11聖女は●●しました
この回はシャルではなくエレナの視点に変わります。ちょい短めです。
同日22時にもう一度投稿します。
「う・・・うう・・・・ううう」
ハーレムメンバーが勇者が優勢になって、興奮して黄色い歓声を上げ続ける中、エレナの違和感はもはや無視できないものになっていた。
おかしい!おかしい!おかしい!心からの警報が響き渡る。あのシャルという男が、レオンにかすり傷を負わせた瞬間から、エレナは心にかかる靄のようなものが薄れているのを感じた。今まで考えられなかった、目をそらしていたものが見え、何か歪んでいたものが元に戻っていくような不快な感覚。その感覚の強さに比例して自分の心の変化に気が付き始めた。
私が愛する人は誰?勇者レオンさん・・・違う・・・レオンサンヲアイシテ、イチバンタイセツデ・・・違う・・・レオンスキ、シャルキライ・・・違う!・・・私が本当に愛しているのはレ・・・ャル・・・本当に本当に好きなのは・・・レ・・・シャ・・ル
「・・・シャル?」
そうつぶやいた瞬間、シャルが緊張した顔つきでプロポーズをした時の光景、初めて口づけをした光景など思い出と感情が一度によみがえった。
そうよ、シャル、シャル、シャル!!私はシャルの婚約者!勇者の恋人でもなんでもない!大好きなのはシャル!あれ?でもなんで私はシャルを嫌っていたの?なんでなんで?私シャルに何をしたの!?シャルの今の想いと過去の記憶の違いに混乱し、狂おしいまでに感情を乱されるエレナの前では、勇者レオンと少し大人びたシャルが戦っていた。
シャルは仲間の呪術で機動力を封じられ、レオンの怒涛の攻撃を何度も食らい、傷つき満身創痍。その圧倒的な光景を見て、仲間はうっとりとした顔で勇者を応援し、観客たちは勇者コールを上げ続ける。
その四面楚歌の中、シャルは血だらけで必死に食い下がっている。
エレナはそのシャルの必死な姿を見て、自らの混乱をも凌ぐ熱い想いが込みあがってくる。そして、たまらず元に戻った真の想いを弾けさせた。
所変わって、闘技場では、圧倒的不利な状況下ですでに体力も意識がうつろな中、シャルの限界が近づいていた。すでに倒れてもおかしくない状態だが、それでもなお、食い下がれるのは師匠であるアルデリアの徹底的な指導の賜物である。だが、それも終わりに近づく中、一人の女性の声が響いた。
「負けないで!!!シャル!!!」
鳴り響く勇者コールの中、ただ一人シャルにエールを送ったのはかつての婚約者エレナだった。




