、やっぱりお母様は私の味方だ……。


「あー、今日もまたルーシー宛に手紙がどっさりと届いている訳だが」


頭が痛いとばかりに、お父様がため息を吐く。

迷い子を取り込む為に、各貴族家からまーお誘いの手紙がわんさかと届くこと届くこと。

中でも一番熱心に恋文を届けてくれるのは──王太子でもある、ライオネル殿下だ。


王家との婚約は、お断りさせていただいた。

だが、ライオネル殿下は、いまだ諦めてはいない。

政略結婚が嫌ならば、より良い関係を築きたいと、毎日甘い言葉を綴った手紙を届けてくる。


おかしいなぁ、こんなはずではなかったんだけれど……。

異世界転生と言えば、ハーレム……なんてのは、小説の中だけだと思っていた。

ため息を吐く私の背を、お父様がぽんと叩く。


「ルーシーが思うまま、君が好きなように生きるといい。私達は、それを一番に望んでいるのだから」


真っ直ぐこちらを見つめる瞳は、柔和な優しさに満ちていた。

お父様の隣で、お母様も同意するように頷いている。


……じんわりと、目頭が熱くなってきた。

初めてこの世界に来た時、暗い夜の森で絶望を味わったけれど……今となっては、この世界に転生して良かった。

この家の子供になれて、私は幸せ者だ。

そう考えると、私を強引に呼び出したという異世界の神様にも、感謝しなきゃいけないのかもしれない。




「そういえば、神罰だの何だのって好き勝手しちゃったけど、大丈夫なのかな」


賑やかな夕食を終えて、寝室で一人、バールに声を掛ける。

のそりと顔を上げた黒猫は、自慢げにふふんと鼻を鳴らした。


「それならば、問題はない。この世界の神なら、とうに滅ぼしてある」

「………………へ?」


バールの話は、寝耳に水だった。

いや、ちょっと待って。

魔王を倒してもらったのまでは把握しているけど……え、神様ってそんな感じで滅ぼしちゃってもいいものなの?


「あの聖女とかいう小娘から魔力を奪いはしたが、あのままではじきに回復して、再び神聖力を使えるようになるだろうと思ったのでな」

「は、はぁ……」


クワイン令嬢は神聖力を失い、迷い子を謀っていた罪で断罪された。

彼女はこの先を一生を、幽閉されて過ごすことになるだろう。


「信仰の元となる神を殺せば、二度と力を与えられることもないからな」


だからって、神様を滅ぼすというのはどうなのか……。

スケールが大きすぎて、今がどういう状況なのか、いまいち把握出来ていない。

この世界は、神様が不在の状態ってこと……?


「それって、クワイン令嬢以外も困るんじゃないの?」

「さぁな」


我関せずとばかりに、バールは前脚を舐めて、顔を擦っている。

いやいや、これって一大事だからね。

今日のおやつを決めるみたいな暢気な話じゃないんだから!


「神といっても、魔王と大差なかったぞ」

「そういう話じゃなくってさぁ……」


ダメだ、この人……もといこの猫、自分が元神様だから、神という存在に対する扱いがとてつもなく軽いんだ。


「この世界は、神様の居ない世界になっちゃったってことなんでしょう?」

「これからは我等が交代で管理していくとしよう。なぁに、慣れたことだ」


わぁ。

神様不在の世界で、これからは悪魔達が新たな神となっていくんだろうか。

ってことは、これからはバールに祈りを捧げて、神聖力を授かるの?

神聖とはとても言い難い力な気が……まぁいいか。


地球で神の座を追われた悪魔達が、新たな世界の神となった。

こんな結末も、たまには良いのかもしれない。

……本当に、良いのかなぁ?

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