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114 戦術合同演習 最初の一枚

 例年と大幅に変更された今回のルール――特にクラウスの班とレオナルドの班はマイナス二点からスタートというルールを聞き、彼らの班員は「マジか」と思った。


 しかしレオナルドは違った。

 彼は、こう考えた。


 ――このルールなら勝てるな、と。


 無論、クラウスの班にである。


 班員を確認した時点で、レオナルドはクラウスの班以外には勝てると踏んでいた。

 出発点がマイナス二点だと聞いたいまも、それは変わらない。


 クラウスの班に勝てれば、全勝が狙える。


 彼の中で、それは自明であった。


「では、ここからはミュラー先生に引き継ぐ。ミュラー先生、よろしくお願いします」


「あぁ。これから、いままでの授業の復習をする。その後、それを踏まえた戦術立案だ。疑問点は適宜質問しなさい」


 ミュラーは普段から戦術についての講義をしており、今回の訓練では教師陣を統括している。

 オスヴァンよりだいぶ年嵩のため、オスヴァンはやりづらさを感じていた。


 今回は初回ということもあり、担当の教師と教官の全員が集まっている。

 そのせいか、オスヴァンの目には一部の生徒がいつもの訓練より緊張しているように映った。


「では、各班で話し合いを開始。一巡目のためのレポートは、この授業時間内に提出すること」


 今回は二コマ――休憩を除き、三時間の授業である。


 ここまでで一時間が経っている。

 残されたのは二時間。この時間で、一度目の総当たり戦の順位が決まると言っても過言ではない。


 理由は簡単だ。

 演習訓練では、提出した戦術でしか戦えないから。


 相手が想定外の動きをしたら、その時点で反撃ができなくなり、負けが決まる。

 そのため、戦術合同演習のはじめの頃は、戦闘がすぐに終わるのだ。


 自分たちの強みは何か、弱みは何か。

 取れる戦術は何か。

 そして、他の班が取りそうな戦術は何か。

 それにはどう対応するか。


 これらを話し合い、提出レポートという形に落とし込む。


「毎度思うが、これを二時間ってのは無理があるよな」


 イヴァールがオスヴァンの耳元で囁く。


 “二時間”。


 音で聞けば、長く聞こえるだろう。

 しかし彼らはまず、この話し合いにおける役割から決めねばならない。


 司会進行、書記、タイムキーパー。


 彼らもグループワークには慣れている。

 慣れてはいるが、初めて組むメンバーだ。

 役割分担に全く時間を取らないわけにもいかない。


 そしてその後話し合いが難航し、レポートが二、三枚しか出ない班が生まれることもある。


 ――しかし今回は違った。

 初回の授業後に、分厚いレポートが提出されたのである。

 一つは、レオナルドたちの班。


 二時間を”話し合いの時間”ではなく、“書く時間”として使った結果だろう、という量だ。

 もっと時間があれば、更に多くの戦術を提出できた――そう思わせる量だった。


 そしてもう一つは、クラウスの班である。


 これには、教師たちも驚いた。

 そして教師たちは――中身を読んだとき、さらに驚くことになる。




「初回の勝敗はここでいかにレポートを仕上げられたかによる。レポートに書いた戦術しか使えない以上、多く書けば書くほど選択肢が増えるからな。だからとにかく、レポートを仕上げよう」


 話し合い開始の合図後、レオナルドはすぐに班員に言った。

 そのまま続ける。


「このメンツなら話し合いもシミュレーションも要らないだろ。強みも弱みも分かりきってる。――ジアナードとサントスで魔術への対策を書き上げてくれ。ケイランとコンラッドで近接戦での立ち回り。俺とロエルでどうやって近接に持ち込むかや奇策をまとめる」


「そうだな。俺たちは貴族の人数的に近接で勝つしかない」


 ケイランが補足し、皆が頷く。

 レオナルドの魔術使用回数を制限されている以上、彼らの“魔術”という遠距離で使える武器は他の班よりも限られている。


「分かったよ。魔術を使えるジアナードの補佐を俺、コンラッドとケイランはこの前の訓練で班長副班長として二人でやってきた。振り分けに文句もない」


 サントスがだるそうに言った。

 だが言葉通り『文句はない』のならば、十分に働くだろう。


 レオナルドがサントスをジアナードの補佐に付けたのは、その優秀さと柔軟性からだ。


 ジアナードは“真面目”だ。

 貴族として幼い頃から学びを与えられてきた。

 反面、少し固い部分がある。

 サントスのゆるさと面倒見の良さは、ジアナードとうまく噛み合うと考えた。


「ロエル、よろしく」

「レオナルドとは緊張するけど……あぁ、よろしく」


 ロエルと組んだのは、単純に消去法だった。

 本当はケイランたちに混ぜても良かったが、グループワークという性質上そこまでするのは良くないだろう。


 そうして彼らは、すぐにレポートに取り掛かる。

 そもそも全員が“考えられる”メンバーだ。

 それを二人一組にしたことで、さらに考えを整理しながら物事を進められる。


 互いだけという枠にハマりすぎず、(とき)には他の二人組に意見を仰ぐこともあった。


 彼らが唯一、戸惑ったとすれば。

 レオナルドが発したこの台詞。


「そうだ。ケイラン、コンラッド。雨や泥濘、砂嵐の中での戦い方も考えておいてくれ」


「はぁ?」


 この瞬間、だけである。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

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次回のタイトルは、「策を喰う」です。

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