見極め 後篇(東雷side)
『大規模魔法』とはその名の通り大規模な魔法であり、その規模の大きさから場所指定を補助する『魔法陣』と、不足する魔力の代わりを担う『供物』を使うことで有名だ。
が、惣火は『供物』という呼び名に注目し、『信仰心』がその威力に絡んでいるという仮定を立てた。
そして、精霊魔法の使用時に必要とされる原則を呪文に組み込んだうえで精霊を讃える賛辞を呪文の中にうまく組み込み、水の精霊を使った大規模魔法を発動したという。
結果として、その大規模魔法は供物を損なうことなく成功した。
が、威力が凄まじすぎてあわや大惨事を引き起こしかけ、土下座で謝って魔法を中断したという。
おい。
おいおいおい。
…大規模魔法って、土下座で謝ったぐらいで中断できるものなのか?
その後、謝罪と、あるかもしれない次回についてのお願いを経て、その件は終息したらしい。が、それからが問題で。
なぜか他の属性の大規模魔法が唐突に使えなくなってしまったらしい。
今までは威力がどんなに低くとも一応は使えていたものが、全く使えなくなってしまった。供物も減りもしなければ、対象とする属性の精霊の力の片鱗すら見当たらない。が、低威力ながら水の精霊の大規模魔法だけは使える。
何故水の精霊の魔法だけ使えるのか。使えない他の精霊との違いはなんなのか。
そこで、惣火はとある仮定に行きついた。
もしかすると、あの呪文が原因か、と。
試しに火の精霊に同じような呪文を唱えると、あっという間に絶大な威力の大規模魔法が成功。礼を述べ帰還を促して魔法を中断後、供物を見れば丸残り。
「―と、まぁそんな感じでして。敢えて言うなら精霊を感動させられるような賛辞の言葉を散りばめた呪文自体が供物になるんでしょうか…」
惣火は遠い目をしながら空笑いすらしていたが、空笑いしたいのはこっちの方だ。
現存する術式から見れば、まるで型破りな方法。
しかし、手探りながらも幼くして自ら仮定を立て、試行し、その結果から理論を導き出した。誰にでもできることではない。
俺と理事長はしばらく無言で見つめ合った。おそらく、考えていることは同じだ。
「…東雷くん」
「はい。
…惣火。朗報だ。おまえの魔法科行きはなくなった」
きょとりとした惣火に、次いで言葉を重ねる。
こんな無茶苦茶なヤツを教会の巣窟なんざに放り込めるか。
しかも、惣火に主に受けさせようとしていたのは魔法の実技。もはや既存の手順で用いられる術式からは遠く離れている惣火の術式は、異端として吊るし上げの対象になりかねない。
「おまえは特別科の『特選コース』に在籍し、俺と共に古代魔法・精霊魔法の共通項についての研究を秘密裏に進めてもらう」
古代魔法・精霊魔法の共通項についての研究。これが、学園が秘密裏に進めているプロジェクトだった。
あの急展開の裏にはこんな事情があったんですよー、の回でした。
次回ももふもふしません(´・ω・`)




