表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金の瞳のルカと精霊の呪い  作者: 山口三


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/88

北側の地下にて2


「今のロージアン卿の名前はアランだよな?」

「うん、2世だね。ご先祖様の日記があった?」

「いや、これはその弟のカラド・ロージアンの日記だな」


 〇〇〇年11月2日


 アランの話とは家督を俺に譲りたいというものだった。あんなに責任感の強い兄がなぜ今になってそんな事を言いだすのか理解ができない。


 〇〇〇年11月14日


 城に沢山のドレスや宝石類が届いた。アランが注文したらしい。やっと家督を譲りたい理由を話してくれたが精霊と結婚するからだとバカな事を言っている。確かに兄さんは精霊が見える体質だが結婚なんてできるのか? そもそも寿命だって全然違うはずだ。もう一度話をしなければ。


 ○○○年11月15日


 兄さんの気持ちは理解できたが俺はロージアン家を守っていけるだろうか? 兄さんは俺を信頼してくれているが不安でたまらない。そうそう、相手の精霊の女性を兄さんが連れてきた。俺には見えないはずなのに、俺だけじゃなく城の人間全員が見ることが出来た。すごく綺麗な精霊だった。人間の女性となんら変わりない外見をしている。水の精霊で城の前の湖で知り合ったと言っていた。兄さんが心を奪われるのも無理はないかもしれない。


 ○○○年11月18日


 今日正式に俺がロージアン伯爵となった。領地の事も大体引継ぎが終わって、アランはあと数日で精霊の国へ旅立つと言っていた。ロージアン家に代々伝わる宝物庫の鍵を渡された。明日そこへ案内してくれるらしい。この国を丸ごと買える位の財産があると言っていたが・・それはさすがに大袈裟だろう。


 ○○○年11月19日


 朝アランが見せてくれたのは届いたばかりの婚約指輪だった。大きなサファイアがはめ込まれた指輪を大切そうにポケットに入れてアランは出掛けて行った。帰ってきたら宝物庫に行く予定だ。


 ○○○年11月20日


 アランは昨日から帰っていないようだ。予定が早まってもう精霊の国へ行ってしまったのだろうか?

 まだ別れを済ませていないのに。もう兄さんには会えないのだろうか。


 ○○○年11月21日


 一昨日の地震で受けた漁船の被害が詳しく報告された。他にもブドウ棚や穀物倉庫がひどく損傷したらしい。領地の被害はかなり大きい。こういう時にこそ宝物庫に頼りたいものだが、場所を聞く前に兄さんはいなくなってしまったし困った事になった。


 ○○○年12月2日


 アランの相手の精霊が尋ねてきた。アランが約束の日になっても現れないのだという。俺たちはとっくに二人は精霊の国へ旅立ったと思っていたのに。改めて兄さんの部屋へ行ってみると結婚の為の衣装はチェストに入れられたまま置かれてあり、大きな旅行カバンと兄さんの衣類が少し無くなっていた。

 この様子だと兄さんは結婚をやめて一人で消えてしまったとしか思えない。精霊は動揺しているように見えたが兄さんを探すと言って出て行った。



 そこから先にはアランと精霊の話は出てこなかった。再び精霊の話が出来てきたのは次の年になってからだった。



 ○○○年3月5日


 湖の方で大きな音が鳴り響いた。驚いて塔に登って見てみると湖には渦が巻き起こり湖の中央に何本もの巨大な水柱が立ち上って、その中央に大きな女性が立っているのが見えた。女性は大声でアランを呼んでいる様だった。急いで湖まで行くと水の精霊の女王と名乗るその大きな人がアランを出せと怒りをあらわにしていた。

 アランの行方は知らないと話すと、アランと結婚するはずだった精霊は自分の娘だと言った。彼女はアランを探す為にエネルギーを消耗して実体化し続け、とうとうこの世から消滅してしまったそうだ。

 誰もアランの行方を知らないと分かると、怒り狂った女王はロージアン家を呪うと宣告して去ってしまった。


 自分が娘を奪われたようにロージアン家に生まれる子女を奪ってやると言い残して。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ