1━13.【叛逆近衛兎】
はい、叛逆兎とのバトルです
「あれ? キリカとレイカは?」
「先に行っちゃいましたよ」
「え゛!? マジで?」
「はい~。霧羽くんがレアアイテム取ってる間に、行っちゃったよ~」
「……うそん……」
森の中で、キリカとレイカの二人とはぐれてしまった、霧羽、ロンター、蒼百合、ゲーム開始当初からのメンバーである三人だが、キリカはゲーム時間で2ヶ月ほど前に、レイカはキリカに連れられて、ゲーム内で二週間ほど前にパーティーいりした。
さて、そんな三人だが、時たま暴走する霧羽、ネタの理解できないロンター、マイペース過ぎる蒼百合という、異色のトリオだが、連携は強い。
というより、盾によるカバーが上手いロンターと、回復魔法や補助魔法をかけるタイミングが絶妙な蒼百合によって、霧羽が攻撃し過ぎだったりしても大丈夫だったのだ。
そして、ここに霧羽と同じく攻撃し過ぎになったりするキリカと、弓矢による牽制の上手いレイカが加わり、上手い具合に噛み合っているのだ。
「あの二人大丈夫なのか?」
「心配ですね」
「きっと大丈夫だよ~」
「蒼百合のその自信はどこからくるんだよ」
「ですね」
のほほんとした蒼百合の言葉に、思わずため息をこぼす霧羽とロンターの二人。
三人は、とりあえず先に進むことにした。
二人との合流と、アイテムの収集を目的として、ずんずん先に進んでいく。
「そういえば、千夜くんとは何処であったんですか? タイプが全然違うようにみえますが……」
「ん? 合コンで」
「え~? 千夜さんは合コン行くように見えないよ~?」
「友達に騙されたそうだ。んで、その友人と仲良くなって、同じ大学だった千夜とも良く話すようになって………と、そんな感じで」
「へぇー。そうだったんですね」
「ちなみに、その千夜の友人は、合コンだと知った千夜に間接をキめられてた」
霧羽と千夜は、合コンで出会ったという事実を聞かされた二人は、意外そうな顔をしたが、次に霧羽の話したわけに納得した。
そんな話をしながら、三人はアイテムを採取しつつ、先に進んでいく。
「そういえば、その千夜くんの友達もダブルFをやってるんですか?」
ダブルFとは、この『Freedom Frontier』の略称である。
「ん? 俺は誘ってないけど、誘えばくると思うぞ。でも、結構癖のある奴だからなぁ……」
そう言うと、霧羽はテンションの高い、なんでお前千と仲いいの? と、思わずにはいられない千の友達というか、幼なじみのことを思い出していた。
ちなみに、女好き(タイプは、ブスと四十歳超え、十三歳未満を除けば全てである)で、くっそテンションが高く、ノリが以上によく、女装すると宝塚美人になるという………とんでも友人のことを思い出していた。
そして、彼女ができたことはない。というか、告白しても
「え?………ごめん。どちらかというと京極くんのほうが……」
という言葉とともに撃沈する。
その度に、千に文句を言いに行くのだが、千には
「いや、お前が悪いんだろ?」
という正論によって、言い負かされる。
さて、この場に関係のないことは、このくらいにしておこう。
三人は、敵を倒し、アイテムを回収しながら進んでいく。
「あの二人はそうとう奥まで行ったのか?」
「みたいだね~」
「そうですね━━ッ!?」
その時、周囲から悲鳴が聞こえてきた。
直ぐ様警戒体勢をとり、辺りを見回す三人。とりあえずの危険が無いのを確認した三人。すると、キリカからフレンドトークがきたので、直ぐに繋げた。
『キリカ、レイカ無事か!?』
『大丈夫ですか!?』
『二人とも大丈夫~?』
間髪入れずに、心配して声をだす。
蒼百合は相変わらずだった。
『こっちは二人とも無事。でも、何があったの?』
『分からん! 突然色んな場所から悲鳴が聞こえてきて………ッ!? んなっ!?』
フレンドトークの途中で、突如飛んできたエネルギーの塊を、全力で避ける霧羽。
突然の全力回避行動と、戦闘への移行によりフレンドトークが強制的に遮断される。
「なんだ!?」
「分かりません!」
「あ、兎さんです~」
草むらから現れたのは、一匹の黒い兎だった。マントを纏い、赤い瞳は三人を射ぬいており、完全に敵対意識を持っている。
「鑑定結果は、【叛逆近衛兎 ヴォーパル・リべリオン】~。推奨レベルは不明だよ~」
「不明? それなら、勝てる可能性も負ける可能性も半々か……」
「先ずは能力の見極めですね、先ほどの攻撃がその兎によるものなら、遠距離タイプでしょうか?」
会話を交わしながらも、注意深く兎を見る三人。
「とにもかくにも、攻撃してみるか」
「そうですね、『騎士の覚悟』、『鉄壁』」
「ツインエンチャント『ストレングス』~、『バイタリティ』~、『アジリティ』~」
「うっし! 『キーン・エッジ』」
ロンターが自身の意思と防御力を強化し、蒼百合はロンターと霧羽の能力値を強化、霧羽は無魔法により武器性能を上昇させた。
これはこの三人の戦闘開始前の準備である。戦闘中より、先ずは能力強化を優先し、敵が攻撃してくるようならロンターが防御、数が多いなら霧羽とキリカも攻撃するとなっている。
「『スラッシュ』!」
このパーティーは、最初は弱めの技を使う。何故なら、物理無効化、魔法無効化などの能力を相手がもっている場合、強力な技だと、いきなりMPやSPを大幅に消費してしまうからだ
そして、今回はこのいつもの行動がいい結果をうんだ。
「キュイ!」
「んなっ!?」
マントによって霧羽の剣が受け止められ、そのまま翻されたマントから、エネルギーの塊が放たれ霧羽が吹き飛ばされた。
「霧羽くん!?」
「結構減りましたね~、『ハイ・ヒール』」
吹き飛ばされた霧羽に、いつもの調子で蒼百合が回復魔法をかけた。
弱めのスキルだったため、霧羽は助かり、尚且つ相手の能力の一つが判明したのだった。
「反撃系か……蒼百合!」
「任せて~、『ライトアロー』~」
「キュイ!」
「させません!『マジックガード』!」
霧羽の呼び掛けに、直ぐに意図を理解した蒼百合が、光の矢を兎に飛ばす。すると、兎がマントを一振りし光の矢を反射した。
反射された光の矢は、蒼百合に向かって反っていったが、割り込んだロンターが、魔法攻撃を軽減する【盾術】の技で受け止めた。
「魔法も反射するのか……」
「しかも、威力が上がっています」
「二倍反しかな~?」
「さあな。でも、面倒くさいのは変わらないぞ」
相手の能力を確かめるのが、ユニーク個体との戦い方の基本である。
冷静に相手を観察する。
三人も【ヴォーパル・リべリオン】の一挙手一投足に注目し、能力の判別に挑む。
ちなみに、反撃、反射能力は、【ヴォーパル・リべリオン】の基本能力にしか過ぎない。唯一無二の能力は別にある。
「キュイ!」
「ん?」
「光ってますね」
「るね~」
「キュキュイ、キュイ!(【叛逆者ノ心得】、『心得其一不退』)」
【ヴォーパル・リべリオン】の身体が灰色に光り、淡い灰色の透明な歪な板が包み込んだ。
こうして、三人と【ヴォーパル・リべリオン】との戦いが始まった。
ダブルF
FFを略称にしようとして、某有名ゲームを思い出して、さすがに不味いかな~? と思い、ダブルFにしました。




