34 プレゼントに込める想い
「というわけなんだけど……」
「おめでとう!」
私が事情を話すと、ニマニマしながら聞いていたしぃちゃんが開口一番にそう言った。
「いや、まだそういう意味だと決まったわけじゃ……」
結局、悠希くんには何も聞けないままで、彼からも特に何か言ってくることはなかった。
また私が先走った想像を膨らませ過ぎて勘違いしていたらどうしようと悩んでいたところに、ちょうどまた4人で会おうとしぃちゃん達が誘ってくれたので、話を聞いてもらうことにしたのだ。
ちなみに、今日は悠希くんがめずらしく用事があるとかで、そのおかげで彼女たちとの時間が出来たのだった。
「まあ、まあ。本当のところはわからないけど、まずは素直に喜んで受け取ってあげることが、大事だと思うよ」
晶ちゃんの言葉が、ストンと心に降りてきた。確かに、ひとりであれこれ思い悩んで、悠希くんがプレゼントしてくれようとする純粋な気持ちの部分を忘れそうになっていた。
彼女の言う通り、まずそこはちゃんと笑顔で受け取ってあげられるように、心がけようと思えたのだった。
「晶ちゃん……。うん、そうだよね。ありがとう」
今回こうやってあらためて「友達」に話を聞いてもらって、その存在のありがたさを感じることができた。
「けど、この前の彼氏さんの発言といい、その、何かすごい一途というか……。朱里ちゃんから聞いたなれそめも本当に偶然が重なっただけなのかなって、あ、疑ってるとかじゃないけど、それにしてもすごい奇跡的だなって」
これまで、あえて触れてこなかったことを、樹ちゃんがぽそっとつぶやいた。
彼女の言いたいことはわかる……。さすがに私だって、あとになってよくよく考えたらそれが全て偶然だったとは思っていない。
正直、どこまでが本当の偶然なのかは分からないけれど、でも真実はどうあれ彼の気持ちを疑ったことは一度もなかった。
「まあ、私だったらぶっちゃけ、重いなって思うところもあるけど、朱里の事はとことん大事に思ってて、本当に嫌なことはしない人だと思ってるよ! だって、今の朱里すごく幸せそうだもん」
たぶん樹ちゃんや晶ちゃんが密かに心配していた部分を、しぃちゃんの頼もしいひと言で吹き飛ばしてくれたような気がする。
そうなのだ、私は彼のおかげで今すごく幸せだから、悠希くんにもそうあって欲しいと思っている。だから、私がちゃんとそうしてあげられているのか気になるし、もし何か悩んでいるなら少しでも力になりたいと思っている。
単に、彼の誕生日に物を贈りたいわけじゃなくて、その気持ちが少しでも悠希くんに届くとといいなと思っていたのだ。
「彼氏さんへのプレゼントで、何か迷ってたら相談にものるからね。でも、その前に〜、私たちにもその指輪のパンフレットちょっと見せてよ〜」
晶ちゃんがそう言ってくれたので、ひとまず彼から渡されたパンフレットをめくりながら、友人との久しぶりのおしゃべりに花が咲いた。
「ねえ、これも指輪のパンフレット?」
そう言ってしぃちゃんが手に取ったのは、ひときわ分厚い本だった。
「それ、私も分からないの。上製本されていて、商品の説明も値段もどこにも書かれていないから、まるで図鑑みたいだよね」
彼から渡されたからパンフレットの一部なんだろうけど、やけに凝った作りだから不思議に思ってたけど、それを見た樹ちゃんがふと口を開いた
「そういえば、一般には出回らないVIPな顧客用のカタログ本があるって聞いたことがあるけれど、まさかね……」
彼女の言葉に、皆が一瞬、黙った。
悠希くんの底しれなさを、あらためて実感させられたような気がした。




