旧生徒会(=治安部隊)の人々
なんか色々と急展開です。
2015.05.02誤字訂正。
「いい加減にしろ!!てめぇら学校壊すならおっ死ね!!」
物騒なセリフを吐きながら、その人は容赦なく最大出力の風属性の魔法を二人の生徒に向かってぶつけました。が、二人の生徒はひらりと身をかわしてあっさりとその魔法を避けてしまいます。
どぉおんっ!!
的が無くなり地面に炸裂した風は、そのまま土を抉り辺りに土煙を巻き上げます。
「風の陣」
大人しく巻き添えにはなりたくなかったので、私は右手の平を天に向かって突き上げ、私を起点とし、少し離れている港先生までを範囲とした円形の風の結界的なものを張りみんなを守りました。
周囲を風が巡り外部からの物理的干渉を排除するだけのものなので周囲への被害などを考えなくて言い分色々と楽だったりします。風を循環させるだけだからか、イメージもしやすいので最低限の詠唱さえすれば事足りるのもポイント高いですよね。
って、あれ?
なんかみなさん私に注目してません?
「てめぇ、…新入生か?『瀬を継ぐ者』の家の出じゃぁねぇように見えるが」
「ゆまは惣火ですが」
郡が庇うように私の前に立ってくれましたが、先輩らしき人はそれを聞くと割とあっさり納得してくれたようで、なるほど、と頷いていました。
剣呑な空気ではなくなったので、郡も大人しく横にずれてくれました。
「あの『惣火』の『ゆま』か。っつーことはチビ。おまえがさっき使ったの精霊魔法ってヤツか?」
「はい」
「ふぅん…。教会の加護うんたらってのも馬鹿にできねぇっつーことか」
…確かにじろじろと眺めまわすのは不躾かと思いますが、殺気を向けるほどではないと思うのですが。隣でマジ切れ五秒前みたくなってる郡がすごく怖いです。気づいてないのか気にしてないのか先輩はそのままじろじろ見ていましたが、黒白コンビな生徒二人が我に返ったようでまたやらかし始めたので舌打ちをすると仲裁 (仮)に向かおうと走り出しました。
が、もう一人我慢の限界だった方がいたようです。
「…君たち。いい加減にしてくれないかな?」
ざばぁああぁっ
一瞬で黒白コンビをずぶぬれにしたのは、恐ろしいほど美しい笑みを浮かべた港先生でした。
「てめぇらが生まれてきたことさえ後悔したいってんなら、好きに遊んでたっていいんだぜ?」
『スイマセンデシタ』
背後でブリザードを振りまきながらきらきらしい笑みを浮かべた先生にはさすがに二人とも敵わなかったようで、彼らは大人しく片言ながら謝罪を述べていました。
***
「気を取り直して自己紹介といこうか。私は港。『水の眷属』と呼ばれる水無の分家だよ」
先生の名乗りに、私は思わずぐっと拳を握りしめ、身構えました。
旧家と呼ばれる貴族は七つの本家とその分家により成り立っています。
中でも本家は教会や世間と同じ流れをとり、血を薄めより人間に近づくことを目的とする「主要五家」と、反対に近親婚をしてでも獣人としての血を守り、より濃くしていって属性魔法の使い手を確保し続けようとする「独立二家」に分かれています。
大抵の場合、家のことで争う以前に人間との関わり方を考えなければいけないため表出化しないのですが、家名を入れた名乗りをしたということは、生徒会としての活動になんらかの形で関わってくるのでしょう。
「っち。…独立二家『巧闇』の煉」
「…独立二家、『光井』の慶都」
黒い方の生徒はイライラとした様子で、白い方の生徒は眠たげな様子で答えました。その様子に、港先生は大きなため息を吐き出します。
「…もう大体わかっただろうけど、僕たちの役目は専ら、彼らを止めることだよ」
「罪悪感とかもつ必要はねぇぜー?コイツら、頭では分かってても抑えきれねぇらしいからな」
めんどくさそうに物騒なセリフを吐いていた人が続けます。
なんでも、血が濃すぎる故にか、独立二家は生まれてくる子のほとんどが属性魔法を使える子供であるのと引き換えのように、精神的な疾患を抱えることが多いのだとか。
…まあ、近親婚も辞さない一族ですからね。濃くなり過ぎた血は色々と問題も多いのでしょう。
それで、そもそも特別科特選コースにおかれた生徒会は常に学園に各名一人ずつは居座り続ける巧闇と光井の生徒のガチバトルの仲裁のために置かれた機関だったのだとか。
「他に反りが合わない生徒同士もいるにはいたっぽいけど、そもそも喧嘩に使えるほどコントロールできる生徒自体が少なかったみたいで。それに、コイツら並のガチバトル見ちゃうと一周回ってそこまでやる気にならなくなるんだってさ。
あ、俺は灯。補佐だよ。ついでにそこで御上土に跪いてるのが副隊長の御端で、うるさいのが隊長の井瀬ね」
「御上土とはなんだ御上土とは。主家たる御上土様に対してなんたる口のきき方ッ…!」
「うん。こんな感じで濃いけど、やることはアイツらぼこ―、げふんげふん。仲裁に入るだけだから」
今、ぼこると言いかけたような。
まあ、爽やかに見せかけてなかなか強かな灯先輩はおいておくとして、―あと、恍惚とした表情で御上土くんに跪いてはあはあ言い始めてる推定御端さん(仮)も置いといて、―今や猫の姿になってにゃんにゃん取っ組み合いを始めてしまった二人の仲裁に入りますか。
しかし光井くんの方、紅と蒼のオッドアイの白猫とか珍し、―
…うん?
「…もしかして、中庭の…?」
「なぁおっ」
呟けば、光井くんは早々に戦闘を放棄し、やっと気づいたかとでも言いたげに私の腕の中めがけて飛び込んできて、頬に優しくネコパンチしました。
攻撃目的で続いて飛び込んできた巧闇くんは攻撃させる間もなく嫌と言うほど撫で繰り回して戦意を削いでやりましたよ。ええ。私にかかればいくら強くたって、もふもふさえしてればめろめろにさせることなんて造作もないことなんですからね!
ほっ、ほんとですよ?別に羨ましそうな顔してた巧闇くんが可愛いからってガマンできなかったわけじゃないんですからね!




