つけてくる者 2
私が気を抜いていると、緊張感を押し殺した声が聞こえた。
護衛のシャルフだ。
「まずは教会の方々に主に変わり、お礼を申し上げます。私達はスイード伯爵家の者です。怪しい者ではありません。
こちらの願いは、私の書いた手紙を秘密裏にスイード伯爵血族の者に渡してもらう事です。
どうか、よろしくお願いします」
そうだ。
気を抜いている場合ではなかった。
私は神官様を見て、ちょこんと頭を下げて気持ちを表した。
それを見て、少し微笑ましそうに私を見つめてくれたが、真剣な顔でシャルフと話し出した。
「その願い、聞き届けました。手紙を見られたくなければ別室をご用意しましょう」
「お心遣い、感謝いたします。チヤ様、少し席を外しますが、ここにいれば安全です。エルシーナ、任せたぞ」
シャルフが私に安心するように声をかけてくれた後に、ビシッと引き締まる声でエルシーナに守りを託した。
「はっ!シャルフもお気をつけて!」
神官様はこの場に残り、聖騎士がシャルフを案内して廊下に出た。
神官様が安心する声で話しかけてくれる。
「不安でしょうが、教会はこのような事態に慣れておりますので、安心してくださいね。
喉は乾いていませんか?飲み物を用意しますよ」
神官様のお言葉に甘えることにした。
「ありがとうございます。飲み物をいただきたく思います」
神官様はチヤの言葉使いに少し驚いた顔をした後に立ち上がって廊下に出て行った。
セーラも緊張していたのか、私に悟られないように細い息を吐いていた。
それに気がついた私はセーラに気を使わないように言った。
途端にセーラは、キリッとした顔になり、背筋を伸ばした。
「いいえ。お気遣いは嬉しいですが、今は緊急時です。主人を差し置いて安堵するなどできません」
「いいんですよ、セーラ。今は気を抜いて、いざという時に動かなければ話になりません。メリハリが必要です」
これにはセーラは言い返せなかったらしく、静かに目を閉じた。
(少しは気を抜いてくれたかな?)
しばらく何事もなく、ぼーっとした時間が過ぎた。
コンコンコン。
ノックの音が聞こえて、セーラとエルシーナが臨戦態勢になった途端に、扉がゆっくりと開いて、ここまで連れて来てくれた神官様が飲み物を手にして部屋の中に入って来た。
「お待たせいたしました。聖水になりますが、飲めば気持ちを落ち着ける作用があります。どうぞ、お飲みください」
そういえば聖水を鑑定した事は無かったと気がついて、聖水を鑑定する。
●聖水(低品質)
聖魔法で作った低品質の聖水。低品質だが薬を作る材料として使われる。(効果小)
飲むと鎮静効果がある。
鑑定してから、あっ!と、思い出した。
孤児院学校の休憩に飲む、聖水(最低品質)を鑑定した事があったわ。
特に何も混入されていない、善意の聖水だったので手に取ったが、セーラにコップを取られて、セーラが聖水を飲んだ。
何故か、神官様が苦笑している。
「毒味をしなくても、何も混入しませんよ。旧体制下の教会なら信用できませんが、今のところの現状では問題ありません」
ああ、毒味だったのか、と、安心したところで、イヤイヤ、本当に毒が入っていたらセーラの身が危なかったのに気がついて焦った!
「セーラの馬鹿!」
混乱して、子供っぽい言葉が飛び出してしまった。
いやいや、馬鹿だろう。私。
「セーラが毒味する意味がありません!今度からは毒味をしなくていいです!」
そうだ!私は『鑑定』持ちだ。
毎回口にする物に鑑定をかけよう。
絶対に。
だが、私が鑑定を持っていることを知らないセーラは頑なだった。
「いいえ、これだけは主人に言われても私の仕事です」
神官様に失礼をしたどころか、仕事と言い張る。
あーっ!セーラだけなら『鑑定』するから大丈夫と言えたのに、神官様がいるから言えない。
「神官様、ご好意を貶すことをしてしまい、申し訳ありませんでした」
とりあえず、神官様に失礼をしたから謝る。
神官様は「貴族は大変ですね」と、ご理解いただけた。
セーラから毒味済みのコップを受け取って一口飲む。
むっ!これは……甘い。
花の蜜のような爽やかな甘さだ。
「神官様!おいしいです!ありがとうございます!」
前世の子供の頃に、学校の帰り道に花の蜜を飲んだことが思い出される。
神官様は甘やかなお顔をされた。
「おいしいでしょう?教会で密かに人気なんですよ」
そりゃそうだ。
まだ、砂糖が高級品だから、甘味は貴重だ。
何か、お礼ができないかな?
あれ?そういえば、孤児院の寄付の話で来たのだったかな?
「神官様、孤児院のお金が足りないの?」
ありゃ、子供っぽい言葉になってしまった。
孤児院学校で幼児のふりをしていて、クセになってしまったかな?
神官様は見ているものが安心するようなお顔をされた。
「大丈夫ですよ。王族の方も、貴族の方も孤児院に寄付してくださいますからね。皆様のおかげで、飢えること無く暮らせております」
この、神官様、髪の毛を長髪にしたら凄い似合いそうだな。
なんか、漫画で読んだ、中性的な神殿に仕える神官様に見えてきたぞ。
オタク魂が疼いてきた!
課金したい!
私はアイテムボックスから、コツコツと整理しておいた、一袋1万ルビが10枚入った袋を神官様の前に置いた。
不思議そうなお顔をされた神官様に向けて言葉を発する。
「課金させてください!」
勢いよく言った!




