第13話 ぶっとばせ!緋色の夜明け団
「あの。依頼が見えないんですけど」
「なんだとお!?」
依頼ボードを独占しているパーティのリーダー格に話しかける。かつて俺をけちょんけちょんにけなしてきたやつらだ。
普段は周囲に流されがちな俺ではあるが、だからこそ自身の意思で食らい付いたら離さない粘着質な部分がある。気がする。
「どうもどうも。ランドタートルの偽討伐者ですけど」
「Fランが俺ら『緋色の夜明け団』に何の用だ? 死にてえのか?」
「私たち、もうBランク冒険者ですけど。同格同士仲良くしましょうよー。いやー長かった! 一か月くらい?」
フィーナが追い打ちをかけ、リーダー男の顔が驚きの色に染まった後、表情が怒りに燃える。
「お二方……やめましょうよ……」
最大限モニカは小さくなりながらも存在を主張する。いいや。これは俺のプライドの問題だ。
「へえ。俺たちと決着付けたくて必死こいたわけだ。決闘? 乗ってやるぜ。三人とも殺してやるよ」
「私もですか!?」
柱の裏でモニカが小さい悲鳴を上げる。
「へえ? 口だけ言うのは勝手ですけど。ねえ?」
俺が煽り散らかすとリーダー男は腰から外した剣を俺に見せつける。
かつて俺はダメな水戸黄門のように初手でEX狩刃を見せつけようとした。冒険者に武器を見せつけるのは決闘の合図らしいということは以前のいざこざで知った。
剣の鞘には「Hrunting」と刻まれている。何なんだよ。この鞘に剣の名前が刻み込まれているシステムは。EX狩刃もそうだけど。
「『霊剣』の域に達したおれのフルンティングに恐れをなしたか? 今後は相手を選んで……」
「乗ってやるよ! その決闘!」
すかさず俺はEX狩刃を突き出す。ってあれ? 相手の様子がおかしい。
「エクス……カリバー……? 失われたはずじゃ……」
「やめようぜユーステス! もし負けたりなんかしたら……!」
「うるせえ! 決めるのは俺だ!」
ユーステスと呼ばれたリーダー格が戦士らしき男を怒鳴りつける。やっぱエクスカリバーってどっちの世界でもネームバリューあるんだ。ビビってるビビってる!
お互いに剣を付き合わせていると、相手のフルンティングの真横に鎧を付けたゴリマッチョが出現する。
「何それえ!?」
「守護精霊ごときで騒ぎやがって! ふざけてんのか? テメエも同じ『霊剣』使いだろうが!?」
よく見るとゴリマッチョの後ろが透けて見える。守護精霊?
もしかして……と真横を見るとこっちにも立っていた。黒いビキニアーマーを身に纏った褐色の美女! 嘘!? お前がEX狩刃!?
「フルンティングか、久しいね! 魔剣大戦の時以来かい?」
「フン、エクスカリバーめ! 毒剣にまで堕ちたとは! 見下げ果てた奴だ!」
魔剣大戦って何? 知らない用語で俺を置いていかないで。
そしてユーステスの表情を見ると静かに笑っている。さっきまであれだけEX狩刃にビビってたのに。
「毒剣! 聖剣ではなく毒剣ときたか! ハハハ!」
急に余裕ぶっこき始め出した。ムカつくなあ。こいつ。
「ヘッ! あたしの毒で泣き見るんじゃないよ! 泡吹いて死ね!」
「その小僧が貴様を掴んでいる事実。それがあの毒剣『エクスカリバー』が大した剣ではない証拠よ!」
あー。俺の「健康体」スキルを知らないからEX狩刃が毒でグレードダウンしたと勘違いしてるんだ。面白いからしばらくそのまま勘違いさせておこう。
「決闘は明日! 逃げられないよう手続きはこちらで済ませておくからな! 姑息な毒使い!」
決闘することになった。それよりも気になるのはさっき出てきたEX狩刃の守護精霊だよ! ええ? 俺基本は寝ないで済むけど寝て気分転換したい日は一緒に寝てたんですけど! 恥ずかしー!
「おいあんた! どうしてあたしの強さを証明してくれなかったんだい!?」
「『修行の成果』を明日見せてやればいいだけだろ? というか何? さっきの姿は?」
フィーナやモニカから離れて路地裏で手にしたEX狩刃と会話する俺。怪しい人にしか見えないだろう。
「細かいことを気にするんだねえ。まああんたの言う通りフルンティングとその使い手なんざ敵じゃあない。それよりも一緒に寝た仲だろう? 少しは庇ってくれてもいいじゃあないか」
ビキニアーマー姿に戻り俺に話しかけるEX狩刃。それだよ。そのビキニアーマーは威力が在り過ぎる。
「その姿の答えになってないし、一緒に寝たとか人聞きの悪いこというな!」
「ふうん。でもそうやってあんたがあたしの信頼を勝ち取ったからここまで鮮明に実体化できてるわけなんだけど、気に入らないかい? 修行だってそうさ。どいつもこいつもあたしの強さに頼り切りで修行なんてしたことなかったからね」
そういえばEX狩刃の姿はさっきのフルンティングより濃く見える。
そして何者かの視線を感じる俺。
「何奴!?」
「あう!」
こちらを覗き見ていたモニカが驚きの声を上げる。心配して探していたのだろうか。そしてどこから聞いていたのだろうか。
「剣と、その……不純な行為を……変態です異常者です倒錯者ですー!」
「さえずるな!」
「ぴい!」
俺が圧でモニカを黙らせると宿屋の一階で飲み食いしてるフィーナと合流した。
「ああ。剣の好感度上げですね。別に『霊剣』なら普通のことだと思いますけど、でもEX狩刃って案外ちょろいんですね。まあ五十年も放置されてたら人肌恋しくなっても仕方ないかあ」
「うるさい!」
剣状態のEX狩刃から声がする。
「ケントさんは普通。ケントさんは普通。ケントさんは普通。ケントさんは普通……」
「そうだよ!」
一番不純なのはモニカ、こいつだろ。実体化しても剣と何ができるんだよ。いや、出来るのか……? いや、これ以上考えるのはやめよう。やめよう。
「でも勝算はあるんですか? ただ皆殺しにするだけなら簡単でしょうけど、おすすめしませんからね。おすすめしませんからね。二度言いましたよ! 最悪ギルドから追放されるし、ああいうイケイケなパーティはバックに何が付いているかわかりませんから!」
「ヤクザ……反社会的勢力みたいな?」
「まあそんなもんですかね。表向きの仕事を傘下のパーティにやらせて、組織の人間に素材を回収させて闇市に流すんです。パーティに敵の数を過少に報告させたりもして……」
フィーナさん。あんまりそういう話を大きい声で言わないでくんない? 本職の人に聞かれたらどうすんの。
「大丈夫、勝算はある。当然相手を殺さないような」
「おうよ! 夜通し激しい特訓をした成果を見せてやるってんだ!」
EX狩刃が意気揚々と言ってのける。そっちはそっちで誤解を招くような言い回しはやめてくんない?
決闘は明日。俺とEX狩刃なら勝てる。あとはユーステスとフルンティングがどれほどの使い手かということだ。




