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転生少女は悪魔と共に ~異世界は神より悪魔頼み!?~  作者: 黒猫ている
6章:神とか聖女とか迷い子とか、もうどうでもいいよ!

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90:全部この人のせい

王城での謁見は、予想外の方向に進んでしまった。

いや、私が迷い子であることを明かすのは、あらかじめ考えてはいたんだけれど……


ライオネル殿下とジェロームお兄様、二人は一体何を口走っているんですか???


おかげで、もう、帰りの馬車の中で顔を上げられない……!

元々お母様の顔は正視出来ないと思っていたけれど、お兄様の顔も、お父様の顔さえも、まともに見れないというか……顔を上げるのすら恥ずかしい……。


「まるで庭に咲いたカーネーションのような色だな」


ガタンゴトンと揺れる馬車の中。

お父様はそんな私を見て、声を上げて笑っていた。

うぅぅ……。


「もう、そんな風に揶揄(からか)わないであげてください。殿方からの求愛は、年頃の女性にとっては一大事なのですから」


そんなお父様を、お母様が窘めている。

……お母様、怒っていないのかしら。

声を聞いた限りでは、いつも通りのお母様に聞こえるけれど……。


怖い。

怖くて、顔を上げられない。

これで目が合って、他人を見るような視線だったらどうしようって……そんなことを考えてしまう。


お母様は優しい人だ。

それは知っているけれど、自分が隠し続けてきた真実を思えば、怯えてしまうのは仕方が無い。


「まったく、これからは王城にルーシーを近付けないようにしないと」


お兄様はと言えば、いつも通り……なのかなぁ?

ライオネル殿下に対し、すっかり警戒心を抱いてしまったようだ。


「そうねぇ……殿下も悪い子ではないと思うのだけれど、ルーシーの気持ちが一番大事だし……」


お母様も、どうしてこの状況でさらりとお兄様の話に乗っているのですか。

分からない。

お母様が今何を考えているのかが、分からないよ。

顔を上げる勇気も出ない。


「やっぱり、ジェロームとルーシーが一緒になるのが一番よね!」

「えええええ!?」


そう思っていたのに、お母様の口から飛び出た爆弾発言に、思いっきり顔を上げて声を上擦らせてしまった。


「ねぇ、貴方もそう思わない?」


お母様はどこか上機嫌な様子で、お父様に話を振っている。

お父様ったら、困ったように目を逸らしているわ。


お母様……怒っていないの?

私が自分の子供ではないと知ったのに……

どうして、そんなに普通で居られるの?


あまりにいつも通りなお母様の様子に、どうしてか、じんわりと目の端が熱くなってきた。


「そうすれば、ルーシーだってずっと家に居られて……って、あら」


名案だとばかりに手を叩いていたお母様が、ふとこちらに視線を向ける。

真っ直ぐに私を見つめる、深い海の色をした瞳。

ああ、お兄様と同じ色だ。


ぽろり……と、涙が頬を伝う。

私の向かい、お父様の隣に座るお母様が、身を乗り出して私の頬をそっと撫でた。


「どうしたの、ルーシー」

「どうしたの……も、何も……」


喉がひりついて、声にならない。

両眼から、ボロボロと涙ばかりが溢れてくる。


「あらあら、どうしたのかしらこの子ったら……」

「ルーシーを泣かさないでください、母上」


ぐいと身体が引き寄せられて、隣に座るジェロームお兄様の腕にすっぽりと抱かれる。


「ちがっ、お母様のせいじゃ……」


首を振ってお兄様の腕から逃れようとしたけれど、がっしりと肩を抱いた腕は、とても振りほどけそうにない。


「じゃ、どうしたんだ?」

「だって……」

「だって?」


私の言葉を待って、お母様が首を傾げている。

私がこの世界に来て、約十八年。

お母様の美貌はいまだ衰えを知らない。

こんな素敵な人を、お母様と呼べるだなんて……今思えば、なんて幸せなんだろう。


「私、ずっとお母様のことを騙していたから……!」


その幸せが、崩れてしまうかもしれない。

そう思うだけで、怖かった。

次々に涙が溢れて、今ではもう、お母様の輪郭さえ定かではない。


お兄様がぐいと引き寄せるものだから、お兄様の服で涙を拭っているみたい。

それでも涙は止まらなくて、両眼から零れ続けている。


「ルーシーが騙したも何も、騙したとしたら、この人だと思うのだけれど……」


お母様が、さらりと言った言葉。

朧気ながらにお母様が指さす方向を確認したなら……。


「わ、私か!?」

「そうよぉ。他に誰がいるの?」


動揺するお父様に、お母様がビシッ! っと指を突きつける。


「言葉を喋れない赤ん坊のルーシーが、騙しようもないじゃない。私を騙していたとしたら、貴方だわ」

「確かに」


お母様の言葉に、お兄様まで頷いている。

え、二人はそう思っているの……?


「し、仕方ないだろう、あの時はああするしか……」

「あーら、一言くらい相談してくれても良かったのに」


お母様は拗ねたように言うけれど、本気で怒っている訳ではなさそうだ。

むしろお父様に甘えて、お父様を悪者に仕立て上げているみたい。


……そうすることで、私の気持ちを軽くしようとしてくれているのかな。

お母様らしいや。


どこまでも優しくて、どこまでも温かい、私の家族。


「……本当言うとね。なんとなく、そうじゃないかって思っていたの」

「え……?」


ぽつりとお母様が零した言葉に、今度はこちらが首を傾げる番だった。


「ルーシーったら、時々凄く申し訳なさそうな顔をするんだもの。ああ、何かあるんだろうな……って、察してしまうじゃない、そんなの」


考えてみれば、当たり前の話なのかもしれない。

皆から迷い子ではないかと疑われていた時……お母様だって、その疑惑を耳にしていたはずだ。

ティアニー公爵家の夫人が、情報に疎いはずもない。


お母様が疑問を抱く機会なんて、何度もあったはずだ。


「でも、貴女が実の子だろうと迷い子だろうと、そんなことはどうだっていいのよ」


いまだ涙に濡れた私の頬を、お母様の指先が撫でる。


「何年貴女の母親をやってきたと思っているの。血が繋がっていようがなかろうが、大事な娘なことに変わりは無いんだから」

「お母様……」


そんな風に言われたら、ほら、また涙で前が見えなくなってくる。


「う……」


もう、無理。

こんなの、我慢出来るはずがない。


「お母様ぁぁぁ!!」


私はお兄様の手を強引に振り解くと、お母様の膝に抱きつくように顔を埋め、泣きじゃくった。


「あらあら、甘えん坊なんだから」


お母様の優しい手が、髪を撫でる。

ずっと、怖かったんです。

貴女に嫌われるのが。

貴女はそんな人じゃないって分かっていたのに、それでもなお嫌われたらどうしようって、不安を抱き続けてきた。


その恐怖から、一気に解き放たれた気分。

優しい手に、ゆっくりと解されていく。


「ねぇ、お母様……」

「なぁに、ルーシー」


声を掛ければ柔らかな声音で返ってくるから、つい、甘えたくなってしまう。


「今夜は、一緒に寝てもいい?」

「もちろんよ」


……良かった。

言いたかったこと。

言えなかったこと。

これまでの想いを、たっぷりと言葉にしよう。

きっと、お母様なら全て受け止めてくれるから……。


「母上ばかり、羨ましい……」

「ジェローム、貴方はもう少し我慢を覚えなさい」


それはそれとして、私が迷い子であることを公表してからのお兄様……ちょっと壊れすぎじゃないかしら???

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― 新着の感想 ―
前話の様子から大丈夫そうだとは思っていましたが、お母様がショックを受けてなくて良かった。いえ、少なからず動揺はあったかもしれません。それをルーシーちゃんに向けないお母様であってくれて、読んでてホッとし…
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