表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/102

10 二人の出会い2

 レオナルドは、クラウスという化け物を畏れた。

 クラウスという才能(血統)に焦がれた。

 クラウスという力に憧れた。


 ——クラウスという光に、魅せられた。


 その強すぎる光に照らされ、レオナルドに「貴族令息」として以外の、「ただのレオナルド」としての影が生まれた。

 在るべきではない、「ただのレオナルド」の感情が形を成してしまった。


 クラウスとレオナルドは、軍人学校に入学してすぐ出会った。

 少なくともクラウスにとってはそうだった。

 自分にも笑いかけてくれるレオナルドという少年と、入学してすぐに出会った。


 けれど、レオナルドから見たら、『クラウス』という少年と『レオナルド』は、きっとこの瞬間に出会った。

 この瞬間に出会って、絆されて、クラウスを独りにしないでやりたいと思った。

 クラウスという光も、化け物も、才能も、少年も、独りにしないでやりたいと思った。


 レオナルドは、自らの右手でぐしゃりと頭を掻くと、小さくため息をつき、わずかに緩んだ口元を整え、顔を上げて「いつも通りのレオナルド」を作った。


 レオナルドは誓った。

 光を、翳らせないでやろうと。

 実力をつけてクラウスの隣に並び立ち、この天才を独りにしないでやろうと誓った。





 クラウスの実力を目の当たりにして、生徒も教師も皆遠巻きになった。

 遠巻きにならずとも、彼らからの恐れは確かに感じられた。

 クラウスは、そうだろうなと思っていたが、心の底では寂しさを感じていた。


 しかしレオナルドは、授業の終わりに「今日は疲れたな」と、普段と同じ柔らかな笑顔で隣に並んだ。

 その表情には、クラウスへの恐れなど一切感じられなかった。


 ——レオナルドは先ほど感じた、そして今も腹にある「恐れ」も「畏れ」も、「高揚」も「憧れ」も、一片たりとも表に出さなかった。


 クラウスは、いつも通りに微笑むレオナルドに驚き、そして、胸の奥がギュッと、温かくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まだ途中ですが、拝読いたしました。 タイプの違う天才が2人… 一方は自分を客観的に理解しており、一方は周りからは距離を置かれる天性の才能の持ち主… バランスの良い組み合わせで、今後の2人の関係や物語の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ